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「ハッ、ハッ!」
ハイオークが笑った。
通り過ぎたブラックウルフを振り向かせる。
「そのチャチな魔法で、もう1度耐えてみろ!」
回復の魔法をかけるが、気休めだ。
同じ攻撃を今1度受ければ、身体が保たない。
「ハーッ!」
ハイオークがブラックウルフを突撃させる。
もはやこれまでと思った、その時。
空中を輝きが走った。
「ぬ!?」
非凡なる戦闘センスで、ハイオークはブラックウルフから飛び降りた。
閃光が戦狼を切り裂き、地に這わせる。
飛来した刃は旋回し、放った持ち主の左手へと戻った。
「ルミナリア!?」
ゼオが彼女を呼ぶ。
現れたのは確かに、妖精王国の騎士ルミナリアだ。
美しい金髪と容姿。
鍛えられた、しなやかな肉体。
ブラックウルフを倒した光翼鳥の刃ファルシヴォルを左手に、光冠石の剣レガリスを右手に携えている。
彼女は、ゼオを守る位置に立った。
「どうして、ここに!?」
信じられなかった。
「スティールマインのドワーフたちが参戦してくれた」
ルミナリアが答えた。
彼女の声は澄み、落ち着いている。
「それで、こちらに戦力を割けた」
駆けつけたエルフたちの弓矢が、オークとハイオークの軍勢に襲いかかる。
ゼオは安堵した。
「ハッ、ハッ!」
ハイオークが戦斧を構え、ルミナリアに迫った。
「お前はオレを楽しませてくれるのか?」
美しい妖精騎士も、両手の武器を構える。
「ルミナリア」
彼女が名乗った。
ハイオークの双眸が、ギラッと光る。
「バルガス」
名乗り終えたハイオークは戦斧を振り回し、打ちかかった。
流れるような動きで、ルミナリアのレガリスが敵の刃を受け止める。
「ハッ、ハッ!」
笑ったバルガスは太い両腕の筋肉を漲せ、すさまじき膂力で妖精騎士の剣を押した。
が、その最中、ハイオークはルミナリアが両手でレガリスの柄を握っていることに気付き、ハッとする。
「ぬおぉ!」
振り返り、いつの間にかルミナリアの左手から放たれた、後方より迫るファルシヴォルを迎え撃たんとするが、妖精騎士はその隙を見逃さなかった。
素早く振るったレガリスの刃が、バルガスの喉を断つ。
「ガハッ!」
ハイオークは最後にニヤッと笑い、その場に倒れた。
ファルシヴォルが、ルミナリアの左手に帰る。
「ルミナリア!」
駆け寄ったゼオに、彼女は静かに頷いた。
エルフ軍の攻撃は、敵を森の外まで押し返した。
オーク軍は退却を始めている。
ゼオは額の汗を拭った。
今ごろ、回復の呪文が効いてくる。
「助かったよ」
「まだ終わりじゃない」
ルミナリアの表情は硬い。
「あれは敵の一部にすぎない」
「この攻撃は序章だと言うのか?」
ルミナリアは答えない。
撤退する敵軍を、美しい瞳で見つめている。
「それが本当なら、気が休まらんな」
ゼオは、ため息をついた。
ルミナリアが、彼に顔を向ける。
「人間たちの聖騎士団も合流する手筈だ。私も」
彼女は両手の武器に視線を移した。
「女王様から賜ったレガリスとファルシヴォルで、全力で戦う」
「そうか…そうだな」
頷いたゼオは、少し間を置いて「ん?」となった。
「もしかして、励ましてくれたのか?」
ルミナリアは答えず、ただ、ほんの少し微笑んだ。
ゼオは自分の回復魔法よりも癒された気がした。
戦いはこれより激しさを増し、妖精騎士ルミナリアの活躍譚は、まだ数多ある。
しかし、それを語るのは、またの機会にしよう。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/




