第55話 ラーファからの知らせ!
川を下る船旅へと出発した。そこへマーヤに念話が!!
11月10日夜1時(午後6時)、夕食を食べて、停泊している船の食堂から各自の部屋へと入った所だった。
アレク王太子たちとは食堂で分かれた。
彼らは最上階に在る特別室を取っているので、食堂を出て直ぐに在る階段を上って行った。
私たちクラン”緑の枝葉”には1等船室で一部屋が宛がわれている。
部屋にちょうど入った所だった。
頭の中に声が響いた!!
『マーヤ、返って来たよ!』
『・・・!!!』
ラーファ!? ・・・ 念話だ!!
『マーヤ、ラーファだよ、やっと軛から解放されたんだ!』
『あぇ、ラーファ?』
夢にまで聞いた念話の声だ!!!
『そうだよ、ラーファだよ』
『ラーファ!!!、ラーファなの?』
ああ! ラーファ! ラーファ! ラーファ!
『間違いなくラーファさ!』
『ラーファ!!!』
懐かしい母の念話がマーヤに届いた!!
マーヤはただただ泣いた。
号泣が周りを取り巻く皆へ伝わるけど構わなかった。
「どうした!」ダルトさんが泣き続けるマリィーを庇う様に肩に手を当てて聞いてきた。
首を振り振り、心配無いと知らせるが、周りには泣いている事しか分からない。
「マリィーいったい何が在ったんだ?」
とうとうカー爺が心配して近寄ると聞いて来た。
「ら、あっ、ラーファが帰った!!」
「何!」「オッ!!」「ハァ?」「エッ!?」「まぁ!」皆も驚いた様だ。
しばらく念話に没頭してラーファと話した。
「ラーファから念話が在ったの」何とか涙を堪えて皆へと伝える。
「ちょっと行って来る」
そう言って神域へと入った。
「「「「「エッエエエエエエ!」!」!」!」!」
※※※ 同じ日の朝 ※※※
ミンスト市を北から流れて来てかすめる様に西へと曲がる川に小舟は行きかっているが、百人もの人が乗る様な大きな船は無い。
大河ワーカムと名が付くのはミンスト市の近くにある川湊が出発点で川を下って海まで同じ名前の川が続く。
私たちが乗った船は川に浮かぶ船の中では最大級に大きな船だった。
見た目はほっそりした帆船だが、海の船とは違って帆柱は3本だが低くて細いし張ってある帆は小さい。
櫂を使えるような作りになっているが、下りでは帆走するようだ。
貨客船で客が乗るのは船の後半分ほどに在る船室部分にある。
特等室が一つ、一段高く作られた最後部に在るのがこの船の最大の特徴で、今はアレクサンドロス王太子殿下が乗っている。
それ以外は1等船室は最大8人が入れる部屋が4つ、雑居船室には大部屋に詰め込めるだけ詰め込むそうだ。
高級船員と特等と1等の客用に食堂が在るのもこの船ならではの特徴になる。
大河ワーカムは川湊を出て直ぐに大きく南へと曲がる。
南へと下がって行くとロマーネ山脈近くで再び西へと流れが変わる地点に川湊が在る。
ここはミンストネル国の貴族の一人ダイソン伯爵の領都でも在る。
その川湊で今日は停泊する事になっているのか、日が沈む前に湊の桟橋に船は横付けした。
マーヤが停泊中の船から眺めていると、隣に一艘の船が停泊していた。
川岸の桟橋には馬の背に積んで来た荷物を 受け取り背に担ぐようにして荷運び人が渡し板を渡って船に積み込んでいた。
背に担ぐ時大きな袋に小さな箱のようなデコボコがあった。恐らく小さな箱が沢山入った袋を担ぎ、しっかりと足場を確認しながら荷物を運ぶ人。それを注意深く見守る商人らしき人が居た。
ふと思い出したのが、ミンストネル国にオウミ国から入国する時に見た商人だ。
彼らはオウミ国から荷馬車に積んだ商品を広場で馬の背に積み替えていた。
今目の前で馬の背から降ろされ、船へと積み替えられていく荷物はとても似ていた。
そう言えば、国境から続く道は王都への分かれ道で、王都へ行かずそのまま領都の方へと行くとしたら。
この川湊あたりへと行きつくんじゃないかな?
オウミから輸出された商品が馬の背に揺られて此処まで運ばれ、此処から船で下流のどこかへと運ばれて行く。
一体何を運んでいるんだろう?
私はオウミから此処まで運ばれて来た荷物の中身に思いを馳せながら景色を眺めていた。
川を下る船は夜の間停泊して動かない。
これは夜間航行は海と違って川が大河とは言え狭いからだ。夜で周りが見えなくなると、川にある障害物に衝突し最悪転覆する事も在る事故になる。
そんな危険を避けるため川を航行する船舶は夜に停泊する。
夕食は船の食堂に用意されていたが、停泊中とあって普通に温かい食事が出た。
食堂の奥に特等室のアレク殿下らと船の船長が食事をしている。
私たちは他の1等船室に乗り合わせた商人や貴族と一緒に食べる事になった。
私たちが見た目から傭兵だと分かる格好をしているので、貴族はもちろん商人たちからも敬遠されたようで、食事中話しかけられる事も無かった。
「クラン”緑の枝葉”の方々、私は先に失礼します、心良き帳の在らんことを、失礼する。」
食事を終えたアレク皇太子殿下が入り口へ向かう途中私の横を通る時に声を掛けて行った。
「はい、お休みなさい」反射で返事をしてしまった。
でも、お付きの人も何も言わないから不敬だとかは無かった様だ。
私たちも食後の麦焦がしのお茶を飲んでいたので、アレク王太子殿下の後席を立つ事にした。
私が立ち上がると、周りの1等船室の客が私を注目している。
??? いったいどうしたのだろう? と思ったが、食事中も話しかけてくるような事は無かったので、無視していても問題無いだろう。
皆で食堂から同じ階に在る船室へと移動した。
数舜後に、嬉しい知らせで大泣きするのもしらず、マーヤは部屋に入った。
第3章 闇魔術師が始まりました。
次回は、船室にマーヤが神域から帰って来た処からです。




