プロローグ
キラは二十三歳になっていた。
各国を回り魔法使いを増やし、魔石持ちを見付けては見守ってきた。
魔石持ちの生れやすい地域が分かってきた。魔力が溜まりやすい窪地に住む住人から生れる傾向があった。その場所を尋ねて行けば、大概過去に生れたことがあるのだ。殆どは死んでいた。生れて直ぐに親に・・・。
キラが見付けることが出来たのは、親が育てて居る場合だけだったが、キラが話を聞けば、直ぐにでもキラに押しつけてくる。キラは、そんな子供を各地の神殿で保護して貰った。キラのように額に魔石を持っている子供はいなかったが、5人ほどは保護することが出来た。神殿では大切に育てている。
彼等にとって魔石持ちは、今後の神殿を支える大事な魔法使いなのだ。
「魔石持ちが生れやすい地域に周知しておけば、今後生れて直ぐに殺されると言う事は無くなります。」
それからは、親の方から、子供を連れてくるようになった。
もうキラが探して歩く必要はなくなった。
そんなことをしている内に、キラは聖者として顔が知られて仕舞うようになった。
もうキラは童貞では無い。
各地を回り始めて直ぐに術を解いた。その後冒険者仲間に連れて言って貰った、娼館で初めてを経験した。
何人かと経験済みだ。それは愛があるかと言えば嘘になる。男としての欲求を満たした結果のことがあったことは確かだった。
相手は、優しくキラを導くこともあれば、キラに執着してつきまとわれたときもある。そんな人は大概、国の意向でキラを取り込もうとしているのだと分かった。
「貴方は、何時も行って仕舞うのね。今度はいつ帰ってくるのかしらね。私はもう待つのは辞めにした。私は安定した人を見付けてその人と生きるわ。」
暫く付き合っていた彼女にそう言われてキラは、
「そうだな、僕はもうここには来ないよ。幸せになってくれ。」
そう言って別れた。
「僕は不毛なことをしているのだろうか。」
【男とはそんな物さ。年を取ってから気付くのさ。あの時が最高だったてな。】
【マア、そうなの?男の方ってそう言う生き方が良いと考えていたのね。女は子供を育て一緒に泣き笑いして生きて行きたいのよ。キラはそう言う生き方には興味は無いの?】
あれから何故かガイヤが付いてくるようになった。
「家庭を持つ事か。根無し草のような生活は、結婚には向かないだろう。」
聖者とは何だろうか。執着しないで、傲慢にならず、清貧に生き、ただひたすら、悲しんでいる人に寄り添ってきたが、今は一人の女も幸せに出来ない自分を空虚だと感じていた。
「遣ることは遣った。もうこの世界では魔法使いを増やす必要も、魔石持ちを保護する必要も無くなった。師匠の所へ帰って、師匠の最期を看取ろう。」