第五話 冒険者になろう 後編
冒険者ギルドは二階建ての煉瓦造りの建物だ。
一階はギルドの受付と酒場、ギルドの専用倉庫がある。
二階はギルド公認の大手商店が武器、防具、道具等の販売、買取を行っている。
俺は今、二階の武器コーナーの前で、先程借りた本を読んでいる。本の目次を確認してから、装備のページを読み始めた。
装備とは、武器、防具、装飾品等で、戦いの中で相手を攻撃する物、攻撃から身を守る物、魔法効果で能力を上昇させる物のことである。ここでは初心者でも絶対に必要な武器と防具について説明する。
武器とは、先程も書いた様に相手を攻撃する物である。具体的には剣や槍、斧や鎚等の物理的攻撃の為の武器と、杖等の魔法増幅効果による魔法攻撃の為の武器の二種類である。余談だが、ここで言う魔法増幅効果は、装飾品の魔法効果とは違うものである。
武器は自分の体型、力量、戦闘スタイルで選ぶことをお勧めする。どうしてもわからない場合は一番使い勝手の良いショートソードをお勧めする。
ショートソードは最初のうちはメインウェポンとして使いやすい上、他の武器を使い始めたらサブウェポンとして使える、まさに一本で二度美味しい剣なのだ。
ここで出できたメインウェポンとサブウェポンについて説明する。
メインウェポンとは、戦闘が始まった時直ぐに使える様にしてある武器の事だ。
サブウェポンとは、メインウェポンが使用不可能になった時や、メインウェポンでは相性の悪い相手と戦う為に装備する武器の事だ。
サブウェポンを装備すると機動力が少々落ちるが身を守るためにも持っておくべきである。
メインウェポンは、自分が使いやすいと思う武器にすると良い。
サブウェポンは、メインウェポンの弱点をカバーできる、又はメインウェポンの次に使いやすい武器がお勧めだ。しかし、サブウェポンとして装備しても機動力に問題が無い武器は、どうしても威力が低めの物になる。
次は防具についてだ。防具は主に頭部を守る物、上半身を守る物、下半身を守る物、足元を守る物、盾の五種類に分かれる。
頭部を守る物は、主に兜や帽子が代表的である。防御力重視だと兜、機動力重視だと帽子となる。
上半身を守る物は、鎧と服、ローブが代表的だ。鎧は防御力重視、服は機動力重視、ローブは機動力も防御力も高くは無いが、何かしらの魔法付与効果が付いている。
下半身を守る物は、ズボンとタイツである。ズボンとタイツの違いは、ズボンは比較的に防御力が高い。対して、タイツは機動力が高い。
足元を守る物は、ブーツとシューズに分かれている。ブーツの防御力は非常に高いが、機動力が低下する。対してシューズは防御力こそ無に等しいが、高い機動力と一部だが魔法付与効果がある。初心者には機動力の高いシューズがお勧めだ。
最後は盾だ。盾には主に三種類ある。
一つ目は、最も軽くて使いやすい小盾だ。バックラーは軽い為、機動力の落ちない非常に手軽な盾だ。だが、軽い為耐久性が高く無く、防御力も高く無い。
その分安く、魔法付与効果が付いている物もある為、普段使うのには問題無い。
だが、あくまでもメインの盾として使うのでは無く、予備の盾として使うことをお勧めする。
二つ目は、最も一般的な盾だ。
シールドはバックラーよりかは重く、多少機動力が低下するが、耐久性が高く防御力も期待できる盾である。買い替えの頻度が少ない為、コストパフォーマンスは非常に良い。
三つ目は、非常に高い防御力を有する壁盾だ。地域によっては大盾とも言われる。
この盾は非常に重く、両手で無いと扱えない為、攻撃と移動を捨てた完全防御特化の盾だ。
防御力と耐久性が武器や他の防具の中でも群を抜いて高い為、攻撃が盾を貫通してくる事や、盾が壊れる事はまずあり得ない。その代わり一度盾を構えてしまうと、コツを掴まないと構え直すのに時間が掛かるため、盾の横から攻撃される事になる。
以上で装備に付いての説明を終わる。
装飾品については別の本で調べてみると良い。
だそうだ。実に丁寧に書かれていた。さすが初心者向けの本だ。さあ、そろそろ装備を選ぼうかな。
俺は武器のコーナーへと向かった。
ここの武器屋には剣、槍、斧、弓、杖が売ってあった。弓は、慣れないと飛ばすことも出来ないらしいし、杖は、魔法が使えないと意味が無いので選択肢から除外して、俺は剣と槍と斧を見ていた。
「うーん、どんな武器がいいかな〜」
見た目はやっぱり剣が王道って感じがするが、斧の方が力が強そうに見える。だが槍は手練れに見えて渋いのだ。
かなり悩んだが、やっぱり使えないと意味が無いので剣にした。
防具は機動力を中心に選んだので早く選び終わった。
最終的な装備はこうなった。
武器
メインウェポン…ショートソード
サブウェポン…ナイフ
防具
頭…皮の帽子
上半身…皮の服
下半身…皮のズボン
靴…皮の靴
盾…鉄の盾
武器は安かったショートソードとナイフの初心者セットを買った。
防具は盾以外は未使用の中古品だ。
盾も在庫処分の為安売りされていたので、全て合わせても金貨一枚と銀貨七枚だったのだ。新品で揃えると倍のお金がかかるらしい。
こうしてゆっくり装備を見ていると気付けば昼前だった。今日中に一度でも戦闘をしたいので、早々と道具屋に向かった。
道具屋では、迷うことなく冒険者始めてセットを買った。このセットには、初心者に必要な物が揃えられている。価格は銀貨五枚枚と少し高いが、間違い無く高品質な物が手に入る。だが、この買い物で完全にお金が無くなった。早くお金を稼がないと一日二食になってしまうのだ。
俺は買い物を済ませてから直ぐにギルドへと向かった。しかし、俺は掲示板を確認すること無く、受付でダンジョンの散策許可を取った。何故なら昼過ぎから依頼を受けるよりダンジョンの素材やアイテムを売った方が効率が良いのだ。だから、俺はギルドを出た後、直ぐにこの街のダンジョン『ベイルーンの魔塔』へと向かった。