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第一の関を越える

街道を進んでいくとやがて、話に聞いていた第三王子派の兵達が守っているであろう場所が見えてきた。

テントというよりは、モンゴルなどで見られるゲルのような建物がいくつも建てられていた。

遠目からでもというより、遠目だからこそというべきか。

大小様々なゲルが多数あることがよくわかる。

そしてその回りを、簡素ではあるが柵が設けられており、人の出入りを制限しやすくなるようにされていた。

街道に繋がる部分は、木で作られた門が建っており、関所のような役目をさせていることが伺える。

関所といったって、先に向かう者は皆無だろうから、塞き止めているだけなのだろうが。


このまま進めば、尋問されるのは間違いない。

第三王子派の兵達が守っているとはいえ、自分の勢力の大将がここを通り抜けて先に進もうとすれば、必ず止められるはずだ。

どうやって潜り抜けるのか?

そんな悩みもひとまずは解決している。

移動を始めた際に、アンリより手紙を受け取っていた。

「これを見せれば、何も聞かれる事なく先に進めるはずだよ。その先は・・・頑張って!」というネルフィットからの伝言とともに。


その門に、俺達が乗る馬車が差し掛かる。

当然俺達は呼び止められる。


「何だ、貴様らは!」


これに答えるのはアルクだ。

馬車を御するために外に出ているのだから当たり前の話か。


「私は冒険者ギルドベッラ支部に所属するアルクという。呼び出しに応じて、オブライエンに向かうところだ。」


「何?それは本当か?」


「無論、嘘など言っていない。これがその証拠だ。」


そう言って、アルクは懐より手紙を出した。

ネルフィットより持たされていた書状だ。

門兵はそれに手早く目を通すと、最敬礼をして後方に控えているであろう者に何事か合図を送る。

それに応じるように門が開いていく。

そんな様子に俺は驚いてしまう。

アッサリ門が開いた事に驚いたのはアルクも同じだろうが、そんなことはおくびにも出さず、馬車を進め門を通り抜ける。

あの書状には何が書かれていたのだろうか?

中身を覗くような真似をしなかったが、それだけに気になってしまった。


「あの手早い対応は何だったんだ?あれでは、ザルもいいところだ。」


「ひとえにネルフィット様のお力です。」


俺の問いにアンリが答えるが、それでは答えになっていないと思うのは俺だけだろうか?

俺の表情を見たポールが軽く笑う。


「あの領域を守っているのは、アッガからの兵がほとんどを占めているんだ。おそらくだが、俺達の身元を保証でもすると書いてあったんだろう。あいつらにとっては、俺よりもネルフィットの命令を優先するだろうさ。」


「第三王子派が守っていると聞いていたが?」


「俺の支援をしてくれている中での最大勢力はネルフィットだということだ。他の連中が出した兵の数は少ないし、門の周りにはつけられていないのだろう。攻められれば、一番の被害を受けるのはあの辺りだろうし、誰かしらに裏切られれば相手側に門の通行を簡単に許してしまう。まったく・・・利を考えれば第一王子側に付けば良いものを。」


口ではそう言いつつも、どこか嬉しそうだ。

周りが突然敵だらけになってしまった中でも、変わらず味方になってくれるネルフィットは、ポールにとっても心の支えとなっているのだろう。

そんな二人の関係が少し眩しくうつる。


さて、第一の関門と少しは身構えていたわけだが、これは簡単に越えることが出来た。

仮にここで失敗したとしても、前に進むことが出来なくなるだけで、命まではとられる事は無いだろうと思ってはいたが。

それはいい。

問題は次だ。

次はポールに対して敵意を向けてきている相手だ。

素性が分かれば捕らえられてしまうのは、どんな者でも連想する事が出来るだろう。

これをどうやって越えるのか。

どこかに抜け道でも無いのだろうか?

街道から多少外れたとしても、今の俺達なら何とかなるんじゃないのだろうか?

勿論、ポールを守りながらになってしまうので、簡単とは言わないが。


「次は、何か案や策はあるのか?」


「いや、これといって策は無いな。一応協力者がいるにはいるが、周りが敵だらけの状態ではあまり期待は出来ないだろう。」


ポールにすぐに言われてしまう。


「それなら遠回りになってもいいから、どこか別の道はないか?」


「あの辺りは隘路になっています。そこに関をおそらく設けているはずですから、迂回は叶わないでしょう。仮に抜け道があったとしても、地元に住まう方々でなければとてもではありませんが分かりません。」


これまた、アンリにあっさりと否定される。

ではどうしようというのか?

カインを見るが、その視線に気付いたカインは首を横に振る。

まさか、関所破りのような無理矢理にではダメだろう。

ただただ被害を出すだけだ。

仮に抜けることが出来たとしても、すぐに追っ手を差し向けられる事になる。

それに、それぞれの街にすぐに情報が伝えられる事になり、八方塞がりになるのは目に見えている。

いったいどうしたらいいだろうか・・・

俺の、いや俺達の悩みを知ってか知らずか、高いびきで眠るトゥーンとバルが羨ましくなった。

そんな訳で簡単に通り抜けてしまいました。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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