闘いの結果
目を覚ます。
頭がボーッとしている。
なんというか焦点が合わない感じだ。
体が痛い。
だが、特に大きな怪我をしているような様子は無いようだ。
そこで、ハッと気付く。
そうだ、猪だ。
一気に覚醒していくのを感じる。
体を起こし、周辺を見回す。
少し離れたところに、例の猪がいた。
ピクリとも動かないが、どうしたのだろうか?
『お、起きた!元気か、おい!』
トゥーンが膝を叩いているようだ。
視線を移すと、元気いっぱいのトゥーンが目に入る。
『ああ、なんとか。それでどうなった?』
『?どうなったもなにも、クルスがたおしたんじゃないかよ!思いっきり眉間ぶっ飛ばされて、それで終わりだよ。』
『そうなのか?』
思いっきり殴り付けたのがよかったのか?
それとも当たりどころがたまたま良かったのか?
これまでで獲得していたスキルを全て使用しての全力での攻撃。
“腕力増大”で増した攻撃力。
“打撃”で殴り付けた際のスキル補正。
そして、始めに吹き飛ばされた時に、こっそり獲得していた“加速”による薙ぎ払いの剣速の素早さの上昇。
切羽詰まった状況だったこともあったが、よくもまあ上手くスキルを使いこなしていたものだ。
何にせよ、結果として俺は生き抜いて猪は事切れた。
それが全てだ。
『おい、クルス!昼メシにしようぜ!』
『昼メシ?あぁ、そうか・・・』
猪の肉を食べようかと言うはなしか。
そういえば、あいつと遭遇したときにそんなこと言ってたな。
しかし、どうやって食うんだ。
そもそもこんなの食えるのか?
たしか、猪といえば雑食で何を食べてるかも分からないって聞いたことがある。
火を通すくらいはしたいところだな。
『どうやって食べるんだ?』
解体からしないといけないだろうな。
やったことないが大丈夫だろうか?
これだけの大きさだ。
これから求められる作業にげんなりする。
『どうやっても何でもそのまま食らいつけばいいじゃん!』
『俺には無理だ。』
野生を全力で出すような食べ方だな。
やはり、知性があるとはいえ、森に住まう動物なのだろう。
どちらにせよ生で食べる気は毛頭ない。
『なんだよ、せっかく倒したのに食べないのかよ!俺様は食べるぞ!』
そういうと駆け出し、首すじについた傷口に頭を突っ込み、肉を引きちぎる。
顔だけじゃなく、体全体を血にまみれさせながらの食事という、B級映画のスプラッタシーンを見せられているかのようだ。
『いや、食べないとは言ってないぞ。』
1つの山場を越えたお陰なのか、身に付けているスキルをある程度自由に使えるイメージがついた。
ナイフなどはないが、何とかバラしてみようか。
これだけの大きさだ。
多少無駄が出ると思うが、そこは仕方ないな。
正確な知識としての解体法などは、人の住まう場所に着いてから覚えればいい。
血まみれのトゥーンに、少しどいておいてもらうように頼む。
渋々了承してもらい、その場からどいてもらうと、倒れた猪に近づく。
その際、俺は水の球を生み出し、血を洗い落としておくように告げる。
刃物が無いなら、別のもので切ればいい。
『こうすれば・・・どうだ?』
風魔法を発動させる。
イメージは鎌鼬のような現象。
所詮は(LV.1)か。
大きな風の刃を作ることは叶わないだろう。
イメージが上手く湧かないものは出来ないのだろう。
でも指先で触れることで、触れた部分を少しずつなら切れるんじゃないか?
予想通り、触れた部分を切ることが出来た。
しかし、切り口はあまりきれいじゃない。
まるでノコギリ引きでもしたかのようなグズグスさだ。
より鋭利にするためにはレベルを上げる必要があるのだろう。
少しずつ切り進める。
そして、足の部分を何とか切り落とす。
額にはいつのまにか出来た玉の汗が浮かんでいた。
「ふう。足を切り離すだけでかなりくるな。」
汗を拭うと、切り離した足から皮膚を取り除き、切り分ける。
これだけでも十分すぎる量の肉がとれる。
近くの木から大きな葉を幾つか拝借し、皿がわりにして、切り分けた肉を置く。
『おい!体綺麗になったぞ!それでまだ食べちゃダメなのか!』
『あぁ、もういいぞ。切り分けといたから食べやすくなってるだろ?体も汚れなくてすむぞ。』
『本当だ!クルス頭いーな!』
さっきも生で食べていたようだし、トゥーンは生のままでもいいか。
嬉嬉として食べ始めてるようだし。
さて俺はというと、次は肉に火を通さないとな。
土魔法で地面を軽く変化させる。
30センチ程度の穴が空くように小さな壁をつくる。
そして、その辺に転がる木の枝を拾い、必要の無い部分を切り落とし、棒のような形状に変えると水魔法で洗浄する。
切り落とした部分は穴の中へ投入。
木の棒を切り分けた肉に突き刺し、準備完了。
火魔法を発動、穴の中へ入れた木屑へと火を着ける。
これで獲得していた四種類の魔法を使ったことになるのか。
魔法は戦闘でもっと輝くものだと思っていたけど、そうでもないのな。
単純にレベルが低いだけなのかもしれないし、そこは要練習ということで。
肉を火にかざし、焼き始める。
しばらくすると、肉汁が雫となってポタリポタリと落ちる。
辺りにえもしれない、いい臭いが広がっていく。
その臭いに刺激され、口のなかがヨダレでいっぱいになってくる。
さぁ、もういいだろう。
塩も醤油も何もないが、それでも空腹ならば旨いと感じることが出来るだろう。
焼き上がった肉にかぶり付く。
「アチチ・・・」
程よい歯応えを残した肉の噛み心地を楽しむ。
口の中に一気に肉汁が広がる。
空腹であることもあって、非常に旨い。
夢中になって食べ進める。
『なーなー、クルス。それ旨そうだな。』
様子を見ていたトゥーンが話しかけてくる。
目線は手元の肉にいっている。
その姿に苦笑しながら、
『食べてみるか?』
そう言って差し出すと、首をブンブン縦に振り、飛び付く。
『熱いから気を付けろよ。』
『うめーーーー!なんだこれーーーー!』
『そうか、良かったな。』
『もっとくれ!』
『ああ、ちょっと待ってろ。』
そう言って別の肉を焼き始めることにした。
クルス覚醒!
名前 クルス・カミヤ
性別 男
年齢 18
スキル
神眼、複写
体力増大(LV.2)、敏捷増大(LV.2)
腕力増大(LV.2)、魔力増大(LV.2)
精神力増大(LV.2)
打撃(LV.2)
火魔法(LV.2)、水魔法(LV.2)
風魔法(LV.2)、土魔法(LV.2)
強奪(LV.1)、気配遮断(LV.1)
隠蔽(LV.1)、加速(LV.1)
自然治癒増大(LV.3)、状態異常回避(LV.1)
成長促進、意志疎通
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