第2話 夫婦?
星雲高校は比較的家から近いと言う事もありよく目にする制服だが、自分が実際に着てみると新鮮だと思うから不思議なものだ。小さな頃よく遊んだ公園の横を通り、商店街の中を突っ切り、見慣れた光景なのにまるで初めて通るかのような不思議な感覚がする。改めて今日から高校生になるのだと実感する。
そんな感慨にふけりながらこれから自分の通うことになる学び舎に到着した。先程人だかりのど真ん中に突入して自分のクラスを確認したのだが、自分は1年3組だった。ちなみに共に登校し自分の少し後ろを歩いていた彩香も3組。これで小学校から10年間同じクラスになった。さすがにくされ縁もここまで来ると怖いものがある。
「お、初日から仲良く夫婦で御登校ですかぁ〜?」
「!?」
そんな事を考えなら1年3組の教室を目指していると後ろから聞き慣れた声が聞こえた。一瞬無視してやろうかとも思ったけど、ここで無視したらある事ない事大声でわめき散らされるのは目に見えてるので、抗議の意味も込めて対応してやる事にする。
「黙れ水希!彩香とはそんなんじゃないって何度言えば分かるんだ!ほら、彩香も何かいってやれよ!」
そう言って彩香の方を見てみれば顔を真っ赤にして俯いている彩香の姿が目に入った。こんな反応するからこいつにわけの分からない事を言われるんだ・・・
「ほらほら、彩香ちゃんも否定しないし、翼飛もそろそろ諦めて認めたらどうなんだ?笑w」
別に彩香は水希の戯言を認めているわけではない。彩香はこの手の話が苦手らしくこのような話題になるとほぼ間違いなく顔を赤くし、俯いてしまう。中学校の卒業式の日、いったい何人の男にコクられていたか・・・その全てで顔を真っ赤にし、俯いて黙り込んでしまっていた。相手の男も今日で卒業するためここで返事がもらえないことにはどうにもならない事が分かっており、焦って彩香の腕を取ったりするのだが、その行動で彩香は余計に縮み上がってしまいただオロオロするばかり。その度に俺は彩香の助けに入る事になり、ただただ男の恨みを買うばかりで・・・とんだ卒業式になってしまった。
ちなみ現在彩香の顔を真っ赤にして俯かせている原因になったこのわけの分からない戯言を言ってるこいつは浅見水希と言い俺の親友だ。ロクな奴じゃないけど。ちなみに、この水希の冗談はいつもの事なのだが、あながち間違っていないから始末に悪い。水希は知らない事なので、マグレという事になるが、俺と彩香は一応許婚という事になっている。まぁ、俺の親と彩香の親が勝手に決めた事であり、俺は知った事ではないが・・・詳しくは後ほどと言う事にして水希の話に戻す事にする。
とは言え、ロクなヤツじゃないという事を裏付けるだけになってしまうが、この水希というヤツは男の敵であり、ある意味女の敵でもある。見た目が良く、背が高く、運動神経も抜群で、ファッションセンスもいい。簡単にいうとかなりカッコイイのだ。とにかくモテる。なので中学では周りの男からただの引き立て役になるからと嫌煙されていた。まぁ俺も始めは苦手なタイプだと思っていたので余り近づこうと思わなかったのだが、接しているうちに何となくだがイイ奴なのだと分かり今まで交流が続いている。ただ唯一ムカつくのは俺に近づいてくる女の子は間違いなく水希を紹介してくれって娘だと思って間違いないって事。今ではもう悟りを開いたかのように平気だが、当時はマジで北斗を殺ってしまおうかと考えた程だ。
今もそこかしこから女の子の視線が・・・
そんなわけで、俺はよく水希や彩香と一緒にいる事が多いのだが、正直寿命がどんどん縮んでいくようか気がしている。水希の爆弾発言連打で周りから好奇の視線を浴びて身の縮む思いがするし、彩香のファンの男共からは日々殺気だった視線を浴びている。これぞ、心休まる刻がないとでも言うのだろう。
こいつらと一緒にいる事を後悔しているわけではないが、マジ大変なんだ・・・
次回予告
第3話 バスケ部?
俺、試合に出たことすらこれまでの人生で一度もないんだぞ?