短い邂逅
◇
その後結局、レインハイトは合同訓練を見学する事はせず、来るべき魔本との出会いに備え、例のごとく、一人図書館に篭もって本を読み漁っていた。
合同訓練なる行事への興味より、まだ見ぬ膨大な魔本の数々に対する興味の方が勝ったのである。
より専門的な知識について学ぶ以上、基礎的な知識は万全にしておかなければならない。一応重要そうな本はすべて読破した筈だが、念のため、レインハイトは今まで読んだことのない魔法についての本を探し出し、ひたすら読み込むという行動を繰り返していた。
その甲斐あってか、レインハイトは、これまでに読んだことのなかった本の中から、自分が知らなかった知識を得ることに成功していた。
今まで読んだことのない本だからといって、そこに自分の知らない知識が存在するとは限らない。別の本で語られている内容がほぼ同じように書かれていることも少なくはないのだ。そのため、今回のこの結果は、極めて僥倖だったといえるだろう。
(「世界の干渉抵抗力」は、魔法によって生じた改変を元に戻すだけの力ではない。無論、その改変を生じさせている原因である魔法にも作用するものである。故に、魔法の長時間発動は実現不可能であり、治癒魔法などの長時間発動が求められる魔法は、干渉抵抗力によって魔法がかき消される度に、連続発動などの技法によって常に掛け直さねばならないのである。この法則が、治癒魔法が比較的難度の高い魔法であるとされる原因でもある……か)
しかし、レインハイトにとってその新情報は、すんなりと受け入れられるようなものではなかったようだ。ページの文面を睨みつけ、無言のまま首を傾げている。
ただ、彼が頭上にクエスチョンマークを浮かべている理由は、己の理解力が乏しいが故に、内容そのものを理解できていないということではなかった。
(「世界の干渉抵抗力」が魔法そのものを打ち消す……? ……いまいちピンと来ないな)
普段あまり魔法を使用しない(と言うより「使用できない」と言ったほうが正しいか)レインハイトは、当然の事ながら、発動中の魔法が「世界の干渉抵抗力」によって強制的に無効化されてしまうというような体験をしたことがなかった。
(まあ、試してみれば済む話か)
魔法が使えなければそれを確かめる術はないが、幸いなことに、レインハイトは魔法が使えないわけではなかった。
レインハイトが唯一使うことのできる、対象から魔力を奪う魔法『吸魔』。一般的な魔法系統である自然魔法ではないが、魔法であることに違いはないだろう。
自分が何故この魔法だけは扱うことができるのかは不明だが、今はこれに頼るしかあるまい。レインハイトは左手に意識を集中し、詠唱すること無く、精密な魔力操作のみで『吸魔』を発動させた。
対象を指定せずに魔法を発動させるというのは少々高等な技術なのだが、彼にとっては高等でもなんでもない普通の技法であるらしい。
左手を中心として等速回転を始めた紫色の魔法陣を眺め満足そうに頷くと、レインハイトは読みかけの本へと目を戻した。
一度魔法を発動させてしまえば、後はほんの少しの魔力を供給し続けるだけで勝手に作動し続けるはずだ。それくらいであれば、本を読みながらでも平行して行える作業である。
(……さてと、長時間の発動っていうのが一体どれくらいの時間なのか、確かめてやろうじゃないか)
不敵な笑みを浮かべ、いつ自分の魔法がかき消されてしまうのだろうかと若干わくわくとした気持ちで本を読むレインハイト。
まさか、合同訓練が終了する時刻である午後六時までの三時間もの間、何の問題もなく魔法が作動し続けるという結末になるとは、この時のレインハイトは想像だにしなかったことであろう。
◇
――長時間発動ってのは、一体何時間のことなんだよ!
案の定、レインハイトは誰に向けるでもなく心中でそんな悪態をつきつつ、魔法学院の校内を小走りで進んでいた。彼の左手には、紫の光を放つ魔法陣が未だ何の不備もなく作動し続けている。
現在レインハイトが向かっているのは、合同訓練が行われていたであろう校庭である。
何をしに行くのかといえば、当然、合同訓練を見学すると言っていたアトレイシアに別れの挨拶をするためだ。
流石にお礼だけを貰って帰り際の挨拶をしないようでは失礼すぎるだろう。いかにレインハイトといえども、それくらいの常識は持ち合わせていた。
レインハイトが校庭に辿り着いた頃には、既に訓練は閉会式を終え、解散の段階に入っていた。そそくさと寮へと帰っていく生徒や、王立魔道師団に所属する魔道師であろう人物たちと真剣な表情で会話をしている生徒の姿が見受けられる。
しばらく周囲を見回していると、全身に鎧を身に着け、背中に黄金の大剣を担いだ女騎士を発見した。アトレイシアの騎士、オーレリアである。非常に目立つ格好をしているため、見つけるのは簡単であった。
自分に向けられている視線に気付いたのか、オーレリアはレインハイトに目を向け、静かに睨めつけた。
彼女のその視線に若干敵意のようなものが含まれているのを感じ、レインハイトは記憶から心当たりを探りつつ、小首を傾げた。
先程の僅か数十分程の間にオーレリアから危険人物として警戒されてしまったなどと、そういった事情に鈍いレインハイトに察しろという方が酷というものだ。
「レイン、どうしたのですか?」
自分のことを探しているのだと察したのだろう。生徒や軍の魔道師に囲まれていたアトレイシアは、彼等に一言断りを入れてから、レインハイトの元へと歩み寄ってきた。無論、護衛であるオーレリアもそのすぐ後ろに付いてくる。
「邪魔してすみません」
レインハイトはとりあえず開口一番そう謝った後、「そろそろお帰りになる時間かと思って、アイシャさんに一言挨拶をしに来たんです」と続けた。
「いいのですよ。正直なところ少し疲れてきたので、ちょうど席を外す口実ができてむしろ感謝しています。……ところでレイン。その左手の魔法陣は何なのですか? 見たところ、魔法が起動しているようですが」
アトレイシアは、レインハイトの左手で起動し続ける『吸魔』の魔法陣を指差した。己の眼前で魔法が作動しているのだ、気になるのも当然だろう。
「え? ああ、これはちょっとした実験で……」
「貴様……まさかアトレイシア様に危害を加えるつもりではあるまいな」
眼光を鋭くさせたオーレリアがずいとアトレイシアを庇うように前に乗り出し、背中の大剣の柄に手を伸ばした。
「やめなさい、オーレリア」
その直後、すかさずアトレイシアがオーレリアの後頭部を軽くはたいた。ぺしっ、という小気味いい音がレインハイトの耳朶を打つ。
「いたっ! 何をするのですか!」
「レインがそんなことをするはずがないでしょう。まったく、あなたが居ると話がこじます。……そうね……オーレリア、ここは私に任せて、あなたのファン達にサービスをしてきてあげたらどう?」
アトレイシアに叩かれた後頭部を擦っていたオーレリアが、その最後の一言を聞いた直後、まるで苦虫を噛み潰したかのように顔を顰めた。これではせっかくの美人が台無しである。
「ファン……?」
一体何の話だろう、と訝しげに呟くレインハイト。単に疑問に思っただけであり、悪気など一切なかったのだが、オーレリアはレインハイトを睨みつけ、更に表情を険しくさせた。
「レインは知らないのですか? 実は、オーレリアは『ヴァルキュリア』の――」
「うわあああ! アトレイシア様、おやめください!」
何故か取り乱したオーレリアは、周囲の視線など顧みず、大声を上げアトレイシアに縋り付いた。何でもしますから、とでも言いたげな必死な形相である。
「そんなに恥ずかしがらなくても良いではないですか。隊長に任命されるなんて、とても名誉なことでしょう?」
「いえ、私はアトレイシア様の護衛を務めているので隊はブリテッド副隊長に任せきりでして、隊長と言っても名ばかりなのですが……って、そうではなく!」
コントじみたやり取りを交わすアトレイシアとオーレリアを視界に収めつつ、レインハイトは「合点がいった」という表情でぼそりと呟いた。
「へえ、オーレリアさんは『ヴァルキュリア』の隊長さんなんですね。すごいなあ」
「……くっ!」
レインハイトから憧憬の目を向けられているというのに、オーレリアは何故か悔しそうに奥歯を噛み締めた。
「どうして嫌そうな顔をするんです? 『ヴァルキュリア』は美しい女性纏魔術師の精鋭で構成されているんですよね? 外見も実力も一流だなんて、とてもすごいことじゃないですか」
その何気ないレインハイトの一言が(フォローのつもりだったにも関わらず)、決定的な起爆剤となってしまったようだ。
オーレリアは、キッ! という擬音が聞こえそうなほどの勢いでレインハイトに目を向けると、今までの鬱憤をすべて吐き出すかのように、一気にまくしたてた。
「その「美しい女性纏魔術師」というのが問題なのだ! ……私は、いつか実力で王立騎士団の隊長に任命されることを目標としてきた。……ああ、最初に部隊長に任命されると聞いた時は期待したさ! ……しかし! 蓋を開けてみれば、配属させられたのは騎士団内でイロモノ扱いされている新設部隊ではないか! 部隊員は殆どが見てくれを重視されて選ばれたひ弱な少女ばかり! 何かの間違いではないのかと、当時は相当に疑ったものだ!
まだまだこんなものではないぞ! 隊に入ってからは女性纏魔術師ばかりの部隊というだけで他の部隊員には舐めた態度を取られ、あまり部隊に顔を出していないせいか同じ部隊員には避けられ……挙句、街を歩けば名も知らぬ男達から劣情に満ちた視線を向けられるのだぞ!? 一体、これのどこが名誉なことなのだ!」
「お、オーレリアさん……とりあえず落ち着いてください。周りが見てますよ」
オーレリアが我を忘れ大声で怒鳴り散らしたため、アトレイシア達は周囲の視線をかなり集めてしまっていた。
アトレイシアは王女であるという以前に凄まじい美少女であるため(付け加えておくと、オーレリアもかなりの美人である)、あまり人目を集めないようレインハイトは校舎の端のあたりに二人を呼んだのだが、これではその配慮も水の泡である。
「う……すまん……君に当たるのはお門違いだったな……」
レインハイトの一言で正気を取り戻したのか、大層焦った様子で自分に向けられている視線を確認すると、オーレリアは申し訳無さそうに目を伏せた。
そこへすかさず、アトレイシアがオーレリアに慰めの言葉を投げかける。
「そうですよ、オーレリア。短気なところは昔から変わりませんね。……大体、あなたが思っているより、『ヴァルキュリア』は王都内の纏魔術のイメージ改善に大きく貢献しているのですよ? 私の護衛と部隊長を兼任するあなたの苦労は理解しているつもりですが、少なくとも私は、『ヴァルキュリア』の隊長という肩書きは、決して恥ずかしがるようなものではないと思いますよ」
オーレリアが苦労していることは、彼女の最も近くにいたアトレイシアが一番良く知っていることであった。
流石に王女の言葉は深く響いたのだろう。オーレリアはアトレイシアに対し、深々と頭を下げた。
「少し言い過ぎました……申し訳ありません、アトレイシア様」
「わかってもらえれば良いのです。私も、あなたを誂うような事を言ってごめんなさい」
アトレイシアとオーレリアは顔を見合わせ、ぎこちなく謝罪し合った。
「えー、ところで、その……アイシャさん。先程の禁書庫の件についてなのですが……」
そうして二人がうまく仲直り(?)できたところで、レインハイトは控えめに本題を切り出した。
ともすれば即物的な人物であると捉えられかねない性急っぷりだが、しかし、レインハイトは決してがっついているわけではなかった。既に合同訓練は終了しているため、あまり二人を拘束しておくわけにもいくまいと気遣ってのことである。
「ああ、その件でしたら、無事に許可が降りましたよ。一応は国家機密ですので監視役は付くそうですが、明日からでも、アリア先生に頼めば入れてくれるみたいです。良かったですね」
そんなレインハイトの気遣いを察したのかは不明だが、アトレイシアは特に気にした風もなくそう告げた。
「本当ですか!? ありがとうございます!」
これで明日から本格的な魔法の研究に入れる、とレインハイトは心中で大喜びした。周りの目がなければ、ガッツポーズの一つでも繰り出しているところである。
「いいのですよ。……また今度お会いする機会がありましたら、その時にでも研究の成果を聞かせてください」
何故か若干寂寥とした雰囲気を漂わせたアトレイシアは、レインハイトに儚げな笑顔を向けた。
「はい、頑張ります」
一体どうしたのだろうかとは思うものの、原因に心当りがないため、戸惑いつつもレインハイトはアトレイシアの言葉にただ返答を返すことしかできなかった。
「ではオーレリア。私達もそろそろ帰りましょうか」
「はっ」
アトレイシアがそうオーレリアに声をかけた時には、既に先程まで彼女が纏っていたはずの寂寥が綺麗に無くなっていた。
こうなってしまっては理由を聞くにも聞けず、やむを得ずレインハイトには別れの言葉を告げることにした。
「アイシャさん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました。先日の恩は一生忘れません。……それでは、またいつの日か会えることを願っています」
今度は先程のような哀愁の影はなく、アトレイシアは可憐な笑顔でレインハイトに応じた。
「はい、僕も楽しみにしています。オーレリアさんも、今日はありがとうございました」
「うむ」
「さようなら、レイン。ではオーレリア、行きますよ」
素っ気ない返事を返したオーレリアを確認すると、レインハイトにもう一度別れの言葉を告げ、アトレイシアは踵を返し歩き出した。その三歩ほど後ろをオーレリアが続く。
本当にまた会うことができたらいいのに、とアトレイシアは俯きがちに歩きながら心中で独白した。
恐らく、これから数年間はレインハイトと会うことができなくなるだろう。いや、もしかしたら、もう二度と会えなくなるのかもしれない。アトレイシアは陰鬱な気分が増幅していくのを自覚しつつ、思考を続けた。
このアトレイシアの不安の種は、彼女の単なる漠然とした予感ではなく、論理的な根拠のある予想であった。
先日のアイオリア近郊で起きた王女襲撃事件の首謀者は、ほぼ間違いなく、クリストフ率いる王子派だろう。
そう断定するに至った根拠は単純だ。今現在、アトレイシアを殺して最も得をするのは、彼女と王権争いの最中であるアトレイシアの実の兄、クリストフだからだ。まだ確実な証拠は見つかってはいないが、九割九分正解であると見ていいだろう。
王権争いは今に始まったことではないが、先日のように実力行使をしてきたのは初めてである。数十名の王立騎士団員を圧倒することのできる殺し屋を雇っていたことから、その本気度も窺えるというものだ。
本当に、自分が生き残れたのは運が良かったとしか言いようがない。
そこでアトレイシアは足を止め振り返り、こちらに向けて手を振っているレインハイトに小さく手を振り返した。
「……はぁ」
「……? どうされました?」
「いいえ、なんでもないわ」
オーレリアに力なさ気な笑みを向け、アトレイシアはそれ以上の追求を拒否した。
その意図が伝わったのかは謎だが、オーレリアは何も言わず定位置に戻り、沈黙の態勢に入った。心中で安堵しつつ、アトレイシアは自分の今後について思いを巡らせる。
あちらがそういった手を取ってきた以上、こちらとしてもそれ相応の対応をしなければならない。
反撃に打って出るなどという過激な策を取ろうと考えているわけではないが、もう一度相手から仕掛けてくるという事態が起きないとも言い切れないため、最低でも防衛面に関してはそれなりの対処をせねばならないのだ。
何の用意もせず、また襲撃されましたなどという笑えない冗談が実際に起きてしまう前に、早急な対応策を施行する必要があった。
既にいくつかの計画が進行中であり、何を隠そうその内の策の一つが、このオーレリアによる付きっきり態勢の護衛である。
平常時であれば、王都内にある魔法学院で開催される合同訓練の見学如きに、『光輝の女騎士』という仰々しい二つ名を持ち、王都内で一、二を争う強力な纏魔術師であるオーレリアを護衛として駆り出すなどということはあり得ないことなのだ。アトレイシアが彼女と旧知の仲でなければ、決して実現することはなかったであろう強硬策であった。
仕方のない事だとはいえ、多忙を極める彼女を己の護衛として無理に縛り付けている現状に、アトレイシアは若干の後ろめたさと申し訳無さを感じていた。そんなことを口に出せばオーレリアが怒り狂うだろうことは明白なため黙ってはいるのだが、口に出さずとも己が良心の呵責に苛まれてしまい、日に日にストレスは溜まっていく一方である。
ストレスの原因がそれだけであればまだ救いがあるのだが、しかし残念なことに、己の心を痛めてまでオーレリアを護衛に付かせたからといって、それで一安心などと楽観することは全くできないのだった。
いくら一対一であれば魔道師を圧倒できる実力を持つオーレリアであっても、仮に複数人の魔道師に囲まれてしまえば、彼等の放つ必殺の一撃からアトレイシアを守りぬくことは難しいだろう。そして、王女を庇いながら戦闘しなければならないため、殲滅はおろか逃亡すら相当に困難であろうことは想像に難くない。
更に言えば、アトレイシアを脅かす脅威は、そのような“わかりやすい攻撃”だけではないのだ。
具体例を挙げれば、ふと立ち寄った店のワインに毒が盛られていた、などという事態も起きないとは限らないのである。何も正面から殺そうとしなくとも、人を殺める手段など無数に存在するのだ。
そういったリスクを回避するため、アトレイシアは極力必要のない外出は控えなくてはならなくなってしまったのだった。つまり、今日の合同訓練の見学が、今後自分の好きに外出ができなくなってしまう彼女の最後の「ワガママ」だったのである。その楽しみが終了してしまったとあれば、こうして気が滅入ってしまうのもしかたのないことなのかもしれない。
無論、実際には訓練そのものを見たかったわけではなく、レインハイトとシエルに会いたかったというのがアトレイシアの本音だった訳だが。
これから自分は平穏とはかけ離れた生活を送っていくことになるのだろう。アトレイシアはまたも憂鬱に支配されかけたが、自分が落ち込んでいたままでは他の人達に迷惑がかかる、と強引に己を奮起させた。
オーレリアにはもちろん、アトレイシアを支持してくれている王女派の者達に対しても、彼等の希望の星であるアトレイシアは弱気な顔を見せるわけにはいかないのだ。
「オーレリア、これからよろしく頼みますね」
自らを鼓舞するため、アトレイシアは努めて明るい声音でオーレリアに語りかける。
「……急にどうされたのですか? ……ああ、護衛のことでしたら心配無用です。誰が立ちはだかろうと、私がアトレイシア様に指一本触れさせませんので」
一瞬困惑したような顔をしたオーレリアだが、すぐにアトレイシアの言葉の意味を理解し、己の胸に手を当て、自信満々に言い切ってみせた。
「ふふ、頼もしいですね。かっこいいですよ、オーレリア」
「そうですか? 何だか照れくさいですね」
嬉しそうに笑いながら後頭部を掻くオーレリアを眺め、「単純だなあ」と若干呆れつつも、そこがまた可愛らしいところだと思ったアトレイシアであった。
 




