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もう一つの元凶

扉の飛んだ通路を進んでいく。

幸いというか、残念というか、扉の飛んだ先は曲がり角になっていたため、そこにぶつかってめり込んでいた。

思いきり蹴り飛ばしたが、ここまでのものとは・・・

影響したとすれば、“腕力増大”、“蹴撃熟練”、“打撃”あたりか?

今後、スキルレベルが上がったときの事を考えると手加減を覚えなくてはいけないかもしれない。

相手を蹴り倒したら、その蹴り倒した部分が吹っ飛ぶようなスプラッタはごめんだからだ。

ましてや、スイカのように弾けるとかなったとしたら、どんなホラー映画だ。

この依頼を解決させたら、自分のスキルと一度向き合う必要があるかもしれない。


L字に曲がる角を、飛ばした扉の残骸を避けながら抜けていく。

この通路は苔が生えていない。

そのため、滑って転ぶということは無さそうだ。

死人化した住人たちのいる場所に通じる通路とは雲泥の差だ。

やはり、この場所には別の誰かがいるのだろう。

大きな音を立てたことで、出てくるかと思ったが誰も出てこない。

隠れることのできるような所はちらほら見かけるものの、誰も潜んでいる様子はない。

それでもそのような場所に注視しながら、先を進む。

道はそれほど長くなく、程なく奥の部屋にたどり着く。

そこには、何人かの死人では無さそうな連中が、武器を構えて待ち構えていた。

態勢を整えるには十分な時間だったのだろう。

どの人物も、目が澱んでいるようだ。

ほの暗い穴ぐらの中に潜んでいれば、そんな気持ちになるのもわからなくはない。


「お前ら何者だ!」

「何故この場所が?」

「武器を下ろして投降しろ!」


などなど口々にほざいている。

俺達が何者なのかなのは、すでに察しはついているだろう。

この場所を見つけたのはたまたまだが、調査に慣れた者であれば

すぐに見つかっていただろうし。

それに、そもそも武器を構えていないから、下ろすものが手の中には無い。


それを無視するように、俺はじわじわと歩みを進め近づいていく。

勿論“神眼”を発動させて、相手の能力を調べることは忘れない。

こいつらには、利くようだ。

昨日、神眼で見抜けない事態が起きたが、あれはいったいなんだったのだろうか?

大したスキルは有していないようだ。

小者臭が凄まじい。

この計画を立てた者達なんだろうが、こんな連中が中核を成す自体無理がある話に感じる。


『トゥーン、カイン。俺が前を受け持つから、援護頼むよ。』


『わかりました。気を付けてください。』


『なんでだよ!俺様もやるぞ!』


カインはいつも通り聞き分けが良いが、トゥーンはごねていた。

しかし、この程度の相手に、トゥーンが出てくる必要も無いだろう。

病み上がりも病み上がりなのだ。

もう少し体を大事にすることを覚えて欲しいものだな。


『やばそうなら声を掛けるから、トゥーンはちょっと待機な。秘密兵器って事で、後ろでドンと構えておいてくれよ。』


『秘密兵器かぁ。よし、わかった!やってこいクルス!』


単純で助かるよ。

苦笑するカインも同じ気持ちだろうな。

俺の後をついて回っていたバルもやる気は万全のようだ。

昨日の晩も出番が無かった訳だし、好きにやらしてやるのもいいだろう。


人数をざっと確認して、手前に三人、後ろに四人。

隠れている者や、非戦闘員であるものもいるかもしれないが、目に入るだけで、ざっとそのくらい。

それよりも、昨日の騒ぎを知らない方が驚きだ。

村長の屋敷を燃やすような騒ぎだ。

煌々と燃え盛る建物を見れば、何か異変があったことに気付きそうなものだという話だ。

その辺の情報を得ることすら、おろそかにしているような連中が、これほどの大それた行動に移るものだろうか?

昨日、戦った者が首謀者だとしても、これはかなりお粗末なはなしだ。


「止まれって言ってんだろ!」


そうこうする内に、相手の攻撃範囲に足を踏み入れたらしく、そう言いながら手に持つ剣を、こちらに向けて降り下ろしてくる。

遅っ!

昨日のと比べても、その差は一目瞭然だろう。

俺は剣を持つ手を、思いきり殴り飛ばす。

柄と俺の拳に挟まれ、指がベキベキと折れる嫌な音が鳴る。

怯んだ所を、腹部を蹴り飛ばしてやると、それだけで後方に吹っ飛び戦闘に参加する事が出来なくなる。

これが引き金となって、恐慌状態に陥ってくれれば、こっちからの一方的な攻撃で終わるが、そう簡単な話ではないようだ。

とはいえ、こちらのやることは変わらない。


「バル!後ろの連中を頼むぞ!」


俺がそう告げると、嬉しそうにワンと吠えて駆け出す。

もうね、犬でいいよ。

さて、俺も残りの前衛を片付けるか。

若干の怯えの見える目をしながらも、こちらに向けて突っ込んで来れるのは立派な物だ。

しかし、実力差は歴然としたものがあるようだ。

魔剣を呼び出すまでもない。

黙らせるのに、素手で十分だった。

向かい来る一人の足を払うだけで、足が折れたのかその場に倒れ込む。

別の一人には、顎を軽く小突いてやることで、意識を簡単に奪うことが出来た。

制圧するのに、全く苦労をすることはなかった。

あまりに簡単に終わってしまった。

バルの様子はどうかと、そちらを見る。

能力差を考えれば、苦労することは無いとは思うが、それでも気にはなる。

すでに一人を倒した後のようで、もう一人に飛びかかっているところだった。

相手の喉笛目掛けて、大きく顎を開き、噛みちぎる。

呻くことすら叶わず、その場に崩れ落ちようとする相手を踏み台にするようにして、次の相手に向かう。

こちらがわの三人に加え、目の前の二人が無惨に殺されてしまったのだ。

残る二人は、戦意を喪失してしまっているようだ。


「バル、終わりだ!」


俺が叫ぶも、すでに三人目に向けてつき出されていた爪を止めることは叶わず、胴体に深い傷を与えたようだ。

まぁ、一人でも残れば話は聞ける。

前衛三人の内、一人は分からないが、残り二人は死んではいないだろうし、こちらからも色々と聞くことは出来るだろう。

途中で止められたせいか、バルはもの足りなさそうにしながら、こちらにトコトコと向かってくる。

口の回りが血だらけで、なんとも言えない異様な雰囲気を醸し出している。

武力を奪う程度で良かったが、バルにはそれは通じないようだな。

油断をすれば殺されかねない環境で生まれたのだから、それ仕方ない話なのかもしれないが。


「こちらにゆっくりと歩いてこい。無駄な事をするようなら、その命は保障しない。」


残された一人にそう告げると、怯えた様子を見せながら、こちらに近付いてくる。

下手な抵抗をしなければ、俺としては手を出す気はない。

脅しならば、バルの動きで十分だろうし。

大体、口の回りの血を見たら、恐怖で動くことは無いだろう。

これで、ようやくこの事件についての詳しい話が聞けそうだ。

いったい何の目的があってこんなことを仕出かしたのだろう?

ようやくバルがまともに戦闘に参加しました。

いや怖いね、この子。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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