Part 4
ジェード帝国北西国境、1月10日 午前8時20分
レムナントの数が増えるにつれ、まばゆいばかりの青い月は輝き続けた。ジェード帝国軍は、マンバリングからSRPを結ぶ幹線道路の外側、幹線道路の東側の広い場所に、大量のレムナントを誘い出すことを決定した。DDSによって別のものに改造されたにもかかわらず、ジープニーなどの車両がまさにその道路を賑わせ始めている。
DDSは幻影を作り出すだけのシステムであり、実際に存在するものを消し去ることはできない。住民の認識をある程度変化させる程度だが、それが最善であり、いや、唯一絶対の手段だった。例えば、車は今やスタイリッシュな輿として、古き良き中国のイメージを彷彿とさせるジェード帝国にふさわしい乗り物として見られるようになった。
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エースは十三花と共に、アルビオンに侵入しようとしているレムナントをジェード帝国領内のSRPの空き地に誘い込むという、同じことをしようと考えた。キアとジェラールは、存在しないレムナントの攻撃を受けても授業は中断されるため、戦場から退いた。エースは二人の心を落ち着かせるため、夜戦の主役となる二人に学校で療養するよう命じた。
アルビオン領に侵入したレムナントに対抗するため、アルビオン十三騎士団の筆頭騎士「ランスロット家」が派遣された。エースの国境警備隊と同じくわずか3名からなる部隊だが、2人とも熟練の戦闘員であり、総力戦を得意としている。さらに、モルガナ自身を含む6名からなる「モルガナ・ラ・フェイの魔術師部隊」の援護も受けている。この魔術師部隊は、魔法を行使し、多数のサーバントを召喚する能力を持つ。
一方エースは、レムナントのアルビオンへの侵入を阻止するよう国王から命令を受けており、これが彼と十三花にとっての最優先事項となった。使者は保証として、1月12日(1月)中に第三騎士団「ガラハッド家」と第八騎士団「レオネル家」を援軍として派遣し、レムナント討伐を支援すると告げた。
戦いが長引くにつれ、十三花たちは肉体的にも精神的にも疲労の兆しを見せ始めていた。彼らの動きは今のところ完璧だったものの、従来の一対多の直接対決という戦術ではなく、パーティー形式の戦闘を多用するようになっていった。この戦術の変化は、彼らの攻撃に何らかの欠陥があったことを示唆していた。
「私が指示を出す。お前たちはそれに従うのだ。」
月明かりに照らされて銀色の長い髪を一層輝かせる十三花騎士団のリーダー、エクレールは、レムナントとの戦いを一時中断し、騎士団の目となり、その鋭い洞察力で敵の攻撃の隙を突く指示を出す。深紅の瞳は、遠くまで見通す鷹のようだった。
エースは彼女たちの存在を嬉しく思った。エースは微笑みながら、彼女たちの見えない、死角に居合の攻撃を集中させた。
レムナントは戦場を制圧し、四方八方から攻撃を仕掛けてきた。荒い息遣いと冷や汗が戦場を覆い尽くす中、エースは十三花と共に、ほぼ10時間にわたりレムナントと戦い続けていた。第三騎士団と第八騎士団からの援軍が来るまで持ちこたえれば良いと考えていた。しかし、言うは易く行うは難し。十三花と共に、エースは全身を蝕む疲労を感じていた。
アルビオン王からの知らせを受けてから5時間ほどが経過したが、レムナントは衰える気配を見せず、ついに十三花の一人が倒れた。十三花の末娘プリムラが倒れ込み、尻もちをついたのだ。
隙を突いた二人のリザード・ナイトは、尻もちをついた無防備な少女騎士に襲い掛かろうとした。
雷神雷光
エースは不安から、無防備になった側面から二人のリザード・ナイトを焼き払おうと立ち去り、もう一人の十三花も若い仲間のプリムラに群がった。
「ごめんね、エクレール姉さん。もう限界なの」少女は妹に謝りながら涙を流し、完全に意識を失った。
エクレールは子供のようなプリムラに微笑みかけ、安心させるような声をかけた。「大丈夫、あとは任せてくれ。ルツェルン……」 フリルのメイド服を着た銀髪の長髪騎士は、眼鏡をかけたメイド騎士を呼んだ。
「プリムラを近くの泉に連れて行って、療養させてくれ」
プリムラを心配するルツェルンも頷き、幼いプリムラを戦場から運び出した。エースは残りの王騎士を率いて、三回クリックを繰り出し、近くのレムナントの首をはね、ルツェルンとプリムラの安全な戦場脱出を助けた。
12人になった彼らは、疲労した体への負担を軽減し、互いに助け合って敵の陣形を崩すため、3人ずつのパーティを組むことにした。
「これはまずい」
「増援は間に合わない」
「…すべきだろうか?」
エースは現状の窮状を想像し、もはや避けられない事態を想像していた。メイド服の騎士たちのことを心配していたのだ。彼女たちはあれだけの数の敵に対抗できるだけの力を持っているにもかかわらず、エースは彼女たちを守らなければならない女性として扱い続けていた。
キアとジェラールの出遅れで、エースの部隊は疲弊しきっていた。最悪の場合、壊滅してしまう。エースは一人で大群と戦わなければならないとしても、せめて女性騎士たちを避難させてあげたいと思っていたが、それももはや不可能だった。A級竜族の六人が戦闘に加わり、平原に浮かぶ六体の蒼翼飛竜は、まるで同じ場にいる他の青龍族のレムナント族の士気を高めるかのように、荒々しい叫び声を上げていた。
エースの瞳の色が一瞬変わる。これが十三花の限界であり、このままでは死がすぐそこまで迫っていることを悟った。思い切った策を講じようとしたまさにその時、矢の雨が青翼竜たちへと降り注いだ。
「ど、どうか恩返しさせてください。」
戦場に吃りながら姿を現した少女は、他でもないジェード帝国の皇后だった。彼女は忠臣や将軍たちと激しい議論を重ねた末、この若き騎士の戦いに加勢することを決意したのだ。