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街を出る

とんでもない朝食が済み、俺達は行動に移ることにした。

もっとも、さすがにこれでは動く気力も湧くわけではなく、改めてちゃんとした物を食べてからではあるが。

結局、俺自身で食事を用意するはめになってしまったのだが、その際はトゥーンとバルも起き出して来ていた。

やはり、野生の感のようなものが働いていたのだろう。


「まあまあですね。」


と言いながら用意した物を食べているアンリが印象的であった。


宿を後にすると、ポールの先導で街の中を歩いていく。

やはり人通りの少ない道を行くようだ。

朝ともなれば人が起き出して来ているはずなのだが、あまりすれ違うことがなかった。

周りを見回してみるとそれも納得。

所謂飲み屋街の様なところだ。

下世話な店もちらほら見える所から、そういう店が集まっている区画なのだろう。

この街では、所謂盛り場と呼ばれるような所は早めに店仕舞をするように指示されているらしく、働いているであろう人達もこの時間は夢の中というわけか。


その中でもさらに裏道を進み、一つの建家の前に辿り着く。

普通に看板の出ている店で、入り口は固く閉ざされている。

こんな所から外に出られるのか?

そんな疑問も浮かぶが、王城に忍び込む際に利用した抜け道も、一般の住宅街の中にはあったのだ。

周りに合わせてカモフラージュしているのだろう。

しかし、もう少し大人しい看板には出来なかったのだろうか?

かなり華美な装飾の施された立派な看板だ。

いくら気を隠すには森などと言うが、これは悪目立ちしているような気がしてならない。


ポールはまったく気にする様子もみせず、扉に触れて何やらやっている。

しばらく様子を見ていると、ガチャリと音を立てて扉が開かれる。

建物の中はやはり暗い。

明かりを取り入れる窓があるが、全てカーテンで閉じられており、外から中を伺うことが出来ないようになっている。

それの弊害といったところだが、大した問題ではないのだが。

建物の中は椅子やテーブルが並び、普通に営業でもしているのではないかと思わせる。

それも知らない者を騙すためなのだろうが、ちゃんと作り込まれている所から、この場所を作り上げた物の趣味がわかる。


建物の奥に進むポールに付いていくと、奥にある扉を開き中に入っていく。

やはりと言っていいのか、そういう店のバックヤードとなっていた。

普通に営業している店で、女性が待機しているであろう休憩施設などが見てとれる。

さらにそれを抜けていくと、おそらく裏口にあたるであろう場所に出る。


「さて、ここから外に出られる。ここまで来て準備も何も無いが、大丈夫か?」


「俺は問題ない。が、少し休憩をするか。」


「そうだな。焦って行動する必要もあるまい。まあ、欲を言えば外の様子を知りたいところだが。」


「僕も賛成です。ここから先、何があるかわかりませんから。」


ポールからの問いに俺達は答える。

宿からここまでたいして時間はかかってはいないが、外に出てしまえば野営となる。

部屋の中での休憩なぞ、しばらくは求めることが出来なくなる。

それゆえに、少しばかり休憩を取ることを提案した。


「外の様子か。そうだな。待ち伏せがあると困るしな。」


「よほどそのような事はないと思うが、用心に越したことは無いだろう。もっとも、この中に入る時点でも気にしなくてはいけない事柄ではあったか。」


「今更だな。だが、トゥーンも特に反応してなかった訳だし、たぶん大丈夫だとは思ってたが。」


いつも通りの定位置で、のんびりと眠るようにしているトゥーンに手を伸ばし、軽く撫でてやる。

手が近づく気配を感じ取っていたようだが、特に気にする事なくされるがままにしているトゥーン。

そうなると構ってほしいバルがじゃれてくるのもいつもの事か。

バルも撫でてやり、しばし和む。

王城での出来事で多少なりとも精神がすり減っていた。

そんな心を癒される気がした。


しばし休憩を取ると、再び移動を再会することにした。

ポールが扉を開けると、そこは外だった。

扉から出て振り替えると、街を囲む大きな塀がそそりたっている。

どうやら本当に街の外に出ることが叶ったようだ。

俺達が出てきた建物の周りにもいくつも建物があった。

あまり立派な作りには見えないし、所々劣化が進み朽ちている最中といった具合だ。

魔物などの襲撃を恐れて皆、街の中に住んでいるものだと思っていたが、そうでもないということか?

ふと、疑問に思ったのでアルクに問いかけてみる。


「確か、かつてこの地に住んでいた先住民の家だと聞いているぞ。」


「先住民?」


「今は見ることが無いが、獣人と呼ばれる者達が暮らしていたそうだ。」


「獣人?」


まさか、あのケモミミを持つファンタジーを語る上で外すことの出来ないあの連中か?

今は見ることが出来ないとはどういう事だ?

迫害でも受けたのだろうか?

どのような経緯があれ、目にする事が出来なくて残念だ。

が、いずれは会うことがあるかもしれない。

今後の楽しみに取っておくとして、今は先に進むべきか。


「それで、トラスに向かうことは無いとは思うが、どのようなルートを進むんだ?いくら隠れながらの移動になるとはいえ、道なき道を突き進むような事はないだろ?」


「ああ。その辺についてはポールとも話し合ったんだが、トラスの周りにある小さな村や集落をいくつか抜けていくつもりだ。」


「でも、追ってを配するならそういうところに行かせるんじゃないですか?逃げる側に立って考えたらすぐに思い付きそうな物ですけど。」


「だとしても補給は必要だ。それにわざわざトラスを抜けていくよりはよほど安全だと思う。一応その可能性も無くはないから大回りでの迂回という形になるだろうが。」


「そうなると馬車が無いのは痛いな。」


俺の一言に少し寂しげな表情を浮かべるアルク。

道中馬の面倒は全て見ていたし、愛着が湧いていたのだろう。

とはいえ、状況を見て取捨選択をせねばならないとなると、やはり連れてくることは叶わない。

第一、連れてくるとなるとまた街の中に戻らなくてはならなくなる。

そんな愚を犯すタイプではない為、後ろ髪を引かれる思いはあれど行動には移さないだろう。


「まあ、何にしろ進むしかないんだ。その案で行こう。」


こうして俺達はオブライエンを後にした。

新しい要素が出てきました。

以前、活動報告で言った通りにしていくつもりなので回収は難しいかもですが。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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