寝て起きたら
真面目に生きて安らかに死んでいく。
人生なんて波風立たないいわば凪のような状態で十分だ。
上がれば下がる。
そんな波乱万丈、縁がないしいらない。
その日の体長や気持ちのありようで、多少の波は立つかもしれない。
でも、時折吹くそよ風程度でいい。
ある人は言った。
「人生にはスパイスが必要だ。」と。
しかし、自分には必要ない。
面白味がない?
面白味がない訳じゃない。
ささやかな楽しみなら以外とある。
幸いそれなりの大学をでて、そこそこの会社に就職できた。
残念ながら、何度か彼女は出来たが、結婚までは至ってない。
そんな感じで十数年。
気付けば、会社でそれなりの役職に就いており、生活の中心は仕事一辺倒という唯の堅物と周りから見られるようになっていた。
確かにかつて趣味としていたものも幾つかあった。
学生時代から漫画やゲームなどは一通り楽しんでいたし、運動なんかも励んでいたような記憶がある。
生来の生真面目さと相まってか、熱中するとのめり込んでしまっていたと思う。
今はそれが仕事になっていたというだけ。
でも、たまに昔を振り返り、他の生き方もあったかもしれない。
そんなことを考えることが最近多くなっていた。
後悔という訳じゃない。
満足していない訳でもない。
ただ、ふと考えてしまうだけだ。
後先考えず、自分の思うままに過ごすことが出来たら。
その日暮らしのように、日銭を稼ぎながら自由を謳歌することが出来たら・・・
いや、詮ない話だ。
明日も早い。
仕事は待ってはくれない。
日々を追われてる気もするが、それも仕方ないだろう。
時間は11時を回ったくらい。
布団に潜り込み、部屋の電気を消す。
目を閉じると、すぐに寝息をたてる。
翌朝、十二分に睡眠をとった頭はスッキリしている。
やはり眠ることは大事だ。
着替えなくてはと、体を起こす。
・・・見覚えのない部屋だ。
いかにも純和風な造りとなっており、畳が敷かれているのがみてとれた。
木で出来た壁は暖かみがあった。
そんな壁には、最近ではなかなか見ることが無くなってきている地方のお土産屋に売っているであろうペナントがいくつも掛けられている。
一体どういうことだろうか?
休み前でもないから、酒も飲んでいない。
前後不覚に成る程飲むこともないので、見ず知らずの部屋で眠りにつくなどあり得ない。
第一、昨日はちゃんと自分の布団で眠ったはずだ。
現に自分が座っている尻の下は、自分の布団だ。
まだ自分の温もりが残り温かい。
「お、おきたのじゃ。」
首を傾げていると、不意に声をかけられる。
誰だろうか?
声のする方に目線を移動させると、小学生に上がるくらいの少女が立っていた。
手にはお盆を持っており、その上には湯飲みが2つ。
部屋の中央に据えられた卓袱台に置く。
1つは少女自身のものだろう。
もう1つは自分に淹れてくれたようだ。
「まぁ、せっかくいれたんじゃ、おちゃを、のむとよいぞ。」
「・・・」
状況が全くわからない。
こんな少女は見覚えがない。
はっきりいって得体がしれない。
しかし、せっかく淹れてくれたのだ。
ありがたくいただくべきだろう。
おとなしくお茶をすする。
朝起き抜けに飲むお茶というのもなかなかにいい。
その姿に満足顔の少女。
お茶を飲み、若干冷静になった。
「ここは何処だ?」
「ここは“しんいき”じゃ。」
「しんいき・・・神域?」
「そうじゃ、おんしはしんでしもうた。でもまじめにいきていたのがよかったのじゃな。さいきんのれんちゅうはだめなのがおおすぎじゃ!」
・・・?
・・・死んだ?
自分は死んだのか?
何でだ?
「まー、きをおとすでない。おんしは、うんがいい。よそのせかいでいき・・・」
少女が何か言っているが、耳に入ってこない。
そうか、死んでしまったのか・・・
自分の中で、一度は書いてみたいランキング上位の異世界転生ものになります。
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