第7話 ギャラリー
どうにかこうにか彩香をなだめすかし、やっとの事で落ち着きを取り戻したので俺は今まで不思議に思ってたことを聞いてみた。
「なぁ、あのギャラリーって何なんだ?今って他のクラスも授業中だろ?」
そう、俺たちが授業を受けているグラウンドを囲むように数人のグループで合わせて100人くらいか、とにかく多くの生徒が見学していた。今も熱心にグラウンドを見つめていたり隣同士で話していたり何かをメモしていたりと様々な様子が伺える。見学しているのは星雲高校の制服を来ているのでうちの生徒だと思うし、見れば2年や3年の先輩ばかりだった。この星雲高校は学年別に男子はネクタイ、女子はリボンの色が違い、俺たち1年は藍、2年は深紅、3年は深緑で異なり一目見ただけで分かるようになっている。今グラウンドを使っているのは自分たちのクラスだけ、そして今は授業中。明らかにこの先輩方は自分たちの授業をサボっている。なのに無駄に熱血な体育教師もそれを見て何も言わないし、いったい何なんだろうか?
「なんだ知らなかったのか?ありゃいうなればスカウトだな」
「スカウト?」
水希の口から一般高校生には無関係だろう単語が発せられた。未だにピンと来ない俺に向かって水希は説明を続けた。
「一年生の有望選手を物色してるらしいぜ。ほら、あそこがサッカー部であそこがバレー部。あれが陸上部だな。バスケ部は・・・分からん!」
なぜバスケ部は分からないんだろう?そして別にそれぞれの部がユニフォームを着ているわけでもない。なぜ水希はどの上級生がどの部の部員なのか分かるのだろうか。
「この学校、こんな事許してて大丈夫なのか?」
「学校始まって以来の伝統っぽいぜ?ていっても凄げえ浅い伝統だけどな」
「それじゃあ、この授業はトライアウトって感じなのか?てことは・・・水希と彩香は各部のスカウト陣が殺到するかもな〜」
「俺はもうバスケ部って決めてるから」
「あ、彩も決めてるのに・・・どうしよう」
と既にスカウト陣が殺到した時の事を考えたのか見るからに不安そうな顔をする彩香。
「はいはい、何だったらついていってやるから、実際に誘いが来てるわけでもないのにそんな不安そうな顔すんなって」
「相変わらず翼飛は彩香ちゃんに甘いな〜」
「何か言ったか?水希?」
「な、なんでもないぞ?うん。そんなに親友を睨むなって・・・怖いぞ?」
翼飛のジトーっとした視線に微妙に後ずさりながら呟く水希。
「ま、まぁ翼飛だっていいタイム出してたんだし、どこかの部のスカウトが来るかもしれないぞ?今からでも断りの文句考えとかないとな!なんだったら彩香ちゃんに着いてきて貰ったらどうだ?」
「んなこと1人で大丈夫だ!」
「えぇ〜つぅちゃんは彩の助けはいらないのぉ〜?」
「い、いや、彩香には着いてきてもらおうかな。うん」
再びぐずりそうになった彩香を慌ててなだめすかす翼飛、その隣では水希が肩を震わせながら笑いを堪えていた。
次回予告
第8話 幼馴染
まるで運命、みたいです