表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/123

魔剣

燃え盛る建物の瓦礫を押し退けながら、そいつはこちらに向けて、一歩一歩と歩みを進めてくる。

普通の人間であるなら、とうに皮膚が焼けただれ、見るも無惨な姿になっているはずだ。

だが、そいつは火をものともしない。

どころか、火がついてない部分に触れると火が起こるようだ。

何が原因なのだろうか?

解説をできる人間が周りに誰もいないことから、なんとか推測するしかないが、いまいちピンとこない。


「グァァァァ!!!」


もはや、異形の徒となったそいつが咆哮する。

ビリビリと体に強いプレッシャーがかかる。

やがて、建物の中から完全に姿を表す。

失ったはずの両足が存在している。

黒ずみ、足を置く地面から煙が上がっているように見える。

そのお陰で、こちらに歩んで来られたわけか。

さらに、断ち切った左腕の部分は、燃え盛る火で構成されている。

ただの魔物と呼ぶ事も出来なさそうだな。

むしろ、魔物というよりも悪魔と呼ぶべき存在なのだろう。

いうなれば火の化身のようなものか?

そいつが、こちらを見据える。


「グァァァァ!!!」


もはや、人の心など存在しないのだろう。

こんなものが野放しになれば、どれ程の被害が及ぶか分からない。

以前、盗賊の親玉が変化したプロトオーガなどとは、比べるべくもない。

辺りを燃やしながら、移動を続けるのだ。

魔の森などにさ迷い混むような事になれば、それこそ大事だ。

なんとか、ここで決着をつけなければならないだろう。


俺は、強く魔剣を握りしめると、そいつに斬りかかる。

燃え盛る火のような左腕に、剣が当たるが感触が無い。

本当に火で構成されているかのようだ。

それならばと、胴を薙ぐ。

が、硬質化されているのか、刃が通らない。


「くそっ!どうなってやがる!」


二度三度と続けるが、黒ずんだ足は左腕と同様に感触が無く、その他の部位は硬くて傷をつけることが出来ない。

俺のそんな様子を見て、ニタリと笑みを浮かべたように見える。

そして、反撃とばかりに硬質化した右腕で殴りかかってくる。

スピードは変化する前と、それほど変わりがないように思えた。

魔剣を用いて攻撃を防ぐが、後方へと吹き飛ばされる。

パワーが段違いに上がっている。

上手く着地することが叶わず、ゴロゴロと地面を転がされる。


「ぐっ、強い・・・」


ヨロヨロと立ちあがり、魔剣を構えながら様子を伺う。

ニタニタと笑いながら、ゆっくりとこちらに向かってくる。

まるで、強者が弱者をなぶるような構図だ。

あいつが獅子ならこちらが鼠か?

それならそれでかまわない。

獅子も猫科だったか?

窮鼠猫を噛むというじゃないか。

逆転の一手は必ずあるはずだ。

諦めることさえしなければ。


剣が通じないのであればと、魔法を放つ。

剣を持たぬ手で、水球を産み出すと投げつける。

燃え盛る腕に当たると一瞬の内に蒸発し、それ以外の部分に当たったところで、動じはしない。

風を起こすと、より火が燃え上がる。

礫を放ったところで、やはり動じることはなかった。

唯一、神聖魔法である光を放つと、若干怯んだ様子を見せるが、すぐに何でもなかったかのように歩き出す。


「くそっ!何も効かねーじゃねーか!」


ある程度の距離を保つように、移動を続ける。

が、このままではじり貧か・・・

さすがに、もうかくし球のようなものは無い。

どの引き出しを開けても、効果がないのだ。

こうなると、手は一つしか残されていないように思える。

それは、あいつが魔物に変化する前に溢した魔剣の特性。

上手く攻撃を受け、相手から受けるダメージをそっくりそのまま返すというものだ。

危険な賭けではあるが、これしかない。

綱渡りが続くな。

何か一つでも噛み合わなければ、すぐにやられてしまう。

そんな風に強く覚悟を心に抱く。


『おい、楽しそうなこと考えているな。』


突然、どこからか念話が飛んでくる。

いったい誰だ?

トゥーンやカインがこの場にいない以上、他の存在からであることは間違いない。

辺りを見回したところで、いるのは魔物に変化した化け物しかいない。

よもや、あいつが?


『おい、俺の声が聞こえているのか?』


いや、そんなはずはない。

そんな能力があるようには見えない。

今、奴にあるのは破壊の衝動のみだろう。

盗賊の親玉のときと同様に。


『なんだ・・・また、空振りか・・・』


少し寂しそうだ。

仕方がない。


『いったい誰だ?今取りこみ中だ。』


『む?聞こえてるのならば、もっと早く反応せんか!』


『だから誰だ!』


『あ?貴様が握りしめているじゃないか。』


『何?』


まさか、魔剣が話しかけてきているのか?

剣が?

どんな冗談だ。


『今、何か失礼な事考えなかったか?』


『いや、そんなことはない。それで、いったいなんだ?』


『楽しそうなことをしているからな。俺にも一口噛ませろ。』


『どういう事だ?』


『力を貸してやる。俺はやがて王に至る。そんな俺を無下に扱い続けたあのバカは許せん。』


力を貸すか・・・

どのみちこのままでは、なんの手も持ち合わせていなかった。

王に至るとか訳のわからんことを言っているが、力になってくれるなら何でもいい。

魔剣を自由に扱えるのだから、心も沸き立つというものだ。


『何だかよくわからんが、あのバカを許せんのには同意だ。』


『なれば、我を振るい奴を断ち切れ。遠慮はいらん。』


『了解した。力を借りるぞ。』


グッと柄を握ると、体の中の魔力が根こそぎ吸い上げられるような感覚が襲う。

これは中々キツいな。

それでも怯まず、柄を握りしめる。

段々と、刀身が黒い光を帯び始めた。


『貴様、闇魔法の素養があるのか。成る程、これは面白い。』


『何がだ?』


『いや、いい。その闇の光を奴に放て!』


「いくぞ、おりゃーーー!」


魔剣を振るうと、黒い光が空間を食い潰すようにして進み、火の魔物に食らいつく。

まず、左腕に巻き付き火を食い散らすと、その身へと浸食を始める。

身をよじりながら、その光を消そうともがくが、何も意味をなさない。

胴を、足を、腕を順繰りに食らいつくしていき、最後には頭へと牙を向く。


「グァァァァ・・・ま・・・お・・・さ・・・」


最後の咆哮を上げる。

何かを言ったようにも聞こえたが、なんだったのだろう?

やがて、魔物の全身を食らいつくすと、ふっと消えてしまう。

呆気ない幕切れになった。


『あっさりだな・・・』


『フン!この程度、赤子の手を捻るようなものだ。』


『何にせよ、助かった。恩にきるよ。』


『そうか・・・ならば、しばらくの間力を貸し続けてやろう。』


『何が狙いだ?』


『我のみでは、移動もままならん。貴様に力を貸すかわりに、我の目的に手を貸せ。』


目的?

剣の癖に目的なんぞあるのか?

人のような感情を持っているな。

それに随分と態度がでかい。


『貴様、また失礼な事考えなかったか?』


『いや、そんなことはない。協力してくれるというのなら、ありがたい。』


『フン、それでよいのだ。して、名は?』


『俺か?クルスと言う。』


『我はモルドレッド。王を簒奪する者だ。』


何だかよく分からないが、力を貸してくれると言うならそれでいい。

恐るべき力を秘めているのだ。

放っておく訳にもいかないだろう。

鞘が無いので、刀身を剥き出しのままに、二人が撤退して行った方へ移動を開始した。

戦闘終了です。

モルドレッドの由来は・・・言わなくてもわかるか・・・


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ