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これが模擬戦闘?

練習場に来ると、先程同じ講習を受けた連中が来るまでのんびり待つことになった。

特にすることも無い為、暇になってしまった。

練習場の隅の方に据え付けられたベンチを見つけたので、そこに横になる。

木陰になっていて、居心地良さそうだ。


『なんだ?もう終わりか?』


『これがまた、まだあるんだよ。模擬戦闘なるものが有るんだと。』


『模擬戦闘?』


『戦いなれてない初心者に、魔物との戦い方をレクチャーしてくれるんだろうよ。』


『クルスに必要あるのか?』


『さぁ?』


それほど期待は出来ないだろうな。

この街に来る前に、いくらでも戦闘経験はあるのだから。

それでも、他の人間がどう戦うのか。

もしかしたら参考になるものがあるかもしれない。


しかし、模擬戦闘とは言っているが、どのような事をするのだろうか。

対人戦か?

そちらは経験は有るものの、それほど参考にはならないよな。

相手にしたのは、盗賊だったし。

より強い、何らかの武術の達人とかにぶつかったなら、どうなるか分からない。

さすがにそういう相手は出てこないか・・・


しばらく待っていると、例の目がキラキラとしていた三人組が順番にやって来る。

それぞれ悲喜こもごもといった表情だ。

自分にあった魔法の素質に対する反応だろう。

ガッカリしていた者も、仲間に素質があったことを知ると素直に祝福していた。

性格いいな。

ま、ある意味良かったのかもな。

前衛、後衛の役割分担が整えば、パーティーとしての組み方の方向性も決まるというものだ

彼らには頑張ってもらいたいと、思ってしまった。


その後に来たのは、ちょうど朝、冒険者の申請をしていた女の子だった。

彼女も嬉しそうな表情をしている。

彼女も、結果が良かったのだろう。

彼女も含めて、みんな楽しそうで羨ましくなる。


『なぁ、まだ?』


どうやら退屈のピークが来たのか、トゥーンが焦れてきている。


『受講していた連中も集まってきたし、もうじきじゃないか?』


『むぅ・・・わかった!』


そう言いながらも、退屈なのは変わらない。

何気なく、その辺に落ちていた木の枝を拾って、トゥーンの前をヒラヒラさせると、それをバシバシと叩いてくる。

お前、猫じゃなくてリスだろ?


「諸君、待たせた。」


そう言って、周りを見渡す。

もう、待ちくたびれたよ。

受講者が沢山いたなら、もう帰っていたかもしれない。


「準備は良さそうだな。では模擬戦闘を始める。」


ガイエンが振り向くと、職員がやって来て、ガイエンになにやら耳打ちをした。

これから行われる模擬戦闘の準備が整ったのだろう。


「うむ。では、早速説明する。諸君らは冒険者になるにあたり準備をこれまでしてきたと思う。冒険者に戦闘は付き物だ。諸君らにはこれより近隣の森より捕獲した魔物と戦ってもらう。」


その言葉を聞き、講習受講者は皆驚いた表情をした。

俺も少し驚いた。

街中に魔物をつれてくるとはな。

その辺の管理を見せてくることで、冒険者ギルドの力でも示してきてるんだろうか?

皆が驚いた表情を見て、ガイエンが笑う。

趣味が悪いな。


「Eランクの諸君でも十分に渡り合えるレベルの魔物だ。とはいえ油断をすれば怪我は免れない。無論、無理強いはしない。今、ここで魔物と戦う必要は無いと考える者は、辞退をして構わない。リスクを見極め、確実に生き延びることこそが、冒険者として最も必要な素養だ。」


ガイエンはそう言うと、俺達の顔を見る。

別に辞退しても構わないんだけどな。

辞退するならば、この場から去らねばならないだろう。

他の連中が、どのような対応をするか見たいのならば、とどまるしか無いだろう。


「辞退は無しでいいんだな。では、これより始める。敵はウェアラット、森の浅い所に大漁に生息している魔物どもだ。」


そう言って、ガイエンは練習場の隅に移動し、手を上げる。

それを合図にして奥の方の鉄の門扉が開き、魔物が練習場へと躍り出てきた。


出てきたウェアラットは5匹か。

一人につき一匹ということか。

まぁ、あの程度なら楽勝だろう。


女の子が一刀で魔物を屠った。

これには、驚いた。

見た目と違って、中々の使い手のようだ。

なるほど、これなら女の子だとはいえ、冒険者を目指すのも理解できる。


一方、キラキラ三人組は三人で連携をしながら、一匹のウェアラットと戦っていた。

それほど戦い慣れはしていないようだ。

これからの成長に期待ということだろうか?


で、疑問なんだが、何故俺のところに三匹も来ているのだろうか?

全くもって、理解できない。

一人一匹じゃないのか?


「うおっと。」


矢継ぎ早に突撃してくるのを、躱し、躱し、躱す。

いい加減邪魔くせーな。

そのまま持ったままだった木の枝で、突っ込んできた一匹を殴り飛ばした。

その時、油断したのかトゥーンが頭の上から、ローブの中に転がり込んでくる。


『おい、何やってんだよ。』


『しょうがないだろ!滑ったんだから!』


しかし、さすが木の枝。

あっさりと折れる。

折れた枝を持ち続けても仕方がないので、別の一匹にぶん投げる。

そして、その後もしばらく攻撃を躱し続けていたら、ガイエンから怒号が飛んできた。


「クルス、遊んでいないで真面目にやらんかっ!」


ハイハイ、ちゃんとやりますよ。

まだ、キラキラ三人組の様子を見ていたかったのに。

深くため息をする。


その直後に、真っ直ぐに突っ込んできた一匹を、右足で思い切り蹴り上げる。

宙に浮いたそれを、別の一匹に向けて殴り飛ばすと巻き込まれる形で2匹とも吹っ飛ぶ。

吹っ飛ばされた2匹は、ピクリとも動かなくなった。


弱すぎないか?

森を抜けてくるときに戦ったのの方が、よほどの強敵だった。

まぁ、講習だし仕方ないのか?


最後の一匹は、先程までのように飛びかからず、こちらを見ながらぐるぐると周りを回り、隙をうかがいだす。

余計な時間稼ぎにしかならないが、しばらく付き合ってやるか。


そんな最中、俺のローブの中に紛れていたトゥーンが這い出てくる。


『あー!もう、俺様にもやらせろー!!!』


『なっ、おい!』


トゥーンはバッと肩から飛び降りると、ウェアラットに対峙する。

こうなってしまったのなら、任せるしかないか。

少し後ろにさがる。

それと同時くらいで、ウェアラットがトゥーンに飛びかかる。


「危ない!」


そうそうに模擬戦闘を終わらせた女の子が叫んだようだ。

確かにはた目には危ないよな。


トゥーンは、さっと躱すと首筋に噛みつき、肉を引きちぎる。

そして、微妙に距離を取ると、ウェアラットの様子を見ている。


『もう、終わりか?』


『みたいだな。拍子抜けもいいとこだろ?』


もう、ウェアラットはこっちに向かって来ることはないと思ったのだろう。

こちらに戻ってくると、俺の肩の上に乗る。


『しっかし、これで何とかやってけるもんなのかね?』


『ん?なにがだ?』


『いや、冒険者の連中だよ。もっと強いのと戦っていかないと、強くなんてなれないだろ?』


『それより、腹へったな。そろそろお昼どきだろ!』


『あぁ、そうだな。』


相変わらずのマイペースだな。

しばらく待たされ続けたこともあるし、もしかしたら大分良い時間になっているかもしれないよな。


「うむ、皆無事に倒すことが出来て何よりだ。これにて模擬戦闘を終了とする。各自今日は休み、明日より活動を開始するといい。それと、クルス。あとで支部長室に顔を出せ。以上だ。」


ガイエンがすべての戦闘が終わったと、締めくくりの言葉を放ってさっさとその場を後にする。

しっかし、なんで俺を呼び出すかね?

模擬戦修了。

クルスは獲得していたスキルと、森を抜けるという試練と相まって相当強くなってます。


キラキラ三人組という名前がちょっと気に入ってしまった・・・

今後の登場予定は無かったけど、出番作ってやろうかな・・・?


話の整合性を上手く出すのは難しいですね。

杖の存在を忘れて慌てた・・・


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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