売り言葉に買い言葉・・・?
何も言わず矢をいかけてきた人物を見る。
体の丸みを見るにどうやら女性のようだ。
顔は・・・よく分からないな。
ペイントされていて表情を読み取る事が出来ない。
神眼を発動させ相手の能力を読み取る。
種族 人
性別 女
スキル
祖霊の加護
敏捷増大(LV.2)、命中補正(LV.2)
短剣熟練(LV.2)、弓熟練(LV.3)
気配遮断(LV.3)
ようやく人と出会うことが出来た。
祖霊の加護・・・祖霊の加護を受ける。祈りを捧げる度に加護が強まる。敏捷、命中を増強し、状態以上を軽減する。
いまいち分からないスキルだ。
祖霊ってなんだ?
女性は弓を構えたまま、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
少しずつ近づいてくる様を見て、トゥーンが四肢を広げ、威嚇の鳴き声をあげる。
どうでもいいけど頭の上では止めていただきたい。
爪が頭皮に刺さって痛い。
『トゥーン、吠えても鳴いても構わないけど、頭の上では止めてくれ。爪が食い込んで痛い!』
『おっ!わりぃ!』
ピョンと頭の上から飛び上がり、女性の視線上に着地する。
どいてくれたお陰で頭の痛みが・・・取れないな。
女性を見据えながら、そうっと頭に触れると血が垂れているのが分かる。
まさか何もする前から流血するとは!
思わぬダメージに驚いてしまう。
俺のその様子に、目の前の女性も驚いているようだ。
危害を加えるつもりが、有るか無いかは分からないが困惑するというのも理解できる。
「貴様、何者だ!」
再び、女性が問うてくる。
何者だも何もない。
先に攻撃してきたのはどっちだ。
さすがに肝を冷やしたし、頭にきていた。
「いきなり矢を放ってきといてなんだ!」
「貴様が悪いのだろう!ここが何処か分かっているのか!」
「んなもん、知るか!」
「何だと・・・どうしても答える気がないつもりか!」
「人に物を問うときに、矢を向けるのがあんたの礼儀ってわけか!」
かなり頭に血が上っているのが、自分でも分かる。
思えば、人を探してようやくここまで来たというのにこんな仕打ちだ。
何らかの意図はあったのだろうが、なぜか引くことが出来ない。
「ならば!」
弓を引くのが見てとれる。
後はつがえた矢を放すだけ。
だが、こちらもやられてやる気は更々ない。
風でも起こして軌道を変えてやることは出来ないか?
それとも土壁を作り出して、身を守ろうか?
真剣にそんなことを考える。
無茶は百も承知のはずなのだが。
こちらが退く気はないと身構えた姿で分かったのか、女性は溜息をもらすと弓に込めた力を弛めた。
「本当にこの場所が何処だか知らないのか?」
「だからそう言っている。ここに来たのは今日が始めてだ。」
「そうなのか・・・?」
「一体ここは何処なんだ。俺は人里に向かいたいだけだ。」
「何だと・・・本当に知らないでこの場所に・・・」
全くもって、何が言いたいのか分からない。
そもそも、この場所に何があるというんだ?
「ここは、我々防人の末裔にとって、神聖な場所。そして貴様が尻に敷こうとしていた岩は、我らが防人であるための誓いの石碑。そのような場所を汚されて怒らぬと思うか?」
弓を下ろし、攻撃の意志が無い事を示し、説得してくる。
そうなら、始めからそう言えばいいのだ。
「そういう事なら始めから言ってくれ。俺も、そもそも争う気なんて無いんだ。」
静かに腰掛けようとした岩から離れる。
せっかく弓を下ろしているのだ。
わざわざ警戒を強めさすような事はしない。
『攻撃するのは無しだ。』
『え?大丈夫なのか?』
『警戒は解かないようにしといてほしいけど』
しかし、この岩が石碑?
どこからどう見てもただの岩だ。
その辺に転がっているものと、違いは分からない。
「ふむ・・・どうやら本当に知らないようだな、失礼した。それで、君は?」
態度の変化を見るに、こちらに何かを仕掛けてくる気はもうないのだろう。
人を信じやすい性格なのだろうか?
俺なら、まだ警戒を解くような真似はしないんだかな。
「向こうから来た。」
親指でこれまで通ってきた道を指す。
親指の示す方を見て、彼女は目を丸くする。
「なんと!飛ばされ者か!」
オーグもそんなことを言っていたな。
どうやら、異世界から転移してきた人間をこの世界ではそう呼ぶようだ。
しかし、森から出てきただけで言い当てられるとはな。
よほど今までいた場所が特別な場所だったのだな。
「と、なればこの世界の事は何も知らないというわけだな。」
「まぁ、知らないな。」
「少し待っていてくれないか。石碑に祈りを捧げたい。その後でいいなら、集落まで案内してもいい。」
「それは助かる。」
彼女は弓を腰に据え、先程放った矢を回収するとそれを矢筒にしまう。
そして、石碑の前に跪くと手を合わせ祈りを捧げる。
薄ボンヤリと石碑が光り、その光が彼女に移っていき、やがて消える。
その不思議な光景に目を奪われてしまう。
うーん、どこまでも不思議な世界だ。
トゥーンも驚いていたようで、
『おい!光った!キラキラだ!スゲー!』
と素直に見入っていたようだ。
お祈りが済んだのか、立ちあがり彼女はこちらを向く。
「私はフィーネという。君は何というんだ?さすがに飛ばされ者と呼ぶのはどうかと思うのでね。」
「俺はクルスという。こっちはトゥーン。」
「そうか。ではついてきてくれ。それほど時間はかからない。」
そう言ってフィーネは踵を返すと、歩き始める。
俺とトゥーンは素直についていくことにした。
ヒロイン候補登場です。
さてさて、どうなりますことやら・・・
名前 フィーネ
種族 人
性別 女
スキル
祖霊の加護
敏捷増大(LV.2)、命中補正(LV.2)
短剣熟練(LV.2)、弓熟練(LV.3)
気配遮断(LV.3)
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