宝の山
昼食が終わり、今回はカインを伴って、冒険者ギルドに向かう。
昼食にお金はかからなかった。
宿代に含まれているということだ。
これには、正直助かった。
早いところ、懐具合を気にしなくても良いようにしないといけないな。
『それにしても、結構強引に冒険者になんてなってしまったんですね。』
『まぁ、今の俺にすぐに就ける仕事なんてそうそう見つからないだろ。そういう意味では、渡りに船だったのかもな。』
『うーん、クルスさんがそう考えているならいいですけどね。』
カインはまだ、あまり納得していないようだな。
そこまで考えても仕方がないだろうに。
ここは思慮深いと、見といてあげようか。
決してただの心配性などとは思わないことにした。
程なくして冒険者ギルドに着くと、どうせならカインもガイエンの元に連れていくべく、冒険者の登録の完了を待つことにした。
下手に面倒事の話だった場合、巻き込むこと必至だったからだ。
カインを待つために、同じフロアに設置されている椅子の一つに腰かける。
ただ待つというのも、暇なものだ。
トゥーンを構ってやりながら、周りにわんさかいる冒険者達を神眼を発動させて面白いスキルが無いか見回していく。
すると、自分の持ち合わせてないスキル持ちが結構いた。
無手熟練、長剣熟練、弓熟練、斧熟練、闇魔法、投擲、連携、細工、鍛治、気配探知、毒耐性、麻痺耐性、混乱耐性、衰弱耐性・・・などなどだ。
沢山の種類が有るものだ。
先天的な才能なのか、後天的な努力で得たのかは分からないが。
上手いこと、スキルを獲得出来るか、後で試してみるとしよう。
すれ違いざまにぶつかるくらいなら、端から見ても自然か?
それよりなにより、気になるスキルがあった。
その中でも恐らく代表的なものが“剣術”というものだ。
“長剣熟練”というスキルとの違いはなんだろうか?
長剣熟練・・・長剣の扱いが上手くなる
剣術・・・修練を積んだ証
説明も、いまいち分からない。
カインの様子を見に行くふりをしながら、そのスキルを持つ者にすれ違いざまに軽く当たり“複写”を発動させるが、コピーすることが出来なかった。
説明にも、修練を積んだ証とあったわけだし、獲得するには何らかの資格が必要なのだろう。
上手くとることが出来なかった事に、少しがっかりしながらも、カインの元へ。
ちょうど、説明が終わった辺りのようだった。
「どうだった?」
「簡単に取れましたよ。『後はトゥーンくんのぶんですね。』」
『お、俺様の番か!頼むぞ、クルス!』
「『そっ、そうだな。』それじゃ、行くか。」
冒険者登録カウンターに座る職員の女性に、支部長に取り次いでもらえるように話すと、少し待つように言われる。
そして、その女性は奥に引っ込んでいく。
なかなかに綺麗な人だった。
俺のときは、ゴッツイおっさんだったというのに・・・
程なくして、別の男性が俺を呼ぶしぐさを見せる。
その姿に気付き、カインを連れて男性の前に行く。
少し怪訝な表情をしたように見える。
「申し訳ありませんが、お連れの方はご遠慮願いますか?」
「お連れ?あぁ、カインか。今後も行動を共にしていくつもりなんでな。なるべく情報は共有したい。」
「いえ、許可が出ていませんので。」
融通が利かないな。
上の許可がおりないから、了承出来ないのは理解できる。
だが、こちらの要望に対して、何らかのアクションを取るべきだろう。
なにせ、こちらは呼び出されたから来ただけなのだから。
冒険者ギルドに登録したとはいえ、別に部下になった訳ではない。
制度を見ても、あくまで独立採算制をとっている訳で、養ってくれる訳でもない。
「そうですか。こちらの希望が通らないのなら、今回はここで失礼する。」
「待ってください。支部長がお呼びしているんですよ?」
「そうですよ。僕は遠慮しておくので・・・」
そう言って、身を引こうとするカインを留まるように促す。
俺はその男性職員に強めの口調で言葉をぶつける。
「それがなにか?権限に頭を垂れるために、このギルドに登録した訳じゃない。あくまで呼ぶから顔を出しただけだ。」
「なっ、冒険者ギルドを侮辱するんですか!」
「そう取るのか・・・それなら、仕方無いな。これ以上の話は無駄だろうし、ギルドの登録証は返す。これで、もう縁は切れるだろ?」
「いや、その必要は無い。」
売り言葉に買い言葉のようになってきてしまっていた俺と男性職員を制止する声が飛ぶ。
そこには、ガイエンと先程の女性職員が立っていた。
「何を騒いでいるかと思ったら・・・」
「いや、ガイエン支部長、リフィさん。これはですね・・・」
二人が登場したことにより、男性職員はしどろもどろになっていた。
まさに、権限に弱い人の典型のようだ。
「仕事に実直なところはいいが、もう少し柔軟性をもった考え方を覚えなくてはいかんな。冒険者ギルドなんだ、臨機応変にな。」
「・・・はい、申し訳ありません。」
ガイエンに頭を下げると、こちらを睨んでくる。
その視線にこちらも睨み返してしまう。
こちらにきて、随分怒りやすくなってしまったものだ。
肉体の若さに、精神が引っ張られているんだろうな。
「もう止めんか!アルク、持ち場に戻れ!」
ガイエンから怒号が飛ぶ。
その声にしぶしぶといった感じで、奥の部屋に戻って行く。
その間も、こちらに睨みを利かせた状態でだ。
その視線に対して、鼻で笑うようなしぐさをすると、より睨み付けてくるのがわかる。
「クルス!お前ももう止めんか!カインといったか、同席を許可しよう。共についてくると良い。」
「では、こちらへお願いします。」
リフィと呼ばれた女性に促され、後をついていく。
本来なら、ここで働く者しか通ることなど無いのだろう通路を通り、一番奥の部屋へと誘われる。
部屋に入ると直ぐのところに、立派なソファーが向き合うようにして置かれており、間には木を磨きあげたテーブルがあった。
その奥には、ガイエンのであろう机がある。
壁には絵が幾つか掛けられていた。
支部長室兼応接室といったところだろう。
「適当に座ってくれ。」
「それで、俺に話ってなんだ?」
ガイエンが座ったソファーの対面に座る。
その横にはカインが続いた。
リフィは、ガイエンの後ろに立っていた。
秘書みたいだな。
ただの受付嬢では無いようだ。
「うむ、回りくどいことはあまり好きではないようだからな。早速本題にいかせてもらおう。」
「その方がいいな。時間もかからないし、むしろスマートなやり方でいいんじゃないのか?」
「そう思うか。で、質問なんだがクルス、お前何者だ?」
ちょっとした要素を増やしてみました。
詳細はいずれ話の中で。
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