15 SM挑発
手直し必須の話です。
意外というべきなのか、リリス先輩は思った以上に気さくな人だった。
これほど柔らかい物腰は、一つ年上なだけで身につくものなのだろうか。身近にこんなできた人がいるなら、是非とも烈姉ちゃんには見習ってほしいと思うのだが。
まぁ、無理……だよね。
「昔、よく遊んだ」
「うふふ、ベリアルちゃんとわたくしは幼馴染なのよぉ」
「(こくり)」
「へぇ、そうなんだ。でも齢が一つ違いだし、やっぱり年功序列でリリスさんがお姉さん、リアが妹ポジションって感じだったのかな?」
「(ふるふる)」
「そうよねぇ……どちらかというとベリアルちゃんが、S。わたくしが、Mのポジションだったわぁ」
「ふぅん……仲良しだったんだね」
『…………(ボケの嵐にツっこみたいオーラ)』
うん? どうしたんだろう、エルとウロちゃん。何か、身体がぷるぷる震えてるけど。風邪ひいたのかな。
「はぁ……どうでもいいが、そろそろ始めるぞ馬鹿共」
『あの人(者)たちと、ひとくくりにしないでください(するでない)っ!』
失礼だね君たちは。
○●○●○●○●○●○●○●
「涼。オマエは魔方陣……この円の真ん中にいけ。あぁ、理由? んなもんどうでもいいだろ」
と、理不尽なジャイアニズムを振りかざす烈姉ちゃんの前に、哀れな子羊な僕は為す術などなくしぶしぶと言われた通りにする。
負けたんじゃない、これは一時撤退するだけだっ!
と、口にするとぶん殴られるので中止する。暴力反対。
「――で、肝心の武器とやらはどこにあるのじゃ? この後に及んで『ない』とは言わせんぞ」
「今はないな。だから、これから『召還』するんだよ」
ぴくり、とウロちゃんの眉がわずかに動いた。
「武器を……召還、じゃと? そんなことが可能なのかえ?」
「可能だ。加えて質量、座標、状態の可不可に関わらず『召還』ができる。唯一のデメリットは転換の代償としての魔力がとんでもなく大きいことだが、こいつの場合は気にしなくていいからな」
「こやつの場合は確かにそうじゃな。じゃが、武器にも大なり小なりある。もし、戦力にならんようなモノが出てきたらどうするつもりじゃ?」
訝しげに問うウロちゃんを見て、烈姉ちゃんは二ヤリと笑みを浮かべた。
「残念ながらそれは、ない。確固たる証拠と証人がいるからな――ここに」
「…………どういう意味じゃ?」
「あぁ、そうだな……『オマエの親父を滅した竜殺しの聖剣も』といえばわかるか?」
「?!」
「ちょ、ちょっと烈さん! 本人を前にしてそんなこと――」「……言いすぎ」
今度こそ、ウロちゃんの顔は驚愕に彩られた。虚をつかれたのか、文字通り開いた口が閉まっていない。
エルとリアは烈姉ちゃんを非難するが、時すでに遅し。
「この魔方陣は『転換魔法』。物と物、人と人を天秤にかけて移動させる魔法だ。大昔の竜伐神ペルセウスの手に竜殺しの聖剣があったのはこいつのせいらしいからな。もしかしたら、またそれが出てくるかもしれない――ってのはどうだ?」
「…………」
俯くウロちゃん。しかし、悪魔(烈姉ちゃん)はその手を緩めることなどなく。
「――びびったか、竜王のお嬢ちゃん?」