登録
「まず、ギルド登録料として銀貨5枚を貰おう。」
「金取るのか。」
「必要経費というやつだ。冒険者ギルドは慈善事業ではないからな。」
「そうか。」
そっと銀貨を差し出すと、ふんだくるようにして奪っていく。
銀貨5枚は正直、懐に来るものがある。
金貨を持っているとはいえ、これは俺の物ではなくトゥーンの物だ。
身勝手に使っていいお金ではない。
そうなると、防人の集落で得たワイルドボアの売却金しかないのだが、それもかなり目減りしている。
こうなれば、サクサク依頼をこなして、報酬を稼がなくてはいけないだろう。
「確かに受け取った。それでは、まずこの登録書に記入してくれ。」
俺は、カウンターに置かれた登録書に目を通す。
名前、年齢、性別、特技を書き込むようだ。
記入欄はこれだけか?といったところで、気付かされた。
俺はこの世界の文字を書くことが出来ない。
「すまんが、字が書けないのだが?」
「何?どんな田舎から出てきたんだ。まぁ、いい。代筆しておこう。名前は?」
「クルスだ。クルス・カミヤという。」
「そうか。性別は男でいいな?年齢は?」
「18になる。」
「18でもうそんな尊大な言葉遣いなんだな。」
余計なお世話だ。
チャラい奴よりはマシってもんだろ。
「特技は?」
「特技?」
「クルス、お前が何が出来るか分かるようにしておくと、他の冒険者からパーティーに誘われやすくなる。前衛後衛それぞれ欲しがる役割はパーティーによって様々だからな。ソロで活動するというならその限りではないがな。」
なるほど。
人によって特性は様々だ。
前衛だらけを集めても援護は期待できないし、後衛だらけでは敵の攻撃から身を守りながら戦うにも一苦労だ。
なるべくバランスよくパーティーを組めば、魔物との戦いもしやすくなるだろう。
「絶対に書き込まなければいけないのか?」
「特技の項目については、その制限は無いな。後から変更も可能だしな。」
「それなら、そこは空欄でいい。いちいち何が出来るか、手の内を明かすような事はしたくない。」
「ほう・・・よほど自信が有るようだな。」
「そういう訳じゃないさ。ただ面倒事はごめんなだけだ。」
「まぁ、いい。本人の希望だしな。よし、これで登録自体は終わりだ。次に、登録証の作成をする。」
登録書を仕舞うと、次は白いカードを取り出す。
「これがお前を冒険者だと証明する。カードの真ん中を押さえろ。」
人差し指で、カードの真ん中を押さえる。
すると、カードの色がみるみる内に変わっていく。
なんだこりゃ?
「無事に登録証として登録出来たようだな。」
「なんで色が変わる?」
「さて、詳しい話は聞かないな。そういうものだと思っていたから、特に疑問に抱かなかったな。さて、指を離してそこに記載されていることに間違いがないか確認をしてくれ。」
指を離し、色の変わったカードを見ると、名前、年齢、性別が記載されていた。
やはり、どういうことだ?
まるで、俺の情報を見透かされているようだ。
「依頼の受注や報告をする際、登録証の提示が必要になる。大切に保管しておくように。再発行に金貨一枚かかるからな。」
「登録は銀貨5枚で済むのに、再発行だと金貨を取られるのか?」
「登録証の紛失は、管理不行きであることの証明になるからな。管理すら出来ないのなら、そのくらい仕方ないだろう。もっとも、特殊な事情があるなら、適用されないこともあるがな。」
「なかなか厳しいな。」
「まぁ、仕方ないだろう。この程度も守れないのなら、依頼をこなすことなど出来ないだろう。」
誰もが守れることをこなせないのならば、仕事など到底こなしていくことなど出来ないと見なされるわけか。
わからないでもないな。
罰則が厳しいとは思うがね。
「これで登録は終わりだ。今日より、Eランクからのスタートになる。」
「そうなのか。以外と簡単に終わるものだな。」
「確かに間口は広いな。依頼もそのランクに応じて推奨のランクが決まっているが、どの依頼を選ぶのかは自由だ。」
「なるほど、全ては自己責任ということか。」
自由度が相当高いな。
何をやってもいいのか。
調子にのって、身の丈に合わない依頼を受けてしまわないように注意しなくてはならないだろうな。
「その通りだ。無論、簡単に依頼を失敗しても困るのでな。初心者講習がこのあとある。受けていくといい。」
「いつ頃から行われるんだ?」
「朝を告げる鐘の音がなってからになるな。大体その辺りだ。」
「そうか、なら一旦出直してくる。」
朝飯くらい食いたいしな。
ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。
また、様々な感想を頂けるとありがたいです。
今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。




