第3話 バスケ部?
入学式を終えて数日後、今日は朝からクラブ紹介なるものが体育館であるらしい。同好会やらサークルやらクラブやら、その数が多すぎて午前中全部使うって、この高校大丈夫ですか?色んな意味で・・・
体育館は1年生全員数百人勢ぞろいでもまだ余裕があるほど広い。大きさは違うが他にも体育館がいくつもあり、今いる体育館が第1体育館。ちなみに一番広いらしい。そんな場所に1年生が自由に陣取ってクラブ紹介を眺めていた。
「えぇ〜我々は〜学園のアイドルである季更様を影にも日向にも日夜守護し、見守り、盛り上げる事を誓うものである!季更様は・・・」
「はぃ、ありがとうございましたぁ〜〜〜」
「なっ!ちょっと!!!まだ季更様の素晴らしい所を述べていないではないか!!!おい!離せぇ〜〜〜〜〜」
壇上で何やらわけの分からない事を叫んでいたヤツはまだ何やら叫んでいたが、係りの者たちに強制的に退場されていった。いったい何部だったんだ?そもそも『季更様』って誰?
そんなわけの分からないクラブ紹介が続き、やっと最後の方になってサッカー部やら野球部といった“まともな”部が紹介されている。
「我々野球部は、毎日朝と放課後に練習があり、去年の成績は夏予選ベスト8まで進み、今年こそは甲子園出場を目指します!!!初心者でもいいんでヤル気のある人は野球部へ!!!」
とは、野球部のキャプテン。
「私たちは週一回家庭科室で所属メンバーのアンケートによって、和食から洋食、クッキーからケーキまで何でも作ります!興味のある方はお気軽にお越しください♪待ってるね☆」
とは、料理部の副部長。
「僕たちバスケ部は弱小で去年の成績といっても地区予選2回戦負けくらいしかありません。文化祭には恒例となったライバル城北付属と試合がありますが、部員が3人しかいなく・・・城北には負けられません!力を貸してください!!!」
とは、男子バスケ部キャプテン。ちょっと悲痛な叫びだった。
その他にも、国立を目指すというサッカー部、花園を目指すというラグビー部、バトミントン部や女子バスケ部、バンドボール部などの運動部。将棋部や囲碁部、長期休みを利用して全国の温泉に行くという温泉同好会までちょっと変わったクラブを含む文化部の演説が午前中いっぱい続いた。
「疲れたぁ〜長すぎる〜俺全然覚えてないし〜?」
「いや、水希は始まって直ぐ爆睡してただろ・・・」
「俺くらいになるとあれくらいの話なら寝ながらでも聞けるのさっ!」
「ふぅ〜ん、なら一番初めに紹介された部活は?」
「・・・・・」
各クラブの演説の間にはそれぞれのクラブのデモンストレーション等があったりして、料理研究部などは直前に作ったというお菓子を袋詰めにしたものを体育館中に投げ入れたりして一時騒然とした場面もあったというのに、こいつは全く気付いてないっぽい。今ここで水希に『のび太くん』の称号を与えようかとマジで考えてしまう。
「ほら、聞いてない」
「うるさい翼飛!あんなもん聞くくらいなら寝てた方がマシだっての!!!」
「まぁ、それは俺も同感だ・・・一番最初のなんか、結局何の部活か分からないまま退場させられてたし・・・」
「なんだそれ?」
「さぁ・・・?」
「翼飛、聞いてても分かってないと意味ないだろ・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
うん。分からないものを気にしてたってしょうがない!人生は昔よりも未来なのだ!
「ところで、水希はやっぱバスケ部?」
「当ったり前だろ!翼飛もバスケ部入るだろ?」
「ん〜分かんない。バスケは好きなんだけど・・・ そういえば、バスケ部ヤバそうだったぞ?」
「何か?」
「いや、今たったの3人しかいないみたい。水希が入ったとしても4人で試合出来そうにないし?」
「なら翼飛が入ったらちょうど5人じゃないか!問題ない!!!」
「いや、俺入るか決めてないし・・・しかも、俺、試合に出たことすらこれまでの人生で一度もないんだぞ?」
「あれはあのバカ監督が悪いんだって!あのクソ野郎〜翼飛を身長だけで判断しやがって・・・」
「水希は俺を買いかぶり過ぎなんだって^^;」
「いや、お前の実力は俺が保障する!だからバスケ部入るからな!」
「あ〜はぃはぃ、前向きに検討させて頂きますよ」
「政治家みたいな事言うな!漢なら今ここでバスケ部に入ると言え!」
「あはは〜・・・はぁ〜・・・」
バスケはしたいけど、中学の時のような惨めな思いはあまりしたくない。俺はため息しか出なかった。
次回予告
第4話 ライバル?水希
くっそ〜何であんなヤツに勝てないんだ・・・