理解
夜の帳が降りる中、グラシアは一人で静かに窓辺に立っていた。村のかすかな灯りが遠くにちらちらと瞬いているが、どこか冷たく、彼女には遠い世界のように感じられる。周囲の人々から投げかけられる視線や言葉が、昼のうちにあったことすべてを思い出させ、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
「なんで……私たちがこんな思いをしなくちゃならないの?」
グラシアは拳をぎゅっと握りしめ、悔しさと悲しみが入り交じった複雑な感情が押し寄せてくる。どれだけ叫んでも、訴えても、変わらないどころか、周囲の反応はますます冷たい。彼女は自分の怒りと悲しみを持て余しながら、それでもどうにかしたい気持ちを抑えきれず、心の中で叫ぶ。
「これじゃ、何をしても無駄なの…?」
姉のミルダは願いを叶えてもらってからずっと周囲の村人に親切にしている。困っている人には手を差し出し、感謝されることがなくてもそれに不満を唱えることもない。自分たちはもう言いたいことを言うことができる。ミルダが不満を口にしないのは、ミルダ自身がそういう不満を感じていないということなのだろうとグラシアは考えていた。
だがそれでも、そんな優しい姉への態度を、村人たちは改めようとしない。古い言い伝えがあるから、大人たちに言われているから、誰もがそんな言い訳で距離を取ろうとするのだ。
自分はミルダのように自分たちを悪意の目で見る人間にまで優しくしようとは思えない。ミルダの気持ちも村人の気持ちも理解できないからだ。
ふと、グラシアはハッとする。
「理解…すればいいのかな?私も…」
村人は自分たち双子を「凶兆の兆し」として嫌っている。わざわざ罵声を浴びせたり、嫌がらせしたりするのは、彼らが自分たちを成敗するべき悪だと思っているからなのではないか。悪い魔物を退治する勇者の物語のように、正義の気持ちで敵を攻撃し、排除する悦びに浸っているのではないか。
自分も同じようにすれば、村人の気持ちが理解できて、この怒りも多少はマシになるのではないか。
ぐるぐると渦巻く思考がグラシアの脳裏を支配していく。
(敵…悪者……私にとっての退治すべき悪い魔物は…)
グラシアの心には、彼女の行動を制御するフィルターはもうない。
そっと上着を羽織り、グラシアは誰にも気付かれないよう暗い外へと出て行った。
周囲を包む静寂が、夜の中で響く彼女の足音をかき消し、ただ冷たい夜気が彼女の決意を飲み込むように漂っていた。




