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カインの見た光景

さすがにクルスはまだ話せないでしょうから、別視点ということで。

やっぱりだ!

やっぱり魔物化した人となんて、戦うんじゃなかった。

昔、集落でもかなりの使い手の防人が魔物化したときは、仲間が何人も死んだ。

小さいときに、話を聞いていただけだったけども。


現実に目にすると、こんなに恐ろしいものだなんて。

クルスさんは、後ろで援護をしていれば良いと、言ってくれた。

接近しての行動となると、恐怖心が勝ってしまう恐れがある。

この判断に、内心ホッとした。


戦いは、それほど苦戦してないように見えた。

まぁ、僕はひたすらに矢を打ち続けるだけだったから、簡単なものだ。

クルスさんもトゥーンくんも、相手を圧倒しているように見えた。


だから、僕も少し油断していた。

流れるように、戦いを続けていた二人に見いってしまい、途中から援護射撃をしなかったのだ。

勿論、二人に誤射することを避けるためという側面もない訳じゃなかったけど。

今にして思えば、もっと狙っていく事が出来たんじゃないだろうか。


クルスさんが、腕を捕まれると振り回されていた。

地面や木々に何度か叩きつけられ、投げ飛ばされる。


「あぁぁぁぁぁ!!!」


握り潰された腕。

曲がってはいけない方向に折れた足。

身体中についた擦過傷。

口から流れる血。


それを目にして、カッとなってしまった。

なにも考えず、矢を乱射してしまう。

狙いもなにも無かった。

プロトオーガの固い皮膚に、矢は届かず何本も弾かれる。

でも、その中の一本が、たまたま目に直撃した。

一つしか目を持たないプロトオーガの視界を、奪うことが出来た。


トゥーンくんが、先程から敵に傷をつけ続けている。

よほど、攻撃力が高いのだろう爪や牙を使ってだ。

僕は、彼が傷を与えた場所に矢を放っていく。

これなら、多少のダメージ追加出来るんじゃないかな。


やがて、耐えきれなくなったのだろう。

膝から崩れ落ちる。

もう息もしてないみたいだ。

全身をボロ雑巾のようにして、プロトオーガは果てたみたいだ。


『ははっ、やったな。』


今、敵を倒したのを見ていたのだろう。

クルスさんに近づくと、目が真っ赤になっていた。

頭から流れる血が、目に入ったのだろう。


『やったじゃないだろ!』


トゥーンくんが怒っている。


「そうです!だから、魔物化した人間と戦いたく無かったんだ!」


僕だってそうだ。

でも、何よりこんなことになる可能性を知っていた僕が、ちゃんと止めることが出来ていたなら。

今ここで倒せなくても、街まで行ってから援軍を募ったって良かったはずなんだから。


『そう言うなよ。それにしても、念話は便利だな。声を出したくても、上手く喋れそうにないのにな。』


『おい!死ぬなよ!俺様はまだ、森すら出てないのに、旅が終わりとか嫌だぞ!』


「そうです!まだ、道案内は終わって無いですよ!」


『そうだな・・・あぁ・・・ちょっと寝るわ・・・すげぇ・・・眠いわ・・・』


まさか、このまま・・・


僕は必死になって、声をかけ続ける。

念話で、トゥーンくんもだ。

でも、目を覚まさない。

息は保っているようだが、なんとも弱々しい。


クルスさんの体を揺さぶろうとして、ハッと気づく。

荷物から、回復薬を取り出す。

集落からちゃんと、持ってきていた。

それを、クルスさんの全身に振りかける。

焼け石に水なことは、わかってる。

それでも、何かをしないといけない。


幸い、回復薬の効き目が高いのか、血は止まってきていた。

流れ出す血液を無くすだけでも、多少は違うはずだ。

さすがに、骨折までは直せない。

打ち付けられた時に、負ったであろう内臓のダメージだって、回復薬を内服させれなければ、効果は薄いだろう。


薬を口に含むと、クルスさんの口に直接流し込む。

何とか、喉を通ってくれたようだ。

それを何度も繰り返す。

薬が無くなるまで。


心なしか、呼吸が安定してきたように感じた。

それでも、目を開ける気配は無い。


「クルスさん!起きてくださいよ!」


後は、声をかけ続けるしかない。

それ以外に、出来ることが無くなってしまった。


『おい、起きろよ!俺様が一緒にいるんだ!早くおきろーーーー!』


トゥーンくんが、叫ぶ。

すると、トゥーンくんの全身がキラキラと光を放ち始める。

そして、その柔らかな光はクルスさんに向け、移動を始める。


これは・・・?

トゥーンくんから放たれる光は、全てクルスさんに入り込んでいくかのようだった。

淡い光が、クルスさんを包む。

やがて、その光が消えると、折れ曲がった足も、ぐちゃぐちゃになった腕も治っていた。


『トゥーンくん、いったい何を・・・?』


『ん?俺様、何かしたか?』


『今、全身がキラキラ光ってたよ。それでその光が、クルスさんの怪我を治したよ。』


『んーーー、わかんね!ちょうど目を閉じてたし。』


無意識の内に、トゥーンくんのもつ特殊な力でも発動したんだろうか?

なんだか、狐につままれたような気分だ。

本人にわからないことを、問いただしても答えは出ないだろう。


『それで、どうなんだ!大丈夫なのか?』


『うん。どうやって治ったのかは、よくわからないけど、多分大丈夫。血を流しすぎてたから、直ぐには動き出せないかも知れないけど。』


『そうか!よかったーー。俺様がついてやってるんだ。そう簡単に死なれたら困るもんな!』


そう言いながら、クルスさんの膝をペシペシ叩く。

嬉しさが体から滲み出ているようだ。


『あー、安心したら腹減ってきた!メシにしようぜ!』


『そうだね。僕も何だかお腹が空いてきたような気がするよ。』


さすがに、倒れたプロトオーガや、盗賊達のど真ん中で食事をするわけにもいくまい。

何とか、クルスさんを背負うとその場を離れる事にした。

トゥーンの魔法が発動しました。

彼のスキル内にある神聖魔法が発動した形です。


誰もが予想出来ると思いますが、神聖魔法は回復と退魔の力を持った魔法となります。

無意識に発動したのは、使用方法がわからないからですね。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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