第51話・6 7級の魔物(6)
第4波到来、7級の魔物は強く、防衛は食い破られた。
カー爺の攻撃命令で私は「火球」「火球」と2回起語を言う。
用意している魔術陣は単発の火球なので複数の場合は連続で言う必要がある。
抗の中へ撃ち込まれた火球2発は十分な効果を出した。
「ドンッドンッ!! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドォーーーーーン!!!」
抗の中を炎が幾本も走り、魔物を蹂躙していく。私は爆風で壊れた風の結界を張り直すと爆炎が収まって来た抗の中を確認する。
魔石が積み重なっているだけで、魔物の姿は見えない! どうやら杖ゴブリン4組の集団は倒せたようだ。
櫓の上にホッと弛緩した空気が流れた。
ダンジョンからその長い巨体が現れるまでは!
体をくねらせてダンジョン入り口から器用に這い出てくる。アッと言う間に5匹も這い出てきた。
油断する気は無かったが、杖ゴブリンをやっつけてホッとした隙を突かれた!
「落ち着け! 1匹づつ倒して行くんじゃ!!」櫓の中央でどっしりと構えたカー爺が声を掛けて来た。
「はい!」カー爺の声に励まされ先頭のサンドワームを攻撃する事にした。
「氷槍!」櫓へと近づいていたサンドワームに氷槍が突き刺さる。
「・キーーーー・・・・・ッ」
空気が震える様な音に聞こえない響きをサンドワームが出すと全身が白く凍り大きな氷の柱が出来た。櫓の上へのしかかろうかと思えるほど近くに氷の柱が出来上がった。
サンドワームが死んで魔石になると、氷の柱も崩壊する。櫓に近い場合は氷が櫓へと落ちて着る事になる。
「うわーーーーっ」衛兵副長さんが飛びのいた!
「きゃっ!!」私も櫓の前に居たので頭の上から氷の柱が降って来た。
「ぐぇっ!!」ダルトさんが体毎後ろへと引き戻してくれた! 服の後ろ襟を引っ張って。
首が閉まって、一瞬暗闇が目を覆った。気道が塞がれて息も詰まった。
「ゲホッゲホッ!」
息が整えようと咳と共に気道を広げる。
「ありがとう! ダルトさん!」
助けてくれたダルトさんにお礼を言いながら落ちて来た氷の塊を見る。1ヒロ(1.5m)ぐらいある円柱のかけらが櫓の上に落ちていた。
氷のかけらが頭に落ちていたらと思うとぞっとした。
櫓の下から「ギャーッ」と言う断末魔が聞えて来た。急いでそちらを見る。
「魔女っ子! 大事無いなら攻撃じゃ!!」
櫓の中央から動かないカー爺が私を見ながら次の指示を出してきた。そうだった今はサンドワームが先だ!
下の状況は私が咳き込んでいた間に大きく変わっていた。サンドワームが4匹とも抗の上に這い上がっていた。抗の中にはトレントも出て来て鞭の様な枝を振り回している。
防衛側は大きく後ろへと後退して、かろうじて防衛戦を維持しているが何時崩壊してもおかしくない。
櫓の前に「聖光」光の結界を張る。
先ほどみたいなことは嫌なので念のため。そしてサンドワームへ攻撃する。
「氷槍」、「氷槍」、「氷槍」。
今狙えるサンドワームへ氷槍を撃つ。1匹は重なっていたので撃てなかった。
次は抗の中へ「火球!」、「火球!」撃つ。
「ドンッドンッ!! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドォーーーーーン!!!」
そして残ったサンドワームへ「氷槍」を撃つ。
それからの事はよく覚えていない。ただただ魔術で攻撃していただけだ。
サンドワームが出て来たら。
「氷槍」、「・キーーーー・・・・・ッ」。
杖ゴブリンの集団が出て来たら。
「火球」
「ドンッドンッ!! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドォーーーーーン!!!」
トレントが出て来たら。
「火球」
「ドンッドンッ!! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドォーーーーーン!!!」
カー爺の命令が在ると。
「火球」
「ドンッドンッ!! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドォーーーーーン!!!」
いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。
使い魔が頻りに魔声で呼びかけてくる。
使い魔の呼びかけに気が付いて使い魔の知らせを聞く。
ダンジョンの1層に居る使い魔は魔物が全て居なくなった事を伝えて来た。
「魔物がダンジョンからいなくなりました」ぼんやりしながら使い魔の報告をカー爺に伝える。
「そうか 魔女っ子は少し休んでいなさい。」
カー爺から言われて私はとても疲れている事に気が付いた。
櫓の上にストンと座り込んだ。もう立てそうにない。
お腹が空いた。喉が渇いた。そんな事を思っていた。
カー爺は櫓の中央から前に居るドノバン衛兵副長さんとアサイアス・ギルド長さんに影の長さんたちの方へと歩み寄ると、私の伝えた事を彼らに伝えた。
「ようやく終わった様じゃ。」カー爺の言葉で3人はハッと振り返った。
「終わった!? えっ!」アサイアス・ギルド長さんはまだ良く分かっていないようです。
「魔女殿の報告ですか?」ドノバン衛兵副長さんも信じられないと顔に書いています。
「ダンジョンから出てこなくなったな。」実感が湧いたように影の長さんが口に出した。
アントさんもダルトさんもホッとしたのか、私の側に座り込んだ。
「やれやれだぜ。」アントさんは疲れたように水筒から麦茶を飲んでいる。
「ああ、やっと終わったな。」ダルトさんは私の頭に手を置いて。
「頑張ったな!」と言ってくれた。
それでやっと終わったんだと実感がわいて来た。
「お腹が空いた!」疲れも有るけど、のども乾いてるし、お腹も空いている。
腕輪の空間収納へ手を突っ込んで水筒とパンを引っ張り出した。
次回は、スタンビードが終わっても、片付けや話し合いはこれから。




