リンガの実
オーグより教わった通りに南へと進路を取り移動する。
時折、進行方向にそびえ立つ古代樹に道を尋ねながら移動を続ける。
移動しながら、分かったこと。
それは植物といえど性格に違いがあり、各々にちゃんとした意志が存在しているということ。
移動こそ出来ないものの、古代樹達は確固たる意思を有していること。
古代樹達とふれ合うたびに不思議と元気をもらえる気がした。
森の中を裸足で歩き続ける事で細かい擦り傷が露出した皮膚に数多く出来ていた。
しかし、自然治癒増大が効いているのか、それとも体力増大が効いているのか、むしろ両方のスキルのお陰なんだろう。
直ぐに治っていく。
傷の治りの速さに、自分の体ではないように思えてしまう。
やがて、赤い実のなる木を発見するに至った。
見た目はリンゴのような身をつけている。
始めに目を覚ました場所から、それなりに離れた場所であり、古代樹達の案内がなければ迷子になっていたかもしれない。
一応“神眼”を使用し、毒が含まれていないか確認する。
名前 リンガ
食用に向いた果実を成す果樹
リンゴではないのか。
リンガって名前も、なんか名前をもじったパチモンのように思えてしまう。
しかし、神眼は万能だな。
ここに来るまでにも何度か使用したが、対象に意思のある場合とそうでない場合は説明が違う。
この説明は一体誰がつけているのだろうか?
木に近づき手を伸ばす。
赤い実をもぎ、口に運ぶ。
咀嚼すると、シャリシャリと小気味のいい音を立てる。
口の中に爽やかな酸味と確かな甘味を感じる。
いや、リンゴだろこれ。
食べ進めるたびに体に活力が湧いてくるようだ。
流石に1つでは足りず、いくつかを食べた。
実に含まれる水分も中々のものであり、水を得ることは叶わなかったものの、喉の乾きを癒すこともできた。
腹が膨れると眠気が襲ってきた。
木漏れ日として柔らかく注ぐ日の光もあり、どうにも心地よく。
こんなところで眠るのはどうかと思うが少し休憩しよう。
そう考え、リンガの木の幹に背中を預ける。
静かに目を閉じると、一気に微睡みの中へと意識が引きずり込まれてしまった。
少し肌寒い。
その気温の変化で目を覚ます。
気づけば辺りは暗くなっており、いつの間にか夜になっていたようだ。
どの程度眠ってしまったのだろうか?
なれない環境に疲れが溜まっていたようだ。
それにしても時間が分からないのは痛い。
どの程度で日が落ち、どの程度で日が昇るのか分からないだけでここまで不安になるとは。
ともかく、夜が訪れてしまった以上、あまりうろつくのはよくないだろう。
リンガの実を1つもぎ、口に運ぶ。
食べれるときに食べておかなければ。
それにしても暗い。
昼と夜でここまで表情を変えるものだとは思わなかった。
それもそうか。
薄明かるい星の光では、生い茂る木の枝葉を潜り抜けてこれないようだ。
だんだんと夜目になれてくるが、あまり遠くは見通せない。
「キュキーーーーー!!」
突然、どこからか聞いたことの無い鳴き声が辺りに響く。
昼間には聞くことのなかった鳴き声だ。
やはり森の中、何か生き物がいるのだろう。
知らず知らずの内に、その生き物のテリトリーにでも踏み込んでしまっていたのだろうか?
暗闇に包まれ、声の主の姿が見えない。
それだけで、いやだからこそか恐怖が体を支配する。
追い払うにしても、素手でなんとか応戦するしかないのか。
特に格闘技経験は無いのが悔やまれる。
何か習っとくべきだった。
何かないのか?
たまたま地面に落ちていた木の枝を拾い上げる。
何もないよりはマシだ。
低い態勢を取りながら、何かあれば直ぐに飛びかかれるように準備する。
そして、闇の中から奴は現れた。
「キュキーーーーー!!」
という甲高い鳴き声を上げながら。
「・・・リス?」
気の抜けた声を思わず漏らしてしまう。
なんとも言えない空気がその場を支配するのだった。
名前 クルス・カミヤ
性別 男
年齢 18
スキル
神眼、体力増大(LV.1)、強奪(LV.1)、気配遮断(LV.1)、複写、隠蔽(LV.1)、意志疎通、自然治癒増大(LV.2)、成長促進
本人は擦り傷程度と思ってますが、実はそこそこ大きい切り傷とかも出来ていました。
身体能力に付与されるタイプのスキルは常時発動
し続けるスキルであることもあり、本人が気づかぬ内に回復していました(自然治癒という現象を意識して使える人がいるとは思えませんよね)。
それにともない、成長促進の効果と相まって“自然治癒増大”のスキルレベルが上昇しています。
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