表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
91/237

第53話・3 カー爺の提案(3)

 王様から再び呼び出され、王様と会う事になった。

 王様と再び会う事になった。

 呼び出された部屋は、前回と同じ天井の(はり)垂木(たるき)が見える長い部屋だった。


 今回は、カー爺は皆の紹介はしなかった。

 それより、王様が入って来る間頭を下げていたのに、王様が椅子に座ると勝手に頭を上げて王様を見ていた。


 「何やら言いたそうだな!」早速王様から態度を見咎められた。


 「重臣方の話し合いの内容は聞いています。」

 「決定は、王様のお気持ち次第と言われました。」


 何やらカー爺が不満そうな言い方をしています。

 重臣方の話し合いの結果が、カー爺の不満の原因でしょう。

 でも王様がカー爺の無礼な態度に怒らないのが不思議です。


 いったい重臣の人たちはどんな結論になったのだろう?

 カー爺の提案は”闇魔術師との戦いに共闘しよう”だったと思うけど、一緒には戦わない事にしたのかな?


 「儂は皆が決めた事に否やは無いが、やりたい事はする事にしておる。」

 「そなたの危惧は無用じゃ。」

 「既に、儂は儂の考えで動いておる。」


 王様が何やら重臣方の決定とは違う事をしようとしている見たいです。


 「神聖同盟の各国へ私からの使者を出した。」

 「各国の代表を数名カー殿の提案に参加させようと思っている。」


 どうやら王さまは重臣方の反対を押し切ってカー爺の提案に乗る様です。


 「参加したい者は、12月までにオースネコンの王都オースに集まるだろう。」

 「我が家からは、従弟のアレクを参加させる事にした。」


 従弟のアレク様って王族じゃあ無いのかな?

 それとも軍人さんで強い人とか何だろうか?


 カー爺の顔は益々しかめっ面になっています。

 王様の動きは歓迎する内容なんじゃないの?


 「王様、それは重臣の皆様の反対は無いのですか?」


 「あっても関係無い。」

 「あくまでも王家に関わる事で在って、ミンストレル国は関係無いのじゃ。」


 どうやら、重臣方の話し合いでは、カー爺の提案は反対されたようです。

 だけど、王様は王家だけに関わる事だからと言う理由を付けて、国の方針を無視して私たちに協力してくれるようです。

 でも、従弟のアレクさんって何をしにオースネコンへ行くのでしょうか?


 カー爺も、何時もの平穏な顔に戻っています。

 でも口が一文字に結ばれて、何やら決意したのかもしれません。


 「ならば我らもオースネコンへ向かうまで。」

 「アレク殿は我らに同道されるのか? 御聞きしたい。」


 「むろん、同道させる。」

 「従弟には、身分を越えた付き合いをしろと言ってある。」

 「他にも色々と、儂から重々言い聞かせておるしの。」

 「アレクは、ちと若いからか突っ走り過ぎる嫌いが在るが、なかなかの良き青年じゃ。」


 なんだか王様が落として上げる様な事を言っています。

 同道するのなら、オースネコンまで一緒の馬車か船に乗って行く事になるのでしょう。

 これまでの身内だけの旅と違って、他人が居る状態で旅をするのは気が滅入ります。


 「アレクには2人従者を付けるが、カー殿のクランと行動を共にする様に言いつけてある。」

 「オースネコンで各国の王族から選ばれた者が参加するじゃろう。」

 「集まり次第、闇魔術師討伐隊の会議を開く事になっておる。」

 「闇魔術師に対抗する力は、各国の王族が居るので問題無いじゃろう。」

 「戦力よりも、政治的に働きかける事でその方らの助けになると思って居る。」

 「戦力としても、先日の様なダンジョンスタンビードで、十分戦えるぐらいには鍛えておるから心配いらん。」

 「もちろん、ケガや死亡さえ覚悟しておる。」

 「その場合も、決してその方らに咎めが行かぬ事を王の言葉として言っておこう。」


 どうやら王様の発案で、神聖同盟の王族から代表者がオースネコンに集まるようです。

 その人たちと闇魔術師対策で共闘する事になったのでしょう。

 カー爺の提案から”共闘”だけが独り歩きして王様が勝手に進めて、カー爺も乗るしか無い状態のようです。


 王様が一人ご機嫌に部屋から出て行きました。

 前と同じように王様が出て行くまで、頭を下げて礼をしたままです。

 毎回、入る時と出る時に頭を下げたまま長い時間過ごすのは結構きつい。


 「アレクサンドロス王太子殿下の御なりです。」


 礼をしたまま待って居たら、別の言葉が聞こえてきました。

 今王太子って言ったような?

 王太子が闇魔術師討伐に参加するの?


 「コッコッコッコッ」と靴の音がして、先ほどまで王様が座っていた椅子に誰かが座る音がする。


 「顔を上げて下さい。」若い声がした。


 私たちは一斉に顔を上げた。

 王様が座っていた場所に座っているのは20才位の男の人だった。


 「私がアレクです。」

 「とりあえず、オースネコン国へ御一緒する事になりました、宜しく。」


 アレクさんの後ろに人が二人立っている。

 全然音がしなかったけど、空間把握ではアレクさんと一緒に歩いて来た人たちだ。


 「さようでござるか。」

 「儂らはクラン”緑の枝葉”、メンバーの紹介は後程致しましょう。」

 「今は顔を覚えて貰えれば幸いに思います。」


 カー爺としては覇気の無い、いえ面白くない様な言い方です。

 王様に勝手に決められて、気乗りしないのかもしれないですね。


 王太子様の顔見世はこれだけです。

 王太子様たちは直ぐに引き上げて行きました。

 私たちはまたもや宿で待つ事になりました。


 オースネコン国は王都オースに大河ワーカムの流れる川湊があります。

 ミュリネンへはオースネコン国を通って行きます。

 カー爺の態度には不可解な部分が在りましたが、提案は思わぬ方向へ進むようです。

 次回は、王様の陰謀です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ