第53話・4 カー爺の提案(4)
珍しくカー爺が王様にほんろうされて、お怒り状態になりました。
ホテルに帰ってから、カー爺がプンプン怒っています。
どうやら、王様が勝手に決めた、闇魔術師討伐隊を作る事に憤りを感じているようです。
私から見ていても、カー爺が王様にほんろうされている様に見えましたしね。
「勝手に決めおってからに、はた迷惑極まりない奴じゃ!!!」
「重臣会議では、狙い通り”紹介はするが、人は出せない”と決まっただろうが!」
「何を考えてか、勝手に王族の闇魔術師討伐隊など作りおって!!! 気にいらん奴じゃ!」
「カー爺、王様の狙いは何だと思う?」
ダルトさんが深刻そうな顔でカー爺に聞きました。
ダルトさんもカー爺が王様にほんろうされているのを心配していたのでしょう。
「恐らくじゃが、マリィーの”魔女が化けている”が見破られたとしか考えられん。」
「王の話から推察するに、カカリ村の情報は思っていたよりも漏れていたようじゃ。」
「ベロシニア以外にも情報提供者が居るのじゃろうな、ガランディス伯爵とかな!!」
「ではマリィーが魔女が変装している訳では無く、マリィーが本物だとばれてると!」
ダルトさんが驚いている。
「そんな! 重臣は知らないのに王だけが知ってるなんて事が在るのか?」
アントさんも信じられない様だ。
「それだけ機密情報扱いなんじゃろう。」
「そうでなければ、王が重臣の提言を跳ねのけてまで、独断で決めるなどあり得んじゃろ!」
「しかも王太子じゃぞ!! そんな国の重要人物を外に出すような事はあり得んはずじゃ!!!」
カー爺が珍しく大声を張り上げた。
「あり得ん!」を連呼しています。
それだけカー爺にとって思っても見なかった事だったのでしょう。
カー爺の話だと神聖同盟の国に私の事が漏れていた事になります。
ベロシニアが母の情報をル・ボネン国へ渡していたのは調べて知っていましたが、それ以上の事が漏れていたのなら大変です。
ベロシニアは私が存在する事は知っていましたが、それ以上の詳しい事は知らなかったはず。
私の事が事細かに知られているなら、歳や名前も容姿だって知られているのでしょう。
その中に魔女学園の生徒だと言う事も入っているのかもしれません。
そうだとしたら、魔女が化けてるでは無くて、魔女に化けてると知られてしまった訳です。
カー爺の言うガランディス伯爵ならオウミ王の側近だから、知っていてもおかしくはありません。
私の事はイガジャ男爵様が王様に報告しているのでガランディス伯爵から漏れたなら、知られていて当然です。
そうでなければ、王様が王族を私たちに同行させるような事をするだろうか?
いや無い!
カー爺が叫んだように、私をエルフの子と知っての事だとしか思えない。
最初から神聖同盟の国はエルフと親密な関係を作る事が目的だった。
母を攫ったのだってどの国が関わっているのか分からないけど、神聖同盟の国のどれかだろう。
今度は共闘と言う戦いを通じて親密な関係を作る事を狙っているのかな?
お互いに顔と名前を知り、身分にとらわれずに話し合う事こそ目的なんだろう。
母がル・ボネン国から逃げて来た時、「私との間に子供が欲しい事がはっきりした」と言っていた。
私は未だ数百年(成人は千年先)は子供を産める体にならないけど、彼らは待つ積りなんだろうか?
それまで各王国の王族と親密な関係を作るのが目的?
「カー爺、王様はどうして神聖同盟の国に王族で闇魔術師討伐隊を作る事にしたの?」
カー爺なら知ってそうなので聞いて見た。
「それはの、闇魔術師の件はダンジョンの在る国にとって、脅威なのは間違いないのじゃ。」
「その点はミンストネル国の重臣共も理解している。」
「じゃが、王はそんな脅威は儂らがいれば、何とでもなると思っている。」
「実際ミンストでは何とかなったしの。」
そう言った後王城の方へ顔を向け、カー爺は険しい顔をして吐き捨てるように喋り出した。
「最初に王と在った時、否! 朝から無理やり王城へ連れていかれた時から違和感があったんじゃ。」
「重臣会議の途中だと言うのに呼び出されて、しょうも無い話をした時からうさん臭く思っとった。」
くるりと私たちの方へ向き直り、話を続けた。
「本来、儂の提案の”共闘”とは、儂らが動きやすいように援助して貰う事じゃ。」
「提案した時から形だけの共闘で良かったんじゃ。」
「決して共に、闇魔術師や魔物と戦うことじゃあ無い。」
こんなに感情をむき出しにして話すカー爺は初めてです。
「儂が提案した形になっておる以上、闇魔術師討伐隊は反対できん。」
「反対したら、マリィーを残してオウミへ帰されるか、暗殺じゃ。」
王様と話している時何かに耐える様子だったのはそう言うことだったのね。
「まぁ、マリィーの心情を考えれば帰される方じゃろうがの。」
「王にしてみれば、マリィーを手に入れても数百年もの間拘束するのは大変じゃ。」
「恨みも買うじゃろうしの。」
「そこで友好的な関係を作る事にしたのじゃと考えておる。」
「他にも色々理由は考えられるが、これが一番の理由じゃろうのう。」
王の心中も察しているのか、少しは穏やかに話します。
「彼らは儂らに意図を悟られずに、マリィーと知り合いになる事を狙っとるんじゃろう。」
「王族との付き合いが在れば、後々の王族の誰かと結婚する事を期待しているのじゃろうな。」
「今すぐマリィーをどうのこうのする事は無いじゃろう、まだお子様じゃしの。」
「それだけは助かるがの。」
お子様と言われて反発しようとしたけど、”助かる”なんて言われると急に心が萎えてしまった。
「なんて気の長い陰謀何でしょう」ポリィーがため息を付きながら言った。
「儂らに出来る事は何かありますだか?」ケンドルさんが心配そうに言う。
「今の所 王の掌の上じゃよ、この提案に乗るしか無いのが悔しいのう。」
カー爺ががっくりと肩を落とした。
「今回の件は王様の勝ちですが、カー爺の提案も私たちに利益をもたらしています」
「彼らと共に行動する事は、神聖同盟の国々を自由に通行できると言う事です」
ポリィーが落ち込むカー爺に今回の事で良かった事を指摘して、元気を出す様に促しています。
ポリィーの言う通りだ! 闇魔術師の先回りをする事だって、できるようになる。
カー爺も気を取り直したみたいで、何時もの顔に成ってる。
私も結果として、良い方向へ動いていると思う。
神聖同盟の王族が闇魔術師討伐隊を作るなら、数百年は私を誘拐するような事はしないでしょう。
どちらかと言うと親しい付き合いをする様に仕向けられていると考えています。
「では、儂らは王様に騙されたまま、闇魔術師討伐隊を作る事へ彼らと協力する事にする。」
カー爺が最後に方針を決めて、締めくくった。
ヴァン国(マーヤが聖樹島に作った国)とロマナム国(神聖同盟が纏まって出来た国)が対立するのは千年以上先なので、此の友好的な関係は千年続いた事になります。
次回は、アレク王太子から使者が来ます。




