第三話 冒険者になろう 前編
「って、ここ何処だ?」
街に入って五分足らずで迷子になった。
地図も持っているし、見方も分かる。しかし、自分が何処にいるのか見当がつかないのだ。周りの地形と地図が一致しないのだ。
人に聞いて冒険者としての基礎的な知識が無いと思われるのは嫌だし、適当に歩いていると、更に酷い事になる。
「はあ…どうしようも無いじゃないか。」
力無く溜息をついたとき、近くの会話を聞き取れた。
「はあ〜、やっと依頼終わった。」
「そんなに難しい依頼じゃ無いはずなのにもうこんな時間になっちまったぜ、全く。」
「とっととギルドに行って報酬貰おうぜ。」
「ああ、言われなくても行く。」
そう言って剣を腰に下げた冒険者らしき二人組が歩いて行った。
(あれに付いて行ったら冒険者ギルドに着くんじゃないか!)
そう思った俺は、急ぎつつも怪しまれ無い様にその二人組に付いて行った。
「何で盗賊ギルドなんだよ…」
あの二人組に付いて行ったところ、冒険者ギルドでは無く盗賊ギルドに付いてしまったのだ。
(周りの人たちなんか怖いし、早く離れたい!)
「おい、そこのガキ」
「はい!!すみませんでした!!」
俺は、おそらく盗賊である男に有無を言わさず全力で走って逃げた。
逃げてから思ったのだが、盗賊ギルドの場所が分かったのだからそこからは地図を見て行けば冒険者ギルドに行けたのだとその時反省した。だが、逃げた方向に『すずめの里』という品の良さそうな宿屋があったので、そこで休むことにした。
宿屋の食堂で夕食を食べた後、俺は部屋で荷物の整理をしていた。
「…はあ、なんだか街って大変だな。」
そう呟いて手元の地図を見た。
地図が書かれたのは三ヶ月前なのだか、もうすでに地図に無い店の名前が沢山あるのだ。
それだけならまだしも、この地図には全ての道が書かれておらず、その上存在しない道まで書かれているのだ。
「こんな地図で迷子にならない人いないよ。」
そう言って別の地図を出した。この地図は宿屋の女将さんが食堂で地図とにらめっこしていた俺に冒険者ギルド迄の道を書いてくれた物だ。
地元の人が書いた為か、もしくは女将さんは、普段からこの様な事をしていて慣れているからかもしれないが、かなり正確に書かれていた。
優しい人だったなぁ…と心の中で女将さんの事を思い出しながら地図を片付けた。
次に財布を取り出した。
財布の中身は、村を出る時は金貨十枚だった。
だが、馬車に乗った時に乗車料で金貨一枚を支払い、この宿屋で十三泊風呂無し朝夕二食付きの部屋を借りて金貨六枚と銀貨八枚を支払った為、今は金貨が二枚と銀貨二枚まで減っている。
お金も無くなってきたので、明日は冒険者ギルドで登録をした後、装備を整えてから簡単な依頼を受けるつもりだ。どんな依頼を受けようか考えていたら、段々眠くなってきて近くの風呂屋に行く前に寝てしまった。
この世界では通貨が統一されています。
金貨一枚=銀貨十枚=銅貨百枚=鉄貨一万枚です。
感覚的に一円は大体鉄貨一枚ぐらいです。