変化
双子の変化に最初に気付いたのは母親のアンナだった。
娘たちはその境遇もあってかいつも引っ込み思案でおとなしく、家の手伝いもおずおずと手を出してくるぐらいであったのに、突然「いつも大変でしょう?私たちにも手伝わせてね」なんて言ってくる。
明るくなった…とも違う気がするが、どうしたというのだろう。
―そういえば、村人たちが旅の魔道士様がいらしていると噂していた気がする。
「あなたたち、魔道士様に会ったりした?」
母の言葉に双子は顔を見合わせ、にっこり笑い合った。
「うん、会ったよ!」
「とっても綺麗な人だった!」
その嬉しそうな声色にアンナはホッと息をつく。
今となってはあまり多くない魔道士という存在。滅多に会えるものではない魔道士に会えて、それがまた美しい人だったなら気持ちも明るくなるというものだ。
娘たちの変化をそう受け取ったアンナの袖口をグラシアがくいくいと引いた。
「ねぇ、お母さん」
グラシアは、何か言いたげな目で母を見上げている。
アンナが首を傾げると、グラシアは何かを思い起こすように目を伏せながら言った。
「魔道士様が仰ってたの。私とお姉ちゃんは在るべくして双子で生まれたって」
アンナは言葉を失い、目を見開いた。ミルダが頷き妹の言葉を引き継ぐ。
「私たちは、神様の罰なんかじゃないって」
アンナは唇を震わせ、ただ娘たちの顔を見つめていた。双子がそんな話をするのは初めてで、驚きのあまり思考が停止してしまう。
やはりつらい思いをさせていたのだ。この子たちがまだ小さかった頃に、村人たちがなぜ自分たちにだけ冷たいのかとあまりに泣くので双子の言い伝えについて聞かせたことがある。黙っていてもどこかで知ってしまうだろうと思って話したが、小さな心に傷を残してしまっていたのだ。
二人の娘を強く抱きしめ、アンナは「ありがとう」と声を震わせた。