探索二日目
俺達は、アルクを宿に残して村の中を今日も見て回る。
昨日も探したのだから、特に何もないかもしれない。
だが、襲撃をうけてしまったくらいだ。
隠し扉のようなものがあるかもしれない。
ブラブラと歩きながら、村を探索していく。
頭の上にはトゥーンが乗っかり、バルはいつも通り後ろからついてくる。
思ったより、気乗りがしない。
何故だろうか?
昨日の戦いを経て、半ば依頼が解決したようなものだからだろうか?
「どうだ?何かありそうか?」
「うーん。特に変わったところは無いですね。」
「そうだよなぁ。」
家々を見ても昨日と変わらず、なんの収穫も無い。
それでも、死人になっていないものがもっといるはずだ。
生き残りがたった五人な訳は無いだろう。
それなりに訪れる者もいたはずで、どこかに隠れる場所があるのは間違いないはずなのだ。
若干楽天的な考え方になっているのは分かっている。
全ての者が死人化している可能性だって勿論あるわけだろうし、昨日の戦いの際に動員されていた連中で、全ての可能性だってある。
移動していると、村外れの方でバルが変な反応をする場所があった。
それは、キッチンでの反応に似ていた。
俺には分からないが、俺よりも嗅覚が良いのだろう。
しかし、民家はこの先には見えない。
少し進むと森の方へと行ってしまう。
過剰な反応に逆に興味をもった。
探していても何のヒントも得ることが出来ないのだ。
あえて、バルの嫌がる方向に向かってみることにした。
『おいおい、クルス!この先に行くのか?』
『ああ、村外れの方に向かっているな。』
『この先の方、かなり臭いぞ!』
『それは・・・やっぱり行ってみる必要があるな。』
『うわぁ。行きたくねー。』
頭の上で呻くトゥーンをそのままにして、進んでいく。
森に差し掛かる頃には、先程のバルの反応が無くなっていた。
臭いが無くなったのか?とも思ったが、そうでは無いらしい。
どうも鼻が麻痺してしまっているようだ。
俺にはまだ臭いが分からないんだが。
『どうする?このまま森を分け入ってみるか?』
『まだ早い時間ですし、少しなら良いかもしれませんね。』
『それなら行ってみよう。トゥーンもそれで良いか?』
『この先相当臭そうだな・・・』
『まぁ、頑張れ。』
『頑張りたくねぇ!』
場が少し和んだ所で、歩を進める。
頭の上でバタツかれても困るんだけどな。
この森はそんなに広くはなさそうだ。
魔の森とは繋がっていないのだろう。
生えている木からして違う物だし、密集具合にしてもだ。
魔の森特有の嫌な感じも無いし、魔物に特に襲われることもない。
歩いている内に、トゥーンやバルが嫌がる臭いがしてきていた。
まぁ、魔物がいないのはこの臭いのせいかもしれないな。
『クルスさん。何かいますよ。』
そんな中、カインが何かに気付く。
俺はカインの傍に寄る。
勿論、物音をたてないように注意してだ。
『あの先、見えますか?』
指を指し示す方向に、上の空といった感じで人が歩いている。
もしかしたら死人なのか?
判断の仕方が分からないがどうするか?
『あれは・・・死人か?』
『さすがにわからないですよ。アルクさん呼んできた方が良かったですかね?』
『今更言っても仕方ないだろう。ひとまず、あいつの後ろをついていってみよう。何か見つかるかもしれないぞ。』
『そうですね。本拠地のようなものがあるのなら、踏み込むのは後でもいいでしょうし。』
そうして、そいつの後ろを静かに歩いてついていく。
“神眼”を発動して見てみる。
種族 人
性別 男
スキル
体力増大(LV.1)
状態異常
死人化(小)
状態異常なども見えるのか。
死人化(小)とは、死人ということでいいのか?
それとも、絶賛死人化中ということか?
そいつは、のんびり歩いているのに変わらない程度の速度で歩いている。
体が重そうな動きをしているが、あの歩き方が普通なのか?
何かに向けて、歩みを止めることなく進むそいつについていくと、段々と他の似たような連中も歩いているところに遭遇する。
どいつもこいつも、気の抜けた呆けた表情の奴らばかりだ。
どうりで村の中で遭遇しなかった訳だ。
そして、そいつらは突如表れた洞窟に入って行く。
ということは、この洞窟に誰か潜んでいるかもしれないな。
考えてみれば、昨日剣を交えた相手は村人を死人化させるような搦め手を使ってくるような奴では無かったように思える。
無論、使えるものは何でも使ってやろうという考えはあったのだろうけど。
となれば、村人たちを死人化させる原因となった薬を用意した奴がいるはずだ。
『そろそろ戻りましょう。場所は分かりました。』
『・・・』
『クルスさん?』
『いや、このまま行こう。中の様子を知りたい。』
『そんな、危険です。』
カインの判断は正しい。
が、このまま放っておいたとして、中にいるであろう奴が異変に気付いて逃げ出さないとも言えない。
ここが、一つの分水嶺になるのではないかと直感したのだ。
『それなら、カインはトゥーンを連れて、アルクを呼んできてくれないか?』
カインの意見も尊重するなら、二手に別れるというのもいいだろう。
たった一人で移動させるのも不安があるし、病み上がりのトゥーンの事も考えると、良い考えに思える。
最悪の事態になった場合、中にいる連中全てを相手にとらなくてはいけなくなるかもしれない。
それを考えると、少し不安が残るもののここで退くという選択肢は俺の中になかった。
『おい!俺様も行くぞ!』
『そうです!どうしても行くというのなら、僕もついていきます!』
『すまんな。それなら行くか。』
こうして、俺達は洞窟に進むことにした。
まだ、探索は続くのじゃ。
しかし、絶賛死人化中という表現は、いかがな物かと書いてから思うのでした。
ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。
また、様々な感想を頂けるとありがたいです。
今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。