8.開いてるよ
「よし」
身支度を整えて、登城する。今日も元気に頑張ろう。研究部屋の前に行き、扉をノックする。
「開いてるよ」
後ろから声をかけられ振り向くと、ライオネルさんが立っていた。
「正確には、開いた、だけど」
「? 魔法でも使ったんですか?」
「僕と言うよりも、あんたがね」
??? 私には魔法を使った覚えなど一度もない。昨日は魔法を暴走させたけれど、今日はまだなにもしていないはずだ。
「この扉」
コンコン、とライオネルさんが扉をたたく。
「全属性持ちしか開けられない魔法がかかっているから。つまり、僕とあんた」
「そうなんですか!?」
「そうなんです」
へぇー、そんな魔法もあるんだ。
「結界魔法の一種の応用だね。ちなみに、結界魔法は黒と白両属性が使えれば、使える」
なるほど。それにしても、今日のライオネルさんはよく話すなあ。昨日はどちらかというと、無口なイメージを受けたけれど。
「とりあえず、中入ろうか」
そう言われて、頷く。室内は、水浸しなんてことはなく、ライオネルさんが言っていた通り、昨日と全く同じ姿だった。
「ライオネルさんは大魔法使いですね」
「? そうだけど?」
「あっ、いえそうではなく。とてもすごい魔法使いですね」
大魔法使いという称号じゃなくて、あなた自身がすごい人なのだというと、ライオネルさんは笑った。
「まぁね」
返事とは裏腹に、ライオネルさんの耳は赤い。ライオネルさんは、可愛い人なのかもしれないな、と思っていると、机にトン、ととても小さなコップをのせられた。
「……これは?」
「まずは、このコップを水で満たすところから、イメージしてみて」
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