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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第52話・4 王宮(1)

 のんびり朝を過ごすマーヤたち、其処へ訪ねる人が。

 朝の散歩を兼ねた見物から帰って来たら、カー爺が部屋に帰っていた。


 夜十分に寝れたのか、元気にパンをかじっています。


 「お帰りなさいカー爺」


 挨拶をすると、私とダルトさんを見て、聞いてきました。


 「朝から元気じゃのう、何処に行ってたんじゃ?」


 「広場に昨日のドロップ品を荷車に積んで並べていたから、それを見に行ったのよ」


 ドロップ品の魔石や皮などを見て来た事を告げた。

 カー爺は顔を首を振りながら、がっかりした様子で話してくれた。


 「儂も見たがの、数だけは多かったが半分はくず魔石じゃし、大した金にはならんじゃろう。」

 「じゃが、魔物が溢れてミンストが壊滅するのを防いだのじゃから、文句は言わせんよ。」


 そうでした、どの位の金額になるのかよりも、被害が最小限で済んで良かったのです。

 カー爺は私を見ながら言ったので、くず魔石を作った原因の私を慰めてくれたのかもしれません。


 「そうは言ってもどのくらいになるか気になるから、儂も見に行った分けじゃしの。」

 「確認した中で最も級の高い魔石は、サンドワームの7級じゃったよ。」

 「生憎、杖ゴブリンの魔石は割れていたし他に7級の魔物も確認されとらんからの。」


 くず魔石に成ってしまいましたが、本来杖ゴブリンの集団も7級ですので、サンドワームの魔石と同じ価値が有るのに残念です。

 魔物が落とした物も杖ゴブリンは魔石だけでした。(通常のドロップ品は杖だけど私が燃やした)

 サンドワームは、皮以外に牙や口の周りに在る触手が袋から飛び出ていたのを見ました。


 サンドワームの皮や牙は防具や道具の材料に高値で買い取られる品物ですし、触手は食べられるそうで高級食材です。

 この触手が今回の戦利品の中で一番の高値になるそうです。

 皮の方が金額は多いのですが、重さ辺りの金額だと触手の方が高いのだそうです。


 美味しいのかもしれませんが、私は本体のサンドワームを見ていますから、あのうねうねと動く触手を食べようとは思えません。


 ドロップ品を見に行ったカー爺の話が終わり。

 カー爺がテントから出て来たポリィーたちと私やダルトさん、アントさんを見回してニヤリと笑った。

 そして、この度の戦いの報奨金について話してくれた。


 「今回のドロップ品は全てで精々金貨3百枚ぐらいだろうと見ている様じゃ。」

 「これは影の長が言っていた金額じゃがの、儂の見立ても同じぐらいじゃ。」


 カー爺の評価でもあまり高くはないようです。

 参加した人の総数は直接戦った人が900人ぐらいだけど、裏方で支えてくれた人も数百人は居たと思う。全員に均等に分配したら銀貨20枚ぐらいは貰えるかもしれない。


 「影の長からのまた聞きじゃがの、今回参加した傭兵ギルドの全員に銀貨50枚が支払われると聞いた。」

 「銀貨50枚はギルドの手出しとなるそうじゃ。」

 「後で国から報奨金が出るか知らんが、今回ギルド会員が受け取る金額はそれが全てだと聞いた。」


 銀貨50枚は微妙な金額です。

 私たちが泊まった宿は商人用の中堅クラスで、1泊が銀貨2枚(ミンストネル銀貨)なので一月ぐらい泊まれる金額です。

 探索者が日頃稼いでいる金額はだいたい銀貨1枚か2枚だと思います。

 その金額だと50倍ぐらいはするでしょう。


 金貨ぐらい欲しい所ですけど、大量のドロップ品を焼いて灰とくず魔石にしたのは私ですから申し訳ないと思っています。

 でも魔物を倒さないと被害が大きくなるのですから、今回は大災害を未然に防いだ事ですし、仕方ないですね。


 そう言う意味で、ミンストネル国は被害を防いだ人に報奨金を出しても良いと思います。

 傭兵ギルドは自腹を切って報奨金のお金を出すそうですから、未然に防いだ事への感謝なのでしょう。

 国の方針を決めるには時間が掛かる事は知っていますから、後払いでも良いので期待したいと思います。


 でもね、ミンストネルのお金はオウミ硬貨の半分ぐらいの価値しかありませんから、貰っても微妙なんです。

 この国を出るまでに使い切ってしまうのが一番良い使い方だと思うのです。


 部屋にノックの音がしました。誰か来たのでしょう。

 アントさんがドアを開けに行って、ドア越しに誰何します。


 「どなただろうか? 名を教えて貰いたい。」


 直ぐに返事が在って、名乗った名前に驚く事になった。


 「衛兵長をしているドノバンと申す。休息中申し訳ないが話が在る。」


 ドノバン衛兵長さんがわざわざギルドの部屋まで来たのは、不思議でしたが戸惑っている暇は有りません。

 アントさんがドアを開けると、ドノバン衛兵長と他に二人が部屋に入って来た。

 このダンジョン城塞で一番偉い人なので、貫禄と言うか押し出しの強さを感じる人です。


 アントさんが長椅子へと案内しようとしたら、ドノバン衛兵長さんが手で遮って話始めた。


 「カー殿、貴殿らの全員を王宮に招きたいと陛下のお言いつけがあった。」

 「申し訳ないが、速やかに準備をして一緒に来てもらいたい。」


 王様の呼び出しでした。


 しかし、早過ぎです。ダルトさんの判断だと早くて今日の夕方か夜だと言ってたのに。

 まだ、昼4時(9時)位なのに、王さまとか未だ寝てる時間だと思ってた。

 王様の呼び出しだと言う事は、王様本人が呼び出したんだと思う。当たり前だけど。


 私でもこの時間に呼び出されるのは早いと思うくらいだから、他の皆もそう思っていると思う。

 カー爺が皆を代表して返事をした。


 「ミンストネル国国王様のお呼びと在れば、お伺いする事にやぶさかではないが。」

 「少しばかり時間を頂けないか?」

 「ごらんの通りまだ食事中でな、装いも改めたい。」


 だからパンを手に持ったままのカー爺の返事も、訝しげなのは仕方ないと思う。

 カー爺の提案にドノバン衛兵長さんも気が付いているのに、よっぽど王様から急かされていたんだろう。


 「その点は申し訳ない、だがしかし陛下の思し召しである。」

 「そのまま私に付いて来て貰いたい。」


 問答無用とばかりに、呼びつけられた。


 仕方が無いので、テントもそのままにして皆でドノバン衛兵長さんの後を付いて行った。


 次回は、王宮の中に入ります。

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