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治療と呪い

トゥーンの様子が気になり、自然と早足で移動していた。

しばらく歩いていくと、それほど離れていないところに二人はいた。

もっと離れたところまで行けば良いと思うが、よくよく考えれば、夜はあまり適当に動き回るのは、良くないかもしれない。

それに、どうやら俺の様子もかなり気になっていた様子で、すぐに俺の姿を捉えたようだ。


「クルスさん、こっちです。」


カインの呼び掛けを受け、軽く小走りになりながら近づいていく。

アルクは、トゥーンを診ていてくれている。

周りに散らばる薬草や回復薬の入っていたであろうビンや包装紙が、努力の後を物語っていた。

怪我の様子はどうだろうか?


「トゥーンは?」


「まだ、意識が戻らない。やれるだけの事はやったんだがな。まだ、じわりと血が滲んできているところを見ると、完全には傷は塞がっていないな。」


「大丈夫なのか?」


「まだ、なんとも言えん。水魔法による治癒はどうにも受け付けなかった。このままでは危険なことに変わりはない。クルス、お前神聖魔法を使えたな。それで治癒させるしかない。」


「神聖魔法か・・・」


神聖魔法を用いて回復を行ったことなどない。

だが、そんなことを言っている場合では無いと言うことは分かっている。

自分に出来ることなら、やってみるより他無いだろう。

キサラに受けた治療を思い描き、それを真似してみるしか無いだろう。


魔剣を地面に突き立てると、トゥーンが横たわる前に跪く。

無下に扱ったせいか、何かモルドレッドが言っているが、今は構っている暇はない。

布をあてがわれ紐で括られた様子が、いかにも痛々しい。

確かにアルクの言う通り、布に血がじわりじわりと広がっているようだ。

血が流れすぎれば、危険なのはどの生き物でも共通な事は誰だってわかる。

まずは、この血を止める事が先決だ。


「カイン、トゥーンを押さえていてくれ。今は意識が無いだろうが、いつ目を覚ますか分からない。急に暴れられたら治るものも治らないだろうからな。」


そわそわとしながら、こちらを見ていたカインに声をかける。

少しでもトゥーンの治療に力になれるなら、治療後に自分がなにもできなかったと思う感情も薄れるだろう。

カインが、トゥーンの足と頭を押さえ付ける。


「それじゃ、アルク。布を取ってくれ。」


俺は身構え、その時を待つ。

アルクが、「いくぞ。」と小さく言うと、布を縛り付ける紐をほどく。

すると、流れが押さえつけられていた血が、再び流れ出したようだ。

その傷口に手を当て、神聖魔法を発動させる。

少しずつではあるが、傷が塞がってきたのだろうか?

トゥーンに触れるその手に、一心に集中する。

ただ、トゥーンの傷が癒えることを祈りながら。

やがて、流れる血も無くなり、傷が塞がる。


「どうだ?」


「ああ、これなら良いだろう。傷は塞がったようだ。大したものだな。」


「本当ですか!良かった。トゥーンくん・・・本当に・・・」


トゥーンが取り合えず無事であることがわかり、涙ぐむカイン。

目の前にある頭を撫でてやろうかと思ったが、手がトゥーンの血で汚れていたので、それはやめておいた。


「しかし、水魔法?でも回復を促す事が出来るのか・・・」


「何だ?そんな事も知らなかったのか。普通回復を行う為の魔法と言えば水魔法になるな。クルス、お前は水魔法も使えるのだろう?」


「あくまで水を用いた魔法だと思っていたんだよ。回復させるなんて、これっぽっちも考えた事無かったな。」


「そうなのか?もしかして、魔法についての知識がほとんど無いんじゃないか?」


「そうだな。何も勉強してないな。」


あくまでもイメージだけで魔法を使用していた。

現象を理解していれば、後はその現象に沿うようにそれに適した魔法を使用するだけだと考えていたからな。

何故、水を産み出す魔法で傷を癒すことが出来るのかは分からないが、その辺の知識を得る必要が今後出てきそうだ。

前の世界での常識外の現象だって起こりうるのだろう。

現に、魔法なんていう、説明しようにもメカニズムの分からない現象が発動出来るのだから。


「それなら、街に戻ったら魔法を習うといい。職務時間外なら、協力してやってもかまわない。」


「それは、ありがたいね。是非頼むよ。」


「ああ、任せておけ。」


「それで、なんで水魔法での癒しの効果が出なかったんだ?」


「うーん、それが分からないんだ。」


『それなら簡単だ。我に斬られたのだ。多少の呪いを受けたのであろうな。』


俺とアルクの会話を聞いていたモルドレッドが、自分が原因であると話し出す。

その言葉に、思わず俺はモルドレッドを見る。

その俺の様子に、アルクは不思議そうにこちらを見る。


「そういえば、あの剣はなんだ?」


「事件の元凶が持っていた剣だ。魔剣らしい。『呪いってなんだ?』」


「何?魔剣だと?それが本当なら・・・問題だな・・・」


顎に手を当て、何かを考え始めるアルク。

それをよそに、モルドレッドは饒舌に話す。


『我が魔剣であることは知っての通りだ。我は、強き闇の力をその身に宿している。強い闇の力を持った攻撃は、相手に様々な異常を起こす。呪いもその一つだ。呪いはその者の回復を阻害する。しかも状態異常に当てはまらないからな。我は王を簒奪する者だ。我に斬られたのならば、この程度当たり前だ。むしろ、この程度で済むとはな。その小さな獣、見所がある。闇の力に対する抵抗力が非常に高いと言えるな。』


自慢気に話すな。

今まで、この声を聞くものが中々現れなかったようだからな。

話したくて仕方ないのだろう。

それに、トゥーンが闇の力に対して、高い耐性を持っているのは“勇者”のスキルを持っているからな。

そのお陰で、何とか生き延びれたのだろう。

それにしても、俺も攻撃を受けたのに呪いにかからなかったのは何故だ?

闇魔法のスキルを得ていたからか?


「クルス・・・もしかしたら、大変な事が起こるかもしれないぞ。」


考えから抜け出てきたアルクが声を出す。

大変な事が起きたばかりだというのに、また大変な事が起きるのか?

しばらくは、ごめんなんだがな。


「何にせよ、この話も街に戻ってからになるだろう。詳しくは支部長から話があるだろうから、そのときにでも聞いてくれ。」


それだけ告げると、静かになってしまう。

魔剣が出てきただけで、それほどの事があるのか?

俺は不思議な事だと首を傾げる。


「クルスさん、アルクさん、ひとまずバルくんの待つ宿に戻りましょう。」


涙を拭き取ったカインに促される。

そうだな。

トゥーンを、こんなとこに寝かせ続ける訳にもいかないな。

俺たちは、トゥーンを抱きかかえるカインに従って、宿に戻る事にした。


この世界での呪いはこんな感じで。

もっと多様な効果のあるバッドステータスにしようかとも思ったんですけどね。


回復魔法に用いられるのは、水魔法と神聖魔法になります。

この辺は良くあるテンプレみたいなものですか。


しかし、水魔法でどうやって回復するのだろう?

理論が思い浮かばない・・・

ちょっと考えてみます。

思い浮かばなかったときは・・・フワッとした感じで・・・


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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