きょうかしょ。
お久しぶりです。
ためてあったモノを少しずつ投下していこうかな、と。
君が好きだ。
何度それを伝えようとしたことだろうか。
たったそれだけすら、思春期と言う歳にかかった少年には、言いづらいことだった。
言葉で告げることを諦め、それでも気持ちは留まるところを知らない。
日に日に教科書に増えていく"好きです。"の文字を、彼はぎゅうと強く抱き締めた。
ただひたすら、気持ちを抱き締めるように。
いつしかそれで、少年は満足するようになっていた。
もう数学の教科書は文字で埋まった。たったひとつ、"好きです。"の言葉で。
さぁ、次の教科書を開こう…………でも、どの教科書も埋まりきってしまっていて…。
なんてことだ…もう埋まっているだなんて!!
ああ、なんて素晴らしいキモチなんだ!!こんなにも晴々しいキモチと言うものはきっと二度と味わえるまい!!!
高揚、高揚、高揚。気持ちの高ぶり。
とんとん。優しく前の娘の肩を叩く。
「ねぇ、君。僕にしか宛のないラブレターは、もう書く場所がないのだけど…どうする?」
むす、と照れ隠しのように不機嫌を表す可愛い君。
その小さく愛くるしい唇からは驚きの言葉が漏れた。
「今度は貴方が書く番よ。」
教科書は本来の教科書の意味はなくして、
ただの僕らの許可書…きょうかしょとなっていた。