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洞窟探索

洞窟の中はじめじめとしていて、とても住みたいと思うような環境ではなかった。

悪臭も充満しており、先に進もうとする足を止めたくなる。

辺りには苔が張り付いており、滑りやすい状態の中を進んでいく。

目の前には誰もいない。

死人化している村人達が、ある程度いなくなるまで待っていたためだ。

洞窟に侵入するのであれば、なるべく見つかるリスクは避けなくてはならないだろう。

どれだけの人間が洞窟に入っていったのだろう。

かなりの人数が入っていっていたが、人数を確認まではしていなかった。

というより、途中で止めたのだ。

村というが、かなりの住人が住んでいたのだろうし、滞在中に被害に遭った人間も多数いるのだろう。

もしかしたら、俺のような行動をとって被害に遭った者もいるかもしれなかったが、それについては考えないことにしていた。


『凄い臭いだな。さすがにこれはたまらんな。』


『ぐぇ・・・』


『鼻で呼吸するのを止めたらいいんですかね?』


『いや、それでも臭いものは臭いだろ。それにしても何がこんな臭いを出しているんだ?』


『見てみないとわからないですね。』


心の中でも変な鳴き声で呻くトゥーンの気持ちも分かるが、ここは耐えるしかない。

湿度が異様に高い道をしばらく進むと、開けた場所が見える。

この先はどうなっているのだろう。

不用意に進むことはせず、中をそっと覗く。

死人化した住人の姿は無かったが、道が三つに別れており、その内の一つに扉が設けられていた。

完全に密閉するように作られているその扉で、臭いの侵入をシャットダウンしているのだろう。

丈夫に作られた扉から、かなりの前から計画を練っていたであろうことが伺える。

さすがに住まいにしようとは思わないが、一時的な滞在場所程度にはなるだろう。


『さて、どの道を行こうか?』


『扉のあるところは誰かいるかもしれませんね。』


『どこでもいいぞ!はやくここから出よう!』


トゥーンの言うこともわからないではないが、まだここから出るわけにはいかない。

今出てしまっては、何しに来たかわからなくなるではないか。


『扉のあるところは後に回して、他から見ていこう。どんな風に住人達が扱われているかも見ることが出来るだろう。』


『わかりました。人道に反する行為をしてるんですから、扱いも酷いのでしょうね。』


望んで見たいものでは無いが、これも必要なことだと思っておくしかない。

手近な穴を進むことにした。

相変わらずの湿気にうんざりする。

道も歩き辛い。

走れば転んでしまうかもしれない。

しばらく歩いていくと、悪臭がより酷くなる。

早々に鼻が麻痺していており、我関せずで澄まし顔のバルが印象に残る。

それでも進んでいくと、凄惨な現場に対面することになった。


そこには、折り重なるようにして人が打ち捨てられていた。

人の死骸が腐っているようだ。

体がただれ、嫌な汁が床を濡らし、蠅がたかっている。

悪臭もそうだが、その光景に吐き気を覚える。

なぜこのようになったかは分からないが、そこには悪意の塊がこびりついているようだ。

下手をすれば、他の場所も似たような状態になっているのかもしれない。

俺達は今来た道を、陰鬱な気分で戻る。

さすがに、しばらくは肉は食べれないかもしれないな。

頭にちらつく今の光景は、しばらくは消せそうにない。


別の通路も奥まで進むと、牢屋のような鉄格子が嵌め込まれた場所に遭遇する。

その中にはすし詰め状態の人達が、その中に押し込まれている。

この中に自分で入っていったとしたら、どんなに哀れなことだろう。

立った状態でそれほど広くないその中に、奥までギッシリと入っている。

男も女も問わず、入り込んでいるその様に怒りを覚える。

取り合えず、首謀者を殴り飛ばしてやりたい気持ちだ。


怒りで肩を震わせながら、通路を戻る。

まだ、彼らを解き放つことは出来ない。

何らかの事態が起きた場合、敵に従ってこちらを襲ってくるのは目に見えているからだ。

道がわかれている場所に戻ると、彼らが押し込まれている場所に通ずる道を土魔法を発動させて小さめの空気穴を開けた状態にして塞ぐ。

鉄格子から仮にとき離れたとしても、これではそう簡単にこちらに向かってくることは出来ないだろう。

多少の音が鳴ったが、もう気にすることなく行動していた。

それほどに頭にきていたのだ。

赤の他人に優しすぎるかもしれないが、そう思ってしまったのだから仕方がない。

そして、扉の前に行く。


『カイン、止めるなよ。』


『ええ。さすがにこれは酷いです。』


俺の気持ちを、汲んでくれたのだろう。

何が待っているか分からない所に進もうとする俺を、カインは止めなかった。

そんなカインの頭をくしゃりと撫で、俺の頭の上で今尚臭いに悶絶し続けるトゥーンをカインの頭に乗せる。


『そんじゃ、行くぞ。』


そう言って俺は扉を思いきり蹴り飛ばした。

バゴッという音が、洞窟中に響きあがる。

扉はぶっ飛び、壁にぶつかる。

俺の進行を妨げるものは無くなった。

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