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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第53話・1 カー爺の提案(1)

 王様が気がかりな事はエルフらの欲する物は何か? だった。

 「どう違う? 同じエルフの国じゃろう、訳が分からん。」

 混乱したような言葉の割に、王様はカー爺を睨みつけるように見つめている。


 魅力の大きな物をダキエのエルフは探している。

 そのために各国へアーノン・ススミと言う代理人を使って、各国に魅力の大きな物を探す様に求めている。


 本来は聖樹が担ってきた魔力の生成と循環を、聖樹の変で失ってしまった。

 彼女らは其の後、魅力の大きな物がこの世界に残っている事を何らかの方法で知った様なのだ。


 勿論、其の魅力の大きな物とは私の持っている聖樹の実の事です。

 聖樹の実は、妖精族のハイシルフと聖樹の間に生まれた木の実であって、私の叔母の子でも在る。


 ダキエのエルフが何故魅力の大きな物を探しているのか?

 聖樹の代わりに使えるのか知りたいのだろうと、思ってはいるけど確信している訳では無い。

 彼女らは手に入れようとはしていない。今の所は だけど。


 エルゲネス国の闇魔術師が欲するのは、私であって聖樹の実ではないけど、聖樹の実を育てる器”ゆりかご”を作るために必要なのがダンジョンコアだった。

 彼らはそのダンジョンコアを独占して、私が彼らと取引するまでスタンビードを引き起こす積りだ。


 言って見れば、ミンストレル国は闇魔術師達のとばっちりで被害を受けた事になる。

 カー爺の提案が何なのか聞いていないけど、闇魔術師の行動を阻止するためなのは間違い無いと思う。


 「国王様、儂は彼らの動機までは知りませぬ。」

 「ただ、ダンジョンの中で彼ら闇魔術師が言った言葉を伝えるだけです。」


 「彼らは、”次はミュリネンのダンジョンだ!!”と言っていたのです。」


 「これは由々しき事態だと思い、私より提案をした次第です。」

 「”共に戦おう”と。」


 「確かに、聞いていた通りじゃな。」

 「闇魔術師との諍いの件は聞いておるが、ベロシニアからイスラーファ様の行方は聞いておらぬのか?」


 「聞いて見ましたが、闇魔術師の洗脳により彼らも奪われた後の事は何も知らなかったのです。」


 「では、闇魔術師を今後も追いかけると言う事じゃな?」


 「その通りでございます。」


 「その闇魔術師が魅力の大きな物としてダンジョンコアを収集していて、今後スタンビードが発生する事態に魔女を率いた傭兵クラン”緑の枝”が共に戦いたいと言って来ている。」

 「そう聞いたが、間違いないようじゃな。」


 王様は納得したかのように、一人で大きく頷いた。


 「そして今回のスタンビードでのその方らの活躍、その方らが居なければミンスト市は壊滅したと聞いておる。」

 「恐るべき魔女の魔法と魔女薬じゃ。」

 「カーとやら、その方らは魔女の魔法の力と魔女薬の両方を我ら神聖同盟に提供するそうじゃがまことか?」


 「提供するわけではありません、力を貸すのです。」

 「我らは傭兵、と言ってもダンジョン専門のクランですじゃ。」

 「我らの力を欲するのであれば共に戦い、共に戦場に在る事を良しとしますのじゃ。」


 「儂も知らせを受けた時は、魔女が居るとは言え、たかが6名と思っておったがな。」

 「スタンビードでの活躍を聞いてまさかと思い、今日会う事にしたのじゃ。」

 「礼も言いたかったしの。」


 王様はカー爺の言葉に返答せずに、独り言の様な事を言った。

 私は、カー爺の提案(共に戦う)については未だ検討中だと馬車の中で聞いている。

 王様としては、カー爺の話に直接の返事は出来なかったのだろうと思った。

 王様が返事をしてしまっては、今重臣の方々が話し合っている事を無視して決めてしまう事になるのだろう。


 王様の本音みたいな言葉も聞けましたし、今日の件は納得しました。

 だから、こんなに早くから王様に会うために王城へ連れてこられたのですね。

 王様は魔女の事が知りたいだけではなく、私たちの動機を確認したかったのでしょう。

 今後の事を決めるために、なぜ味方になって戦うのか? を。


 王様の独り言が終わると、「今日は良く来た、結論が出たらまた呼ぶ、それまで城下で待って居てくれ。」と言った後、席を立った。


 王様が立ち上がったので、部屋から去るまで、頭を下げて礼をしていた。 


 王様との話の間、部屋の隅に控えていたドノバン衛兵長さんがやって来た。


 「カー殿、今日の謁見は此れまでです。」

 「陛下もご機嫌宜しくあられた。」

 「今日の謁見で提案の件、早めに決まるかもな?」


 「城の近くに宿を取っている。数日はそこで待って居るように。」


 そう言って、今日の王様との謁見? は終わった。


 終わってみると、ミンストレル国の印象はがらりと変わってしまった。

 何でこの国がオウミ国へ戦争を仕掛けてくるのか、いまだに分かりませんけど。

 王様の事は、イガジャ侯爵様に少し似ているなって思ってしまった。


 歳も同じぐらいだし、気さくに声を掛けてくるし、話す言葉も理路整然としていて頭も良い人です。

 そんな王様が居て、何で村々の人たちが苦しんでいるのでしょう?


 次回は、ホテルで宿泊している一行に、提案の返答で再び呼び出されます。

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