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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第53話・5 カー爺の提案(5)

 王様はアレクを従弟と言ってた王太子アレクさんの使者とのすれ違い。

 ”第2章 神聖同盟の国々”の最終話です。

 アレク王太子さんの連絡があったのは、王城から帰った私たちが夕食を終え、部屋へと帰った時でした。


 アレク王太子さんと会った時に後ろに立っていた人がやって来たので、ホテルの部屋で話を聞く事にしました。

 カー爺の部屋が広いので、カー爺と使者さんが座って、他の人はベッドや自室から持って来た椅子に座った。

 使者さんは「アレクサンドロス王太子殿下に使えるサントスと申します。」と名乗り、直ぐに話始めた。


 「今後の予定ですが。」

 「殿下の御用意が終われば、直ぐにでも船でオースネコン国へ行く事にしています。」

 「旅立つ予定日ですが、11月の9日に船に乗る予定なので、それまでお待ちください。」


 ちょっと姿勢を直し、私の方を向いて一礼すると話始めた。


 「魔女姫さまにアレクサンドロス王太子殿下より手紙を預かっております。」


 と何やら豪華な装飾が付いた分厚く包まれた物を差し出した。

 差し出した先はカー爺だけど、体はベッドに座っていた私の方へ向けている。


 「これはなんですかな?」カー爺が聞くのも、もっともだと思う。


 「それはですな、殿下の御茶会へのお誘いです。」サントスさんがとんでもない事を言い出した。


 「何故? と理由を御聞きしてもよろしいかの。」


 カー爺は殿下から(マーヤ)にわざわざ魔女姫などと呼んでお茶会に誘う理由が分からないと思い、聞いて見たのだろう。

 私を向いて話しかけたのだから、相手は私に成るのだろう。

 私の秘密がじゃじゃ漏れなので、何処まで知られているのか探りを入れたのかもしれない。


 「殿下の婚約者候補となられたとお聞きしました。」

 「殿下もお互いに知り合う事は早い方が良いとお考えです。」


 いや! なんだか盛大に勘違いしている。

 そもそも私は魔女姫じゃあ無いし、婚約なんて千年早い!


 「サントス殿! クランの一員の事をリーダーたる私が知らない内に婚約者だ! と言われても戸惑うばかりですじゃ。」

 「そもそも、アレクサンドロス王太子殿下が婚約する事をお決めになられた理由さえ、知らないのですぞ!」


 カー爺がサントスさんに強い口調で詰め寄った。

 カー爺の勢いに飲まれたのか、サントスさんはビックリして仰け反ってしまった。


 「いやいやいや、 カー殿、陛下からのお話が殿下にあり、”誠意を持ってお付き合いする様に”との事で在ったとお聞きしています。」

 「カー殿が知らないとは不思議千万!」

 「確かに、今回の事となりは我らも不思議に思ってはおりますが、陛下の御意思であり、殿下も納得しての上の話。」

 「カー殿に話が行って無かったとは、一体どうなっているのか私も不思議に思っております。」


 あちゃー! これは私たちが予想した通りの王様の考えですが、王太子さんが王様の説明を盛大に誤解したようですね。


 「サントス殿、殿下にもう一度王様が”婚約”と言ったのか確認される事ですな。」

 「”誠意を持ってお付き合いする様に”と先ほど王様のお言葉として聞きましたが、そのお言葉通りに率直に受け取るだけで良かったのではと愚考します。」


 出したお茶会へのお誘いの手紙をカー爺から返されて、黙り込んでしまった。


 「カー殿、あなた方の事を少しお聞きしてもよろしいですか?」


 しばらくして、考えが纏まったのか今度はゆっくりと話し出した。


 「我らの何をお知りになりたいのですかな?」


 カー爺もサントスさんの話に応えるように言った。


 「そもそもあなた方はオウミから来られたと聞いています。」

 「女性のお二人は魔女で、先ごろ有ったスタンビードではお二人で魔物を殲滅されたと聞いています。」

 「あなた方はオウミの王族に関係する方々でしょうか?」


 婚約とか話が大きくなったのは、背景にこんな憶測が在ったのですね。


 「サントス殿、貴殿は大きく誤解されている。」

 「我らは傭兵ギルド2級、クラン”緑の枝葉”ですじゃ。」

 「確かに女性二人は魔女並みの力を持っていますが、身分は全員が平民ですよ。」


 カー爺の説明にサントスさんは「平民!?」と呆けた様に呟いた。

 でもカー爺の説明に私の知らない2級のクランってありました。

 クランに傭兵階級ってあるのかしら?


 「それは!! 本当の事ですか?」


 しばらく呆けていたサントスさんが立ち上がる勢いで叫んだ。


 「本当の事ですじゃ、傭兵ギルドで確認できる事ですしの。」

 「儂の考えでは、王様はこれから闇魔術師と関わる事になったので、平民とは言えギルド2級のクランとは誠意を持って付き合う様に言われたのではないかと。」


 サントスさんも思う所が在ったのか、持って来た手紙を手に急いで返って行きました。


 サントスさんの帰った後しばらく私は、黙って考え込んでいました。

 内容から察すると王様の胸の内はカー爺が推理した内容で間違いないようです。

 王様たちが誠意を持って付き合ってくれるのなら、私たちも闇魔術師と戦う事に集中できるでしょう。


 さて、アレク王太子さんの事は誤解も解けた様なので、サントスさんが最初に言った事の方が大切です。

 どうやら私たちは、川を下る旅に出るみたいです。


 王様の返事を待ってるより長く待つ事になりました。

 何やら仕事の引き継ぎでも在るのか、直ぐに出かける事は無理そうです。

 アレク王太子さんも王様の一人がってに振り回される可哀そうな人だった様ですね。


 しかし、使者に来た人は勘違いしてましたが、王様は今回の件をどう判断するのでしょう?

 もし王太子の側近(サントスさん)が謝罪に来て勘違いだったと言えば、王様は王太子殿下に対して私の秘密を話して無いのでしょう。


 そんな考え事よりもダルトさんに聞きたい事が有りました。


 「ダルトさん、先ほどギルド2級のクラン”緑の枝葉”ってカー爺が言いましたよね」

 「クランにギルドの級が付くって何なのか説明してください」


 ホテルのカー爺の部屋から出て廊下を歩きながらダルトさんに話しかけた。

 ダルトさんが「あはは! 未だ言っていなかったね。」と降参するように両手を上げて話してくれました。


 「傭兵ギルドは、今回のあなた達の活躍を評価するにあたって、ギルドの2級をマリィーに3級をポリィーに出したいと言ってきたんだ。」

 「今回傭兵ギルドやミンストレル国へ魔女と同じだと言ってしまったからね。」

 「魔女の魔法(スキル)が使えるけど、本物の魔女として評価されるとこちらも困る。」

 「そこで、傭兵ギルドのクラン”緑の枝葉”としての評価なら受けると言ってある。」

 「これまで1級から3級までは昔の金、銀、銅の評価をそのまま付けただけの傭兵団の格付けなんだ。」

 「それを個人に付けるのは目立ちすぎると言う事もあるからね。」

 「それでクラン”緑の枝葉”はギルド2級のクラン(傭兵団)となったんだ。」


 「ギルド2級のクランってすごいんですか?」


 「昔の傭兵の規模から言えば数千人以上の集団に相当するからね、それと同等だとすると凄いね。」


 ダルトさんは凄いとか言ってますが、たった6人のクランにそんな大規模なクランと同等とは盛り過ぎだと思います。


 婚約騒動も、其の後サントスさんが再び訪れて勘違いだっとと謝罪して終わりとなりました。

 アレク王太子さんも予定通り9日までに仕事の引き継ぎを終わられて、川下りの船に乗る事になりました。

 私たちも同じ船の1等船室に2部屋に分かれて乗っています。

 アレク王太子さんは特等船室ですから、船の一番上に居ます。


 ミンストネル国から出たら、次の川港はオースネコン国の王都です。


 第2章 神聖同盟の国々は終わり、閑話の後、第3章 闇魔術師が始まります。

 次回は、閑話 ミンストネル国王 彼の心の内をお話します。

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