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化け猫/探偵  作者: 三枝半太郎
mystery1 影のない死者
4/8

影のない死者 結

 崇典は西内を外に連れ出して言った。

「犯人は、死体を消し去ってしまうという手段をえらんだ。つまり、完全犯罪を計画していたはずです。だから、死体が消える現場を見た西内さんと依頼を受けた僕は完全犯罪を成功させる上で邪魔な存在、きっと僕たちを消しにくるはずです。」

 その言葉に西内は驚きを隠せない様子であった。

「犯人は誰なんです?」

 西内は張りつめた声で訊いた。

「犯人は、知っているはずのないことを知っていた人物。そして、周りの状況が不自然だった人物です。きっと、もうすぐ現れるでしょう。」

 西内は、目を限界まで開け、口を閉じ、唾を飲み込んだ。よほど緊張しているのだろう。

 無理もない、自分の前で同僚をありえない方法で死に至らしめた犯人が自分を殺そうとしているというのだから。

 足音が聞こえてくる。一気に旋律が走った。

 足音の先には、黒いモノで姿を隠している人間がいる。

 崇典は口を開いた。

「村の住民を三人殺し、そして今朝川崎さんを殺した犯人はあなたですね、北坂さん。」

 崇典は黒い人間を指さして言った。相手は微動だにしない。

「あなたは僕が訪ねた時、人が燃え上がったと言いましたよね?でも、西内さんも僕も燃え上がるなんて一度も言っていないんですよ。」

 西内は納得と驚きが入り交じった顔をしている。

 黒いモノが離れ、そこに北坂が現れた。黒いモノはきっと「影飲み」だろう。

「よく解りましたね、新名さん。」

 北坂は薄気味悪い笑みを浮かべながら崇典に言った。

「思えば、あなたには不自然なこと多々ありました。まず、掃除していた玄関の土です。畑に入る時は長靴を履くのが普通です。しかし、長靴が置かれていない玄関で土が散乱していた。人を殺すには長靴では不便だから普通の靴を履いたのでしょう。現に、倉庫の中の物はすべてきれいでしたよ、長靴もね。」

 北坂は笑っている。


「そして、玄関は汚れているのに、泥落とし用のマットは汚れていなかった。何せ、この村は夜になると静まり返る、靴を擦る音でも誰かに気づかれてしまうかもしれない、それを恐れたのでしょう。」

「ご名答、その通りです。」

 北坂は崇典にむかってゆっくりとした拍手をしている。

「でも新名さん、何故、北坂さんは川崎を殺したのですか?動機はないはずでは?」

 西内は崇典に尋ねた。

「立ち退きを要求されんだと思います。そうですよね?」

「またもや、ご名答。そう川崎はあの三人に頼まれて施設の建設を理由に立ち退きを要求してきた。彼らにとって、私は邪魔者でしかないですからね。」

 北坂はそこまで言うと、崇典達の方へ歩み寄ってきた。

「ここまで知られたのなら、尚更消しておかなければならない。」

 影飲みらしき影はゆらゆらと空中を泳いでいる。

「影飲み、こいつらの影を飲んでくれ!」

 北坂は叫んだ、すると影飲みは北坂の影を飲み始めたのである。

「何故だ!?」

 北坂は意外すぎることに腰をぬかして座り込んでしまっている。

 やがて、北坂はバタリと地面に倒れた。

 西内が慌てて、持っていた懐中電灯で照らすと北坂の影がなくなっている。

「裏切った?」

 崇典はそう言って、影飲みの方に向き直した。

 影飲みは次に崇典達の影を飲み込もうと飛び込んできた。

「化っ!」

 崇典が叫ぶと、バッグの中から化が飛び出し、影飲みに喰らいついた。影飲みは悲鳴を上げる。

 影飲みから黒い身体の破片が地面に落ちては、消えていく。そして、赤い、燃えるような玉が見えた。魂である。

 化が魂を一口で平らげると、影飲みは消え失せてしまった。

「新名さん、それは?」

 西内は唖然とした表情で訊いてきた。きっと、化のことだろう。

「化け猫です、少し訳があって一緒にいるんですよ……」

 崇典は西内の方を振り返った。

「だから、あなたの話を信じたんです。」

mystery1完結です。

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