3 オイビーの魔法
オイビーの魔法の属性を見て見ると、光に偏っていた。
総ての属性は持っていたが、神殿で光を使っていたせいか、光のレベルがかなり高い。これなら、光の結界が張れる。
「オイビー今教えた結界を常に張っておけよ。」
そうすれば少しくらいの魔物との接触ならば問題なく防げる。後は魔力がどれくらい持つかだ。
暫くオイビーの戦いを見ていたが、魔力が切れかかってふらふらしてきた。
キラはオイビーを休ませる為、自分の結界に入れておく。
「これって、凄く魔力を使う魔法だね。オイは三時間が精一杯だ。」
闇がもう少しあれば良かったのに。まあ、普通はこんなもんだろうが、これからキラとずっと一緒に旅をするんだ。もう少し強くなって貰わないと危険だ。
「オイビー、少し目を開いていて。」
キラはオイビーの魔石から土の属性を少し抜いて、闇を入れた。
「今度はもっと長く魔力が持つと思うよ。」
「今、なにをした?何だか、魔力が直ぐに回復したんだけど。」
「闇の属性を多くしてみた。闇があれば、周りから魔力を吸収できるんだ。」
「それって、ロマゴの秘技?」
「まあな、内緒だぞ。」
ロマゴ国の神殿長スタントンには誰にも教えてはいけないと言ってある。
闇属性をもっていて、更に繊細な操作が必要な手技だ。見よう見まねで試す奴がいるとも限らない。闇は、下手をすると本人の魔力や体力を吸収して仕舞う恐れがある。危ないので、スタントン以外には誰にも教えていない方法だった。
さあこれで、オイリーの魔力は上がった。魔力が持てば他の属性もどんどん試せて、レベルアップするだろう。
異界の門に潜って一ヶ月してオイリーのレベルもかなり上がってきた。
ゆっくり階層を巡って、キラは手を出さずに総てオイリーに任せている。
もう直ぐ最下層に着く。
【ここの天井を、見て!】
ガイアが、天井を指さす。天井が高くなっている場所だ。キラは浮遊魔法でゆっくり上がっていった。
十メートルほど上がった場所に横穴があった。これが秘密の通路か。
【これが秘密の階層か!キラ早く行って見よう!】
相変わらずゼロはせっかちだ。オイビーを抱いて浮遊魔法で横穴まで連れてくる。通路を進んで行くと、明らかに周りの空気が一変した。
【ここからは、超難関、もう一つの最下層よ。最後にはお楽しみが待っているわよ。】
「なんだって、ガイヤ!オイリーにはまだ無理なのに。もう後戻り出来ない、酷いじゃないか!」
【キラよ、お前がいれば大丈夫じゃ。何をビビっておる。サッサと行け。】
「キラ、オイには無理って?誰と話している?」
キラはゼロや、ガイアのことを話した。そしてこれからは超難関エリアになることも。それを聞いたオイビーは少し震えながら、
「オイは絶対キラから離れない。」
キラは常時、強く、広く、結界を張って、オイビーを後ろに庇いながら進んで行く。ここは砂漠の異界の門と同じグランド型だ。太陽まであってまるで地上にいるような錯覚を覚えた。
襲ってくる魔物は総て巨大だ。キラの結界に触れないギリギリに、用心深く陣取る狡猾さもある。
「魔物が考える力を持っているのはやっかいだな。」
「キラ、オイが倒して見てもいい?」
「良いよ、遣ってみろ。結界の中なら安全だ。好きなように攻撃して。」
結界の中では絶対安全だと、安心したのかオイは、キラの周りを囲んでいる巨大なトロールを光の渦に巻き込んで細切れにして行く。
渦の中からトロールの肉片と魔石がゴロン、ゴロン落ちてきた。
「おっきい!凄いよこれ。今まで見た中で一番の魔石だ。見てキラ。」
「ああ、そうだな。竜と同じくらいだ。密度も濃いな。」
だが、キラは不思議だった。ここでは魔石と一緒に素材まで取れるのか?普通の魔物のようだ。本当にここは異界の門なのだろうか。
【ここのトロールはかなり大きい。オイビーの魔法が通じるようになったのは良かった。以前のオイビーには無理だったぞ。】
「!今の声・・・誰の?」
オイビーにも聞こえるようになったみたいだな。
「ゼロと言う闇に落ちた賢者の残滓だ。ほらこれ。」
オイビーにポケットから真っ黒い魔石を出して見せた。
「へえ、これが賢者の魔石?キラとは色が違うね。キラのは金色だもの。闇に落ちればこうなっちゃうんだ。オイは闇に落ちないように気を付けるよ。」
【・・・・】
「さあ、これからは走って行くぞ!早駆けを使って抜けるぞ。」
広い階層には地竜や、飛竜もいたが無視して進む。遠くに異界の門が見えてきた。これで終わらせることが出来る。
門をくぐると、そこにいたのは、黒い大きな翼を生やしたものだ。
椅子に座ってじっとしている。以前、ゼロの作った異界の門にもこんな光景があった。もしやこいつは、魔人ダイダロス?