第52話・2 終わって、実感した
戦いが終わり、今日を振り返る。
やっと治療所でもケガ人の治療が終わった。
ケンドルさんは後始末でテントに残るそうだ。使い残しの魔女薬を回収しなければならないし、今日の治療内容の集計もしなければならない。
マイセル君の様子も気になる様だ。
3人で櫓まで引き返して報告だけはカー爺にした。
「集計は未だですけど、治療は終わりました」
「魔女薬も未使用分は回収していますし、経過を見る必要の在る人は既に地上へと移動しています」
ポリィーも疲れているのに、魔女の一人としてカー爺への報告はキリリとして背筋を伸ばして報告する様は恰好良い。
「ご苦労!」
「他に問題は無いか?」
「ありません、食事抜きでしたので今は食事と休息が欲しいですね」
「良かろう、魔女っ子と魔女殿はケンドルとダルトを連れてギルドから借りている部屋へ戻り休息するように。」
「用事が在れば、アントを使いに出すが、緊急でも無ければ出さんから気にせず寝るように。」
休憩をもぎ取る様に貰うと私たちはギルドの会議室へと引き返した。
櫓にはあきらめ顔をしたアントさんが残り、私たちにはダルトさんが付いて来ている。
途中、ケンドルさんを迎えに救護所のテントの中に入ると、衛兵さんと片付けをしていた。
ポリィーは今日治療した人たちの治療内容を集計した紙をケンドルさんから受け取った。
筆跡はポリィーも書いているようですが、ほとんどは護衛だけでなく手助けもしてくれたケンドルさんです。
集計した紙を読んで思わず声が出た。
「集計だと今回の治療した人の総計は1557人となっていますよ!!」
「参加人数の1.5倍以上も治療しているけど間違いでは無いの?」
「それだけ、長時間にわたって戦い続けた結果ね」
「無傷で防衛戦を戦い抜いた人がほとんど居なかったのよ」
「それに個別に数えた人数は忙しくなった時記録に残せなかったの」
「記録が無い分は、薬の使用量から逆算して補正した数なのよ」
「初級傷薬の消費数を基に記録に残せている分を加味して出して貰っているのよ」
私もポリィーも治療内容は走り書き程度でしか書いていませんし、治療したケガ人が誰なのかも分かりません。当然何度目とか気が付きもしていません。
テントの入り口で初級傷薬だけで治療した人など気が付いても居ませんでした。
「魔女さんの薬の在庫から使った分で計算したのね」
「私も200個ダルトさんとアントさんに渡して薬を使って貰ってるわ」
私が二人に渡した分を計上すると参加人数の2倍になる。とんでもない数のケガ人が出たんだと疲れで麻痺した心に突き刺さった。
ポリィーも計算したのだろう、思った事が言葉として漏れた。
「2倍か! 私たちが居なければこの国終わっていた、かもね?」
ポリィーの言葉は実感が籠ってた。ポリィーは疑問符を付けたけど、私は間違いなくミンストの町は壊滅したと思う。
なにせ私が倒した魔物の数が2万を軽く超えていたのだから。
「何はともあれ、終わってホッとしたわ」
「今は、食べて飲んで眠るだけよ」
ポリィーは淡々とした喋り方で疲れが声にもろに出ていた。
長時間治療し続けた事で疲労もピークを越えてしまっている様だ。
今日は昼1時(午前6時)から夜5時(午後10時)まで戦いや後始末に追われ、途中に休みは有ったけどせいぜい数コル(数十分)でしか無かった。
肉体的、精神的に疲れているだろう。それは私にも、他の防衛線を戦った全ての人に言える事だ。
後半に死者が出たのも疲労から体が動けなくなっていた事があるからだろう。
集計した紙に一通り目を通して、薬の使用量から推計しただけなので問題点は多いけど、おおむね人数に大きな違いは無いか確認した。
私も疲れていたので抜けは在りですが人数が半分や倍にはならないと思います。
ポリィーは書類を腕輪の空間収納へ入れた。
「明日にでも再確認して纏めるわ、今日は疲れすぎ」
そう言ってケンドルさんに寄りかかった姿からはそのまま寝てしまいそうだ。
ダルトさんを護衛にポリィーとケンドルさんと私はギルドから借りている会議室の部屋まで戻った。
再び部屋の中にテントを張り、ダルトさんが見守る中で私とポリィーとケンドルさんはテントへ入った。
ポリィーはケンドルさんとテントの中から腕輪の空間収納へいそいそと籠ってしまった。
マイセル君と親子3人で今日は休むそうです。
私も眠いので部屋に入って寝ます。
用事が在れば呼び出すとカー爺から言われているけど、今日はゆっくりと休みたい。
今日一日ポリィーも私も魔術を行使しっぱなしでほどんど休みが無かったのだから。
おやすみなさい。
次回は、後片付けの様子と王様に呼ばれます。




