表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/123

宿への帰路

結果、予想通りというかなんというか・・・

本当に、食べてばかりの散歩になってしまった。

こちらの言語で表されていた為名前こそ違うが、クレープやガレットにお好み焼きやたこ焼き、綿菓子にリンゴ飴など、かつての世界でも出店で買うことの出来たものに、非常に似通った物が多数あった。

俺は、さすがに全てを食べることは無かったが、トゥーンは色々な物を次から次へと平らげていった。


一体、どこに入っているのだろうな?

トゥーンの体積よりも多い量を食べている。

見た目には、なんの変化もなかった。

が、はっきり言って食べすぎだ。

手元に残っていた銀貨も心もとなくなってきた。

こんなになるまで、食べさせた自分も悪いのだが。


『そろそろ、宿に戻ろう。』


『んぇ、もう?』


『いや、いくら何でも食い過ぎだろ?財布の中身全てを無くす気か?』


『まぁ、そういうことなら仕方ないな!』


ピョンと飛んで、俺の頭に乗る。

すると、いつも以上の重さがかかる。

くっ、首が・・・


『トゥーン、悪いがちょっと降りてくれ。』


『えっ?なんでだよ!』


『お前、重すぎだろ!首もげるかと思ったわ!』


『えー!』


『だーっ、重い!』


ごねるトゥーンを掴み、無理矢理にでも頭から引き剥がす。

どうやら、体重自体は増えているみたいだ。

なんの役に立つか思い付かないが、不思議な特性だな。


『嫌だー!乗るー!』


なぜ、そこまで俺の頭の上に執着する?

別にお前の巣でも何でもないぞ。

また飛びかかられては、かなわない。

しょうがないな、トゥーンを抱えたまま宿へと向かう。

ええい!腕のなかで暴れるんじゃない!


ようやくの思いで宿に戻ることが叶った。

移動中、絶えず腕のなかでジタバタし続けるものだから、スレ違う人スレ違う人に、奇異の目で見られたことは間違いない。

宿にはすでにカインが戻ってきており、笑顔で迎えてくれる。


「クルスさん、やりましたよ!」


「その顔だと、結構良い額で売れたみたいだな。」


「えぇ、凄い額になっちゃいましたよ!もう、しばらく遊んで暮らせてしまうほどの額ですよ!」


「そりゃ凄いな。まぁ、カインが預かっといてくれれば、っとぉ。」


カインと話をしている内に、腕の中からトゥーンが抜け出す。

こっちを睨んでいるようだ。

そんなに怒らんでもいいだろうに。


『どうしたの、トゥーンくん?』


『クルスが、頭の上に乗せてくれないんだ!』


『えっ、それで怒ってたの?』


何事かと思っていたのだろうカインは、呆気に取られたような表情をしている。

軽くため息を一つ吐くと、カインになぜこうなったのかを教えてやった。

それを聞いて、カインが笑う。


『それは、仕方ないんじゃないかな。』


『なんでだよ!いつも乗ってたぞ!』


『そりゃ、いつも以上に重くなりすぎてたら、クルスさんだって嫌がるよ。それに、まだ病み上がりだよ?』


『そうなのか?』


『あぁ、そりゃあな。』


『むぅ・・・』


なんで、俺が嫌がるとあんなに反抗して、カインに諭されると納得しているのか。

まぁ、納得したなら良しとするか。


「あらあらー。おかえりなさいー。」


騒いでいたのが、耳に入ったのだろう。

奥の方から、キサラが出てくる。


「あぁ、すまない。騒いでしまった。」


「いえいえ、良いんですよー。元気な事は、良いことですからねー。あ、夕食はどうしますー?」


「あ、僕はいただきます。クルスさん達はどうします?」


「せっかくのところ申し訳ないが、今日は止めておくよ。」


トゥーンと様々なものを食べ過ぎた。

さすがにこれ以上は入らない。

トゥーンを、ちらりと見る。

トゥーンもこちらを見ていたようで、視線がぶつかる。


『夕飯だってさ。どうする?』


『俺様は止めとく!』


苦渋の決断でもするかのようだな。

そこまで食べることに執着するもんなのか?

森のなかでは、なかなか食べ物が手に入らない事もあるか・・・


『別に無理しなくてもいいぞ?』


『無理なんかしてない!』


頑なに夕食を断るトゥーン。

もう、こりゃ意地になってるな。


「すまないが、部屋はどこになる?」


「あ、それなら僕が案内しますよ。」


カインが案内をかってくれるので、後ろからついていくことにした。

その後ろを、チョロチョロとトゥーンもついてくる。


部屋の中も無駄な装飾はされておらず、殺風景といってしまえばそれまでだが、これはこれでいい。

むしろ、無駄なものが無い方が落ち着く。


部屋に入ると、さっさとベッドに横になる。

先程、カインが病みあがりと言っていたが、もっともだ。

大した距離を歩いたわけじゃないが、どうにも疲れていたようだ。

すぐに眠気が襲ってくるように感じた。

まぶたが落ちかけた目で、トゥーンの様子を見ると、どうしようかと思案しているようにみえる。


『トゥーン、おいで。』


そう言いながら、少し横によってスペースを空けてやると、そのスペースにまで来ると体を丸くしたので、軽く撫でてやる。

本当にしょうがない奴だな。

その手をトゥーンの上に置いたまま眠ってしまった。

ほのぼの回が続いてしまったのでした。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ