3.魔力検査
リオンさんの言葉通り、私は王城の一角で魔力検査を行うことになった。
「おい、検査官」
器具を用意していた検査官にリオンさんが声をかける。
「ライオネル用のやつを持ってきてくれ」
「あれ魔力量がバカみたいに多い人にしか反応しませんよ」
ライオネル。この国の大魔法使いの名前だ。魔法使いとしての最高位に属する人。噂では、すごく高齢のお爺さんとか、反対にめちゃくちゃ美丈夫だとか。あまりその姿を見たことある人がいないから、様々な噂が飛び交っているのよね。
「こいつは、全属性持ちだ」
「えっ!? ライオネル様以来の? わかりました。すぐに持ってきます」
リオンさんにそう言われて、検査官は大きな機械を持ってきた。普通の機械の2倍はありそう。私がすることは簡単で手をかざすだけだ。でも、機械のセッティングが難しくてこうしてちゃんとした検査官と呼ばれる人が必要だ。
「やり方はわかるな?」
「はい」
ドキドキしながら、機械に右手をかざす。すると──。
機械がなった。頭が割れるようにけたたましい音だ。
「……え?」
故障かしら。私が首をかしげると、その背を軽く叩かれた。リオンさんだ。
「おめでとう、今日からお前も魔法使いの仲間入りだ」
えっ、ええええええ!?
私に、魔力があったの!?
驚く私とは対照的に、リオンさんも検査官も冷静だった。
「流石は全属性持ちですね」
「ああ。ナターシャ。お前には、明日からライオネルの元で働いてもらう」
ライオネルって、もしかして。もしかしなくても。
「大魔法使いのライオネルさん……ですか?」
私が恐る恐るそう尋ねると、リオンさんは頷いた。
「ああ、そうだ」
ライオネルさん。噂でしか知らないけれど、どういう人なんだろう。そういえば、容姿の噂以外に、とっても冷酷な人だっていう噂もあったわね。そんな人の元でやっていけるのだろうか。
「あのやっばり、私……」
宿屋に戻りたい。そう言い終わる前に遮られた。
「持つものは尽くすべきだ。ましてや、それが全属性持ちならなおさら」
そういえば、属性テストとか。全属性とか。属性ってなんだろう。
「全属性って、なんですか?」
「魔法には属性があって適正がある魔法しか使えない」
リオンさんの説明によると、魔法には、土、水、火、風、黒、白という属性に分類されるらしい。その中でも黒は精神に関わる魔法、白は医療用に使われる魔法だ。私の全属性持ちというのは、全属性に適正があるという意味らしかった。
「とにかく、お前はライオネルの元で働いてもらう。あいつの元で、魔法を学び、我が国の役に立て」
魔法使いは皆王城の近くの寮で生活をするらしい。さすがに大魔法使いともなれば、王城の一室が与えられるみたいだけれど、私は魔法使いになった……というか、見習いだ。服や階級を示す玉も魔法使い見習いのものを与えられた。私がライオネルさんの元で一人前になれれば、上級魔法使いになれるみたいだけれど。
「はぁ」
寮は一人部屋なのが気楽だった。リオンさんにつれられ食堂で夕食をとっている間、注目されているのがわかった。リオンさんによると魔法使いは通例皆魔法学園に通うから、王城で働いている人たちは大なり小なり知り合いらしい。そこに、全く見覚えのない私が現れたのだ。それも見習いとして。注目を集めるのも無理はなかった。
ベッドに転がったものの、環境の変化についていけないわ。だって、私はつい最近まで村で暮らしていて、その暮らしはずっとつづくのだと思ってた。
それがまさか、村を出て、王城で働くなんて。
『君は、もう必要ないんだ』
ロイドに言われた言葉が甦る。魔法使いになれれば、誰かに必要とされる私になれるのかな。今度こそ、誰かの特別な存在に──。
そんなことを考えながら、目を閉じた。
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