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レオナルド・カーターの歯車

悪らしいこと主人公全然できてないです。

頑張ってもらいたいですね。


あの女との婚約は親の身勝手なものであった。

金、金、金。この貴族社会では特に金は大事であった。

見栄と格式を守るための武器として金は必需品であった。領主としての才がない父は次第にふくらむ赤字をなんとかしようとフーヴァー家に融資の依頼をした。


そこで目を付けた商材は「自分」であった。

レオナルド・カーター。これが自分の名前だ。なんとも平凡だろう。

見た目はそう悪くないのだが、いかんせん心根がネガティブである。腐るのも無理はないだろう。

経営に失敗した両親が格式高い貴族に頭を下げにいって帰ってきたら「自分の将来」が決められていたのだ。これが貴族のやり方なのだと実感した。


実際に会ってみた小さな婚約者は気弱で静かでいかにも世間を知らない顔をしていた。

自分の顔をみて最初はにこやかな女の子らしい顔つきだったが、会うたびに顔の曇りが目立った。

こんな弱小貴族が嫌に決まっている。

「もういい帰るよ」と言い放ち、その場を去ろうとするとエレナは泣きそうな顔で自分の手首をつかんだ。あまりにも力が入ってない。ただ手を添えただけだろか。

小さな声音で「い、いかないで、たすけて」と震えている。しかし、それはこっちのセリフだ。


勢いよく彼女の手を振りほどいた。

そして自分レオナルド・カーターは冷たい視線で彼女に言った。


「お前みたいなやつが俺より偉い貴族なんて反吐がでる」


その時彼女は目を最大限に大きくし、ぼたぼたと涙を流していた。

それを見ていた彼女の母親が「あらあらそんなにお困りでしたのね」と金品を渡し始めたのはこれがきっかけだった。金と金銀を渡されている以上カーター家から破談などご破算にする訳がなかった。

余裕が生まれると父に婚約を解消してほしいと声を上げたが、まだ支払いなどで車をおいていかないといけないと首を横に振られた。

このやり場のない虚しさを何も言い返してこないあの女にぶつけることなぞ問題ではない。

それからレオナルド・カーターはエレナ・フーヴァーに辛辣な態度を取り続けた。






* * * *



「…は、婚約解消、ですか…?」




急遽呼び出されて急いで向かった父の書斎で父は項垂れていた。

資金源の供給が絶たれた。

さらにはエレナ・フーヴァーがフーヴァー家から離縁し、ノーストラ家にはいったため現在の婚約に関しては白紙とさせていただくと記されていた。


「父上!!はやく抗議文を出しましょう!!低い爵位ですが、これは不当な扱いです!!上位貴族だからってこんなやり方は間違っている!!」


なにより彼女と最後に会ったのは彼女が死にかけていたところを救い、屋敷から追い出したことが尾をひいた。これは罪悪感ではない。

ノーストラ家が何だか知らないが彼女がこの家に恩恵がある以上はそれなりの対価が欲しいのだ。

静かに聞いていた父は一度視線を合うと、大きく呼吸した。


父はレオナルド・カーターの頬におもいきり拳を叩きつけた。


衝動で飛ばされ書斎の壁に体を預ける。叩かれた頬を自身の手で押さえあまりの驚愕に言葉が出てこない。



「ノーストラ家を知らないものがそのような口をだすな!!!!!フーヴァー家と今後一切の縁を切る。そして、お前も当面は学校の寮に行け。騒ぎを立てるないいか。3年だ。3年は戻ってくるな」



この日初めて本気で叱る父に圧倒された。

口答えする隙もなかった。あっという間に学園に戻り一人で暮らすスタイルになった。手紙は誰からも来なくなってしまった。招待状ですら来ないのだ。

日に日にレオナルドの鬱憤は溜まっていった。


変化は訪れた。

急遽新入生が新しい学年で来たらしい。しかも飛び級だそうだ。

さらにプラチナブランドの光沢が美しい綺麗な少年がきたらしい。

一目見ようと野次馬がいるが、高身長の自分はその人物を眺めることができた。




「---・・・・・・・!!!!!!!」





―――あいつは、あの、フーヴァー家のルド!!!!エレナの弟!!!!!






レオナルドは気が付いたら彼にむけて走っていた。

周りを見ていなかったのだ。ルドの回りには王家が派遣した王立騎士団の護衛生徒が専属でついているということに気づいてなかった。

女性らの悲鳴とレオナルドの心の底からの恨みを募らせた唸り声がルドの耳に入った。

初めてルドはエレナの元婚約者と対面した。


ルドは大変人気な人物であった。

姉、エレナの言った「天使みたい」は溺愛の言葉ではなく愛情と真実を混ぜた発言なのだ。

神々しいプラチナブレンド。大きな瞳、すこしくせっけのある髪型など女性も男性もほれぼれするような清廉されたオーラを彼はまとっていた。


そんな彼のもとに一人の子爵の貧乏貴族界隈の男が狂ったような形相でルドに向けて暴君を働こうとした。すぐさま騎士団の護衛生徒がレオナルドの身柄を捕獲した。

突如きた痛みに父から殴られたときを思い出し、それらもすべてフーヴァー家が悪いと判断したレオナルドはさらに唸るような声音を呪詛のように吐き出した。


「エレナのせいだ、あいつのせいでおかしくなった」


騎士団の生徒に案内されその場を離れようとしてたルドがレオナルドの発言にピクリと動きを止めた。

これ見よがしにレオナルドは声を荒げた。


「おまえは見捨てられたんだ、エレナにな」

「ははははは」

「あいつはいつも鈍くさい華のないやつだ、迷惑ばかりかけて」

「エレナに捨てられたんだろう!!??なあ、ルドよ!!!」


取り押さえられ身動きは取れないが、嫌みぐらいは言えるとレオナルドは壊れた思考回路でそう考えた。

実際にルドは足を止めた。

はは、ざまあみやがれ。とレオナルドは口角を上げた。

ルドが戻ってきたらまた罵ってやろうと考えていると、背を向けてたルドの顔だけ振り返るように動いた。


一体どのように泣きわめくだろうか。

それとも怒りで顔があかくなっているだろうか。


広がる妄想に期待を寄せてレオナルドは振り向こうとするルドの視線に目を向けた。




















「あ」










果てしない


果てしない絶望の色が見えた


あれは、なんだ?


口角はあがっていない、視線も全然普通にみえる、が、瞳が語ってない。

寒気がする。これはなんだ。見てはいけないものをみてしまった気がする。

なにも表情のない暗闇のような視線だった。

まるで踏みつぶした蟻を見下ろすような表情だ。怒りすらないあの表情になにが意味あるのだろうか。

レオナルドは恐怖を覚えた。

気が付いたら騎士団の連中もルドも離れていた。あの視線からのぞく瞳が夜な夜な悪夢のように浮かぶ。

ずっと見続けられているようなそのような錯覚現象。

手足が震えてきた。




レオナルドはその後二週間で憔悴し、静かに息を引き取った。












ご拝読ありがとうございました。


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