聖騎士、出陣
「報告ッ!! 陛下、緊急事態です!」
重厚な扉を蹴破らんばかりの勢いで、一人の伝令兵が飛び込んできた。
その体は泥と返り血に汚れ、呼吸は激しく乱れている。
「辺境のルベリス村が……賊集団『猪突の牙』の襲撃を受けました!」
「な、何だと……!?」
老王が玉座から身を乗り出す。
広間に、冷たい緊張が走った。
「奴らは村に火を放ち、略奪の限りを尽くしています! 男は皆殺し……女たちは生け捕りにされ、奴らの慰み者に……っ!」
「……卑劣な」
隣にいたヴィクトリアが、絞り出すような声で呟いた。
その拳は白くなるほど握りしめられ、騎士の誇りが怒りに震えているのがわかる。
「陛下! 私に出陣のお許しを! ルベリスの民が、今この瞬間も地獄を味わっているのです!」
だが、正規軍を動かすには軍議と手続きが必要だ。
それでは間に合わない。
俺は一歩、前に出た。
「ヴィクトリア。一人で行かせるわけにはいかない」
「刃殿……?」
「俺も行く。この力……民の涙を止めるために授かったものだと信じたい」
俺は努めて静かに、重厚な声で告げた。
実際、この力――「覇射」が何のためにあるのかは、俺自身にもまだ分からない。
だが、目の前で絶望している民がいるなら、動かない理由はなかった。
ヴィクトリアが、潤んだ瞳で俺を見つめる。
「……かたじけない。貴殿がいてくれれば、百人力だ」
俺たちはルベリス村へと急いだ。
俺は乗馬の経験がない。
そのため、ヴィクトリアの愛馬に同乗させてもらうことになった。
「しっかり捕まっていろ、刃」
「あ、ああ……悪いな」
ヴィクトリアの背中に腕を回し、その細い腰を抱き寄せる。
鎧越しに伝わる彼女の体温。
馬が駆けるたびに、彼女の豊かな肢体が俺の胸に押し付けられ、甘い香りが鼻孔をくすぐる。
戦場へ向かう緊迫感の中、俺は必死に昂ぶる身体を律し、前を見据えた。
馬を走らせ、村に到着した俺たちの目に飛び込んできたのは――地獄だった。
燃え盛る家々。
笑い声を上げる『猪突の牙』の賊たち。
その中心、広場に一人の美女が引きずり出されていた。
「ひっ……ああ、やめて……っ!」
村の若き彼女は、服を無残に引き裂かれ、豊かな肢体を泥に汚しながら、首領と思わしき大男に組み伏せられていた。
俺は静かに馬から降り、体内に渦巻く「覇射」の昂ぶりを一点に集中させた。




