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まものになったひと

果たして人間が魔物化するのか?

疑問はもっともだろう。

昔、読んだ小説にもそんな事は書いてなかった気がする。


「どういうことだ?魔物化ってなんだ!」


「そのままの意味ですよ!」


「人間がか?」


「人間だって生き物ですよ。魔物化しないなんて誰が決めたんです!」


どうやら人間も魔物化の対象にあたるらしい。

しかし、魔物化か・・・

原因はなんだ?

こう言ってはなんだが、腕をはね飛ばしただけだぞ。

血が出すぎてぶっ倒れるならわかるが、そんなんで変化が起こるのか?


「多分、魔素の含む物を沢山摂取してたんですよ。体内にたまった魔素が、錯乱した頭に反応して、体を乗っ取ったんです。」


「何?」


「こいつらは盗賊です。多分、この森を拠点に活動していたのでしょう。この森の魔物を狩って、食料にしてたんでしょう。」


そうなのか?

そうだとするならば、自業自得この上ないな。

人の道を外れた行為を繰り返し、気づけば、自ら自信の体すら人のものではなくなってしまうとは。

せめて、相対することになった俺が引導を渡してやるのが、せめてもの慈悲になるのだろう。


ナイフを構え直し、今なお変化を続ける盗賊の親分を見据える。

肌の色は緑色に変色し、口は裂けて歯が鋭くなってきており、噛みつかれれば大怪我は免れないだろう。

一つ目に変化しており、髪の毛は全てが抜け去り、スキンヘッド状態だ。

切り落とした右腕が生えてくることは無かった。身体は、元の倍以上に肥大化していた。


『どうすんだ、クルス!やるなら手伝うぞ!』


『あぁ、こいつはここで止めを差してやらなくちゃならない。結果的にとはいえ、引き金になっちまったんだ。それに、このままほっといて、誰か巻き添えになる奴が出たら寝覚めが悪いしな。』


『本気ですか!熟練の防人達が何人もでかかってようやく倒す相手ですよ!まだ、変化を続けている今の内に逃げた方がいいですよ。』


『カイン!逃げるなら逃げろ!俺は止めやしない。』


『そうだぜ、カイン!後は俺様に任せとけって!』


『・・・いえ、残ります。怖いけど、凄い怖いけど、こんなとこに二人を置いて逃げれませんよ!』


『そうか、気を付けろよ。後方で援護してくれるだけでも助かる。』


カインも覚悟を決めたようだ。

だが、恐怖心があるのであれば、前に出すのは得策ではない。

そもそも出す気はないんだが。

素直に得意の弓を用いての遠距離攻撃を加えてもらい、援護に専念してもらった方が良いだろう。


トゥーンには俺と共に前面に出て戦ってもらった方が良いだろう。

能力的には、俺よりトゥーンの方が上だ。

むしろ、自分が足を引っ張らないかの方が心配だ。


いよいよ、変化が終わりそうな雰囲気だ。

変化の最中に攻撃を加えなかったのは、カインが止めたからだ。

そうじゃなければ、特撮に出てくる悪役のように、ご丁寧に変身終了まで待つことなく攻撃を繰り出していただろう。

正義も悪もない、生き抜いた者の勝利なのだから。


なぜカインが止めたのか。

変化中に攻撃を仕掛けると、その変化にこちらも巻き込まれる心配があるそうだ。

安定していない状態ゆえの危険であるらしい。


緑色のそいつが、のっそりと立ち上がる。

もはや、何の面影もない。

辛うじて、人の形をしているだけだ。


神眼を作動させ、どのように変化したか確認する。



種族 プロトオーガ

性別 男


スキル

体力増大(LV.6)、敏捷増大(LV.2)

腕力増大(LV.8)



種族がプロトオーガに変化していた。

プロトタイプのオーガということか?

それまでにあった、技術的なスキルは消え去り、身体能力を上げるスキルが上昇している。


「ゴオォォォォォ!」


プロトオーガが咆哮する。

圧が凄い。

空気がビリビリと振動しているようだ。


『よし、行くぞ!』


『うっしゃぁぁぁぁ!俺様に任せとけェェェェ!』


『それじゃ、射かけます!』


カインが矢を矢継ぎ早に放ち始める。

それと合わせるように、俺が右側から、トゥーンが左側から挟み込むように接近する。

膝を蹴るが、皮膚が思ったよりも硬く変化しているようで、微動だにしない。

それならばと、構えたナイフで太ももを突く。

さすがにナイフには負けるのか、突き刺さる。

突き刺さったナイフを両の手で握りしめると、裂くようにナイフを引く。

ズバッと切り裂き、そこから血が飛び散る。

血の色は、赤ではなくどす黒くなっていた。


トゥーンも足首を引っ掻くと、あっさりとアキレス腱の辺りが切れる。

双方で足を狙って攻撃したため、バランスを崩すプロトオーガ。

こちらを見ると、ようやく敵と判断したのか、倒れ込みながら、腕を伸ばしてくる。

こちらを捕まえようというのだろうか?

人間の時の記憶すら、無くなっているのか?

右手の存在しない右腕を伸ばしてきた所で、こちらを捕らえることなどは叶わない。


サッと身を引くと、その動きについてこれないのか、とても動きがスローに見えた。

伸びてくる腕にナイフを立て、さらに切り裂く。

そこからも血がは噴き出す。


動きがどうも緩慢だ。

これをカインは怖がっていたのか?

腕の裂けた所に手を当て、火魔法を発動させる。

一気に血が蒸発しているようだ。

裂けた部分が火傷をおったようで、ただれている。


こちらに注意が向いている間に、トゥーンはプロトオーガの背を駆け上がり、首すじに歯を立てる。

ベリッベリッと、肉を剥いでいく。


「ゴオォォォォォ!!!!」


再び咆哮するプロトオーガ。

これだけのダメージを負えば、致命傷は免れまい。

そう思ったのがいけなかった。

どうにも少し油断してしまったようだ。


左手で、こちらの右腕を捕まれてしまう。

力の加減など微塵もない。

直ぐに握り潰され、バキバキと嫌な音を立てる。

そして、捕まれたまま、地面に、木に叩きつけられ、投げ飛ばされる。


口から血が垂れる。

内臓のどこか、もしくはあらゆる所がやられたか?

立ち上がろうにも、足が言うことをきかない。

もしや、今ので足も折られたか?

意識があるのが不思議な位だ。

全身が痛すぎて、感覚が全くない。

虚ろな目で、プロトオーガを見る。

目が笑っているように感じた。


「あぁぁぁぁぁ!!!」


カインが叫ぶ。

矢を乱射し、そのうちの一本がプロトオーガの目に直撃し、視界を奪う。


『このやろぉぉぉぉぉ!!!』


トゥーンが、頭、首、背中などありとあらゆる場所に攻撃を仕掛け続けた。

そのうち、プロトオーガは動きを止める。

そして、その場に倒れ込む。

完全に動きを止めた。


『ははっ、やったな。』


『やったじゃないだろ!』


「そうです!だから、魔物化した人間と戦いたく無かったんだ!」


『そう言うなよ。それにしても、念話は便利だな。声を出したくても、上手く喋れそうにないのにな。』


『おい!死ぬなよ!俺様はまだ、森すら出てないのに、旅が終わりとか嫌だぞ!』


「そうです!まだ、道案内は終わって無いですよ!」


『そうだな・・・あぁ・・・ちょっと寝るわ・・・すげぇ・・・眠いわ・・・』


そのまま、俺は意識を飛ばした。

とりあえず、戦闘は終了です。

勢い含みで書いてたら、クルスがえらいことになってしまった!


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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