4.僕の負け
翌朝。陽光で目を覚ます。視線が集まるなか朝食をとり、昨日リオンさんに渡された地図に従って歩く。王城の中はいりくんでいて、少しでも気を抜くと迷ってしまいそうだ。
方向に気を付けながら進むと、ようやく目的地にたどり着いた。扉の前に衛兵はいない。大魔法使いは、やっぱり自分で身の安全も守れるということかしら。
そう思いながら、扉をノックする。……返事がない。もう一度ノックする。……返事がない。
まだ、出勤していないのだろうか?
そう思いながら扉に手をかけると、ギィ、と重い音をたてながら、扉が開いた。
「!」
どうしよう。勝手にはいるのはまずいわよね。
でも、このまま立っていても仕事はできないし。
ぐるぐると悩んでいると、誰かがやってきた。
「ったく、リオンのやつ。今日から、新人が入ってくるからよろしくやれだのなんだの。いつも勝手すぎるんだよ」
黒髪に、赤い瞳が特徴的な美少年だ。紫の制服には6色のバッチがついている。
……ん? リオン?
「あの、もしかして、ライオネルさん……ですか?」
私がそう尋ねると少年は顔をしかめた。
「そうだけど? なんか用?」
あんまりにもつっけんどんな言い方に言葉につまっていると、少年──いや、ライオネルさんは私の姿を上から下まで眺めた。
「あんたがナターシャ?」
「はい。そうです」
「ふぅん。扉、開けれたんだ」
! そうだ! 扉を勝手に開けちゃったんだったわ。怒られる? 叱責を覚悟して、ぎゅっと目を閉じると、何かを頭の上にのせられた。
「面倒だけれど、まぁいいや。扉を開けられたんなら、ひとまずリオンの言うことも嘘じゃないらしいし」
「……え?」
驚きながら、頭の上にのせられた本を取る。
「それ、子供向けの魔法の教科書。とりあえず、今日はそれを読んでおくことが宿題。場所はどこでもいいよ」
そういって扉が閉じられ──。
「……あんたって、見かけによらず強引なんだね」
閉じられようとした扉に右足を咄嗟にねじ込んだ。
「どこでも、なら。ライオネルさんの側でもいいですよね?」
この人の近くにいることは、きっと、魔法を習得する近道になると思うから。
「……わかった。僕の負け」
しぶしぶ頷いたライオネルさんは、扉の中に私を入れてくれた。
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!