もうすぐ出口
森を分け入って四日目。
思いのほか順調にきている。
歩きづらい、道なき道を歩くのに苦労をしながらも、一歩一歩歩みを進め続ける。
グルガストの言葉を信じるなら、もうじきに森を抜ける事が出来るだろう。
時折表れる魔物を駆逐していく。
大きな鼠や、角の生えた兎、群れで襲い来る狼。
他にも人程の大きさの蜘蛛や、巨大な芋虫などのサイズ感が狂いそうな虫達。
それらを、片っ端からだ。
思いのほか苦労はなかった。
いや、さすがに大きな芋虫はドン引きだったが。
それもこれも、ワイルドボアとの一戦があったからだろう。
また、防人の集落で購入した装備品の恩恵も、受けているといえる。
足首まであるズボンに靴があるだけでも、足元を気にしなくていいぶん、十分心強い。
ミスリル製のナイフに至っては、言うまでもない。
どれだけ魔物を切り裂いても、刃毀れ一つしない。
倒した魔物は、速やかに解体していった。
あまりにたくさんの荷物になるのを心配したが、いらぬ事だった。
カインが、魔法の袋という、それこそなんでも入ってしまうんじゃないかと思えてしまう程の量を、しまいこむことの出来る袋を所持していたからだ。
詳しく話を聞いてみると、上限自体は存在しているらしいというとと、生きている物はしまうことが出来ないという。
防人の集落の人間はそれぞれ個別に持っているらしい。
俺もそれ欲しいな。
思えば、大分スキルレベルも上昇したようだ。
戦いを繰り返し、スキルレベルが上がる。
それに引っ張られるように、戦闘に馴れていく。
そして、またスキルレベルがまた上がる。
いい循環が出来ているように思える。
俺だけじゃなく、トゥーンは言わずもがなとして、カインもかなり戦いに馴れたようだ。
上手く連係を取りながら、敵を倒していく。
森に踏み込んですぐくらいに比べ、かなり動きが良くなっている。
弓の命中精度もより高くなり、遠距離からの攻撃でも、一撃で倒すことが出来るようになっているようだ。
そんな風に、順調に移動は続いていた。
この時までは。
『お、またなんかいるぞ?』
トゥーンが何かを見つけたようだ。
もう、魔物探知機になってるな。
一体今度は何が出てくるんだか・・・
「お?オメーラ、どこ行くんだ?」
不意に声を掛けられ、周囲を見回す。
声の主は、気の影から姿を表す。
よれよれのシャツに、薄汚れたズボン。
頭にはバンダナを巻いていた。
下卑た笑いを浮かべながら、こちらに近づいてくる。
「どこに行くも何も、森を抜けようとしているだけだ。」
何故こんな森の中に人がいる?
そんな疑問も湧くが、そんな事は気にしても仕方ないだろう。
何らかの事情があるのだろう。
彼を、それほど気にせずに先を行こうとすると、目の前に立ちふさがる。
相変わらず、下卑た笑いを浮かべたままだ。
「悪いがどいてくれ。」
「いやいや、森の中を彷徨ってるのを見過ごす訳にゃいかねーな。なぁ、オメーラ。」
男の呼び声に反応して、周りからゾロゾロと人が出てくる。
誰も彼も、薄汚れた格好をしている。
一体なんだというのか?
『クルスさん、こいつら盗賊だと思います。』
これまで無言でいたカイルが伝えてくる。
盗賊?
こんな魔物がうろついてる森でか?
『もう少しで森を出れます。こいつらはそんな浅い場所だから、平気な顔をしてられるんですよ。』
ふーん、盗賊ねぇ・・・
『本来は街道を通りがかった商人や、旅人を襲うつもりだったんでしょう。そこに僕達が、森の奥の方から出てきたから、標的に定めたんだと思います。』
だとしたら、相手をしてやらないといけないな。
『二人とも、少し任せといてくれないか?』
『よくわかんないけど、俺様は構わねーぞ!』
『わかりました。気をつけてください。』
思えばこの世界に来てから、俺のかつての世界での倫理観はどっかにぶっ飛んでる気がする。
下手をすれば、盗賊とはいえ同じ人間を傷つけてしまう可能性が有るのに、妙に冷静でいられている。
そう簡単に性格なんぞ、変わるわけ無いんだけどな。
「では、どうしたらどいてくれる?」
「話が分かるじゃねーか。そうだな、金目の物と食糧といったとこか?」
「何故先に行くだけで、くれてやらなくちゃならない?」
「ここは俺の道だからな。それなら通行料払うのが当然じゃねーか。」
「成る程な。それはもっともだ。」
呆れるくらい、どこかで見たことのあるような盗賊だ。
もう少しオリジナリティが欲しいとこだが、それを求めても仕方ないか。
「さすがに、通行料として払うには大きすぎるな。もう少しまからないか?」
「そうだな、それなら身ぐるみ全部でいいぞ。」
いよいよ、笑いを大きくしだす。
それに合わせて、周りの連中も高笑いをしだす。
こちらへの要求が大きくなっているな。
頭の中が空っぽじゃないのか?このバカ。
「さぁ、出せやがっ、ぶっ!」
いよいよ脅しかけてこようと、啖呵を切ろうとしたところで、顎を思いきりカチ上げる。
ここまでに、たどり着くまでに上昇したスキルとあいまって、なかなかの威力が出たようだ。
綺麗に放物線を描きながら飛んでいき、頭から地面に落ちる。
「よう、テメーラ。通ってもいいよな?」
こちらを取り囲む連中に向けて発言する。
一撃で沈めてやったのだ。
目に怯えの色が出るのは仕方ないだろう。
これで仕舞いだな。
若干一名の犠牲が出たが、平和的に解決がはかれて良かった。
「おい、待ちな。」
これで終わりといったところで、再び声がかけられる。
まだ何かあるのか?
声のする方に顔を向ける。
周りの有象無象から、
「親分!」
「親分が来てくれた!」
「よろしくお願いします、親分!」
と声が上がる。
歓声にも近いその声に、余程の信頼があることがうかがわせる。
どうやら、こいつらの親玉の登場のようだな。
「うるせー!親分なんて呼ぶんじゃねーって、いつも言ってんだろ!」
そう言いながら、手近にいる連中を殴りとばす。
こちらの視線に気づくと、すぐにとりなおす。
「よう、兄ちゃん。下の者が世話になったみてーだな。」
「別に世話になんてなってない。」
あぁ、厄介な事だ。
森で気付かぬうちに修業状態突入。
スキル上方修正です。
名前 クルス・カミヤ
性別 男
年齢 18
スキル
神眼、複写
体力増大(LV.4)、敏捷増大(LV.3)
腕力増大(LV.5)、魔力増大(LV.3)
精神力増大(LV.5)、命中補正(LV.2)
短剣熟練(LV.3)、槍熟練(LV.1)
打撃(LV.4)
火魔法(LV.3)、水魔法(LV.2)
風魔法(LV.3)、土魔法(LV.4)
強奪(LV.1)、気配遮断(LV.3)
隠蔽(LV.2)、加速(LV.3)
自然治癒増大(LV.4)、状態異常回避(LV.3)
成長促進、意志疎通
解体
名前 トゥーン
種族 ハンタースクイレル
スキル
勇者
体力増大(LV.MAX)、敏捷増大(LV.MAX)
腕力増大(LV.MAX)、魔力増大(LV.MAX)
切り裂き(LV.3)
風魔法(LV.MAX)、神聖魔法(LV.MAX)
状態異常回避(LV.MAX)
意思疎通、成長促進
気配察知
名前 カイン
種族 人
性別 男
スキル
腕力増大(LV.2)、敏捷増大(LV.3)
命中補正(LV.3)
短剣熟練(LV.2)、弓熟練(LV.3)
気配遮断(LV.1)、意思疎通
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