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破壊と創造

領主の館を後にした俺達はアルクと合流する。

勿論、冒険者ギルドには立ち寄らない。

もう揉め事はごめんだ。

面倒事なんぞ必要は無い。


「さて、どうするか。」


「もうベッラに戻るんですよね。」


「だとしても今日は休むべきだろう。何処かで宿でも取ろう。」


「おお、俺は賛成だ。」


「あんたはまだ付いてくるんだな。」


「別に構わんだろ?」


そりゃ、一人同行者が増えたところで問題はない。

ただ、男四人に獣一匹魔物一匹の旅。

むさ苦しいにも程がある。

癒し要素が含まれてはいるが、それでもだ。

さらに馬車も無いことから徒歩移動を余儀なくされるため、その期間は必然的に伸びる。

まぁ、トゥーンも話し相手が増えて喜んでいるようだし、これはこれでいいか。


さて、ベッラ向かう前にしておかなくてはいけない事がある。

それは味噌の普及が上手くいっているかの確認だ。

味に評判がつけば、人が求める事になり、それによって流通ルートの確立だってありえる。

今はまだオブライエンとの交易が再開してはいないが、やがては元に戻るはずだ。

以前に行った食堂へと足を足を延ばす。

何故だか皆付いて来るのだが、特にやることも無い以上それも仕方が無い事か。

食堂は人が溢れんばかりにいた。

それらを掻き分けるというわけにもいかず、素直に行列に並ぶ。

並んでいると、暇さにしびれをきたしたのか、ジャネルが列から離れた。


「なんだ?どこかに行くのか?」


「さすがに飯の為にこんなに長いこと待ってられねーよ。」


「ま、それはわかるが。」


『俺様も!』


『なんだ、トゥーンもか。』


『なら、俺と適当な店にでも入るか。』


『おう!じゃあ、後でな!』


そう言って一人と一匹は街の雑踏に包まれていってしまい、直ぐに姿が見えなくなってしまった。

カインも同じ気持ちでいるのなら、俺に付き合う必要は無いんだが、どうなのだろう。

カインの方を見ると、たまたまカインの後ろに並んでいた街の娘に声をかけていた。

だから、いつの間にこんなに軽い男になってしまったのだろう。

もうお前の親に顔向け出来ねーよ。

バルの頭を撫でてやると、気持ち良さそうにしていた。

列が進み、ようやく俺達の番になるようだ。


「何ならその娘達と食事に行ってもいいぞ?」


「何言ってるんですか、行きませんよ!」


いや、とても行きたそうに見えるぞ?

まあ、どうするかは任せるが。


「はい、いらっしゃい!ってあなた!よく来てくれました!」


「お、おう。しかし大盛況なようだな。」


「ええ。あなたの見せてくれた味噌汁が評判でして。本当にうれしい悲鳴をあげているところです。」


「そうかい。役に立てたようで良かったよ。」


「ですが、その代償として備蓄分の味噌も無くなりそうなんですよね。早いところオブライエンとの交易が再開してくれないと困りますよね。」


やはりさすがは味噌だ。

故郷のソウルフードだ。

強い塩味に独特の深いコク。

何処と無く郷愁を誘うその味。

評判にならない訳は無いとは思っていたが、ここまでの物とは思わなかった。

しかし、そんな味噌が無くなりそう?

となると、それはこの店にとっては大打撃となるのは必至だろう。


「カイン、袋から出せるか?」


「えっ、あー大丈夫ですよ。でもいいんですか?」


「この店のお陰で存在を知ることが出来たからな。ちょっとした恩返しというところだよ。」


そう言って俺は店員に味噌を幾らか分けてやった。

さすがに全て渡してやるつもりは無かったが、かなりの量になるからしばらくはもつだろう。

店員はそれを抱えて厨房へと駆けていく。

すると、話を聞いたのであろう。

前回、俺に味噌を分けてくれた料理人が飛び出てきた。


「おお、あんたか!」


「久しぶりだな。」


「いや、助かるよ。あれから味噌汁を出すようにしたんたが、以外と評判よくてよ。量もあんまり無いから困ってたんだよ。それに何だ、この種類は。」


「幾つか種類があったんだよ。だから一通り揃えてみたんだ。」


「ほー、そうなんだな。それでよ、相談なんだが。」


「相談?」


「ああ、新メニューを考えたくてね。」


これだけ栄えているなら特にやることも無いだろうに。

とも思うが向上心があるのは良いことだ。

しかし、新メニューねぇ。

おそらく味噌を使った物だろう。

となると何が良いだろうか?

少し考えての答えは煮こみであった。


「成る程な。そういうのもありか。」


「ただどの味噌がどの食材に合うかは要研究といったところかな。それに単体で使うのもいいが、組み合わせてといった使い方も出来るしな。それこそどの味噌をどれだけ使うかで味も千差万別といった具合か。」


「そりゃ、またやりがいがあるじゃねぇか。」


「ただ注意が必要だぞ。下手に使えば素材を生かすことが出来ず味のバランスを破壊するかもな。それを乗り越えてよい塩梅を創造出来るかが難しいんだ。」


「ま、やるだけやってみるわ。」


どの組み合わせが良いかは、己の才覚で何とかしてもらうしかあるまい。

俺が作っても、スキルが良くも悪くも働いて普通に食える物になってしまうからな。

食事を済ませ、ペコペコお辞儀する店員に軽く挨拶すると店を出る。

ちょうどいいタイミングだったのか、ジャネル達と合流する。

そのまま話をしながら、以前泊まった宿へと向かうことにした。

久々に書いた内容が味噌かよ!と突っこみを受けそうですね。

因みに私は味噌おでんが好きです。

好きな味噌を使った料理はありますか?


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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