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魔剣の納まる場所

俺達は、宿に戻ると二階に上がり、始めに一夜を過ごすために利用した部屋へと移動する。

アルクは、死人ではないと判定していたが、どんな様子だろうか?

それに、バルの事も気になった。

元々、魔物であったのだ。

従魔なる登録をしたとはいえ、間違えば何が起こるか分からない。

それに懐いてからこちら、離れたことはほとんどなかったからな。

階段を上がり、部屋の前に来る。

何か予感がして、魔剣を適当に床に突き刺す。

刀身が剥き出しの為、不用意な事をすれば怪我をしてしまう。

それだけは避けなくては。

そうしてから、ドアを開ける。

すると、バルが飛びかかってきた。

階段を上がる俺の気配に気付いていたのだろう。

そのまま押し倒されてしまう。

予想は当たっていたようだな。


「クルス!?」


アルクが驚いた声をあげた。

端から見れば、魔物に襲われたようにしか見えないからだ。

バルはアルクの声など構わず、押し倒した俺の顔を嘗めていた。

もうこれは完全に犬だわ。

狼の名残の一つも存在しないような行動に、苦笑せざるおえないだろう。


「バルくん、嬉しそうですね。」


「いや、これは・・・中々珍しい光景だな。」


「クルスさんもバルくんを見て、安心したみたいですよ。」


「まったく・・・」


あまりこちらの心のうちを、言わないでくれないかな。

そう直接言われてしまうと、少し恥ずかしい。

確かに安心したのは否定しないけども。

バルの行動をしばらく受け入れていたが、二人が生暖かい目で見てくるので、そろそろ止めておこう。

バルの、モフモフの毛をわしゃわしゃやってから、俺の上からどかす。

心なしかスキンシップが足りないのか、油断するとまたじゃれついてきそうだ。

とはいえ、怪我を負ったトゥーンを休ませるのが先だろう。

バルを構い倒してから言っても、説得力の欠片も無いが。


「クルス、そろそろいいか?お前は、そいつを早いとこ寝かした方が良い。意識を失っているとはいえ、体に負担がかかり続けているのは間違いない。」


「ああ、分かってる。アルク、お前は?」


「俺は、この部屋の連中の様子の確認だな。まぁ、こっちは任せておけ。こっから先は、監査役でもあるギルド職員の仕事でもあるだろう。大体、調査なんぞ出来るか?」


「どうだろうな。ただ、面倒くさいのは間違いないな。」


「だと思ったよ。いいからそいつを休ませてやれ。」


そう言ってアルクは、襲われた部屋に入っていった。

一人に任せてしまっても良いのか、少し悩むところだが、ここは甘えておこう。

始めに休んでいた部屋の隣を覗くと、綺麗に片付いていた為、一先ずはこの部屋で休むことにしても問題は無いだろう。

カインが、トゥーンをベッドに寝かせる。

まだ、意識は戻らないか。

思ったよりも、血を流していたのかもしれないな。

体も小さいことから、多量の血液が流れれば、すぐに致死量に達するだろう。

今、息があることがどれだけ良かったか。


『おい、我を放置するでない。』


廊下の方から声が伝わってくる。

モルドレッドか。

そういえば、床に刺したまま放置していた。

特に持ってく奴がいるとは思えないが、危険な物を放っておくのも問題か。

そもそも、鞘は無いのか?

剥き身で持ち続けられる代物でもないだろうに。

トゥーンが、ベッドの上に横たわる様子を見ながら廊下に戻る。


『済まないな。別に放っておくつもりではなかったんだ。』


『いや、仲間が危急なのだ。心配するのも理解は出来る。』


『ところで、その身を納める鞘は無いのか?』


『我に鞘は存在しない・・・くっ、嫌なことを思い出した。我の求愛を断りおって・・・』


どんな言葉が引き金になるか分からないものだ。

何か思うところがあったのか、どうにも陰に入るスイッチを押してしまったようだ。

しかし、剣が求愛?

まったくもって、良く分からない存在だ。


『いや、何か済まないな。それで、剥き身で持ち続けなければいけないのか?』


『む?そんなことか。利き手で柄を握り、利き手の逆側で我の刀身に触れよ。』


『何?傷を負ってしまうじゃないか。』


『刃に触れねば良いだろう。いいから早くせよ。』


ひとまず言う通りにしてみることにした。

柄を握り、床から引っこ抜くと、言われた通りに刀身に触れる。

すると、左手に触れた部分が、手のなかに吸い込まれるように消える。

これはいったい?

そういえば、前の持ち主は、左の掌から引っ張り出すような事をしていたな。

押し込むようにすると、柄まで全てが左の掌に納まり消えてしまう。


『これで問題は無かろう。』


不思議な事ばかりで目が回りそうだ。

してやったりと言った口調が印象に残る。

もう、そういうものだと思うしか無いのだろう。


『引き抜くときはどうすれば良い?』


『左の掌に右手を合わせ、引き抜くイメージを浮かべれば良い。無詠唱で魔法を扱えるのだ。その程度のイメージくらい楽に出来るのだろう?多少の魔力を必要とするが、それは仕方あるまい。』


『ああ、分かった。』


『うむ。それで良い。では我はしばらく休む。』


言うだけ言って静かになる。

色々聞いてみたいことはあるが、聞いたところで自分の理解の外にある以上、無駄に終わる。

であるならば、これ以上は止めておこう。

頭が痛くなりそうだ。

何にせよ、剥き身で持ち歩く事は無くなったと思って、良しとしよう。


部屋に戻り、トゥーンの傍に腰を下ろす。

カインが心配そうな顔をしながら、バルの頭を撫でていた。

バルが嬉しそうにしているから、まぁいいか。


「トゥーン、早く帰ってこい。」


そう言って、軽く頭をつつく。

しかし反応も無く、身動ぐ様子も無い。

元気が取り柄の一つだろ?

早いところ動く姿を見せてくれよ。

ということで、魔剣はクルスの左の掌から出てきます。

中二病ここに極まれりですか。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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