第51話・4 7級の魔物(4)
第3波到来、激しい攻防の中7級の魔物がやって来た。
私の攻撃魔術で魔物を一掃出来たけど、抗の上にはまだ魔物が残っている。
敗れた風の防護結界を急いで張り替える。
『風を掴んで回せ、矢の行方を狂わせ、その境を守りとなせ!』
「風陣」
抗の中の魔物は一掃されてもしばらくするとダンジョンの出口から魔物は出て来る。
抗の上の魔物を粗方片付け終わる頃、抗の中へ魔物が再び溜まって来る。
やがて新たな攻防が始まった。
抗の上にジャンプして上がってきた魔狼を、土嚢の後ろから弩や弓で打ち取る。
トレントの枝は土嚢で遮られ剣や槍の穂先で切り付けられ、枝が切り取られる。
防御側は体制を変えながら、新たな魔物に対応すべく、痛みを伴う学習で対応を変化させている。
「魔女っ子! 魔法で攻撃じゃ!!」
『わが身より沸き立ちし火炎に漲る熱よ、凝縮して満ちれば爆炎と成る』
「火球」
「ドッンドッンドッン!! ドドドドドドドドドドドドドッガーーーーァーーンーーーッ!!!」
魔物を一掃しても抗の上に残された魔物を排除する頃には、又抗の中に魔物が出て来る。
それでも防衛側が粘れているのは、マリィーが攻撃する事で魔物が一掃され束の間の休息が取れるからだ。
束の間の休憩の間で、人を入れ替え、ケガ人を後送し、食べ物を口に居れ、水を飲む。
たったこれだけの休息だが、休息を摂れた人が最前列へと配置され、負傷者が驚くべき速さで治癒され復帰して来る。
防衛戦は体力を消耗させ気力を失わせる。それが長くなればなるほど消耗する。
だが体力の元となる食べ物を食べ、水を飲み、腰を据えて休める事はもう一度戦おうとする気力を回復させる。
マーヤは自分の攻撃が防衛側の生命線だと、此の数回の攻防を見て理解した。
「魔法攻撃の間隔を狭めたい、出来るか?」カー爺が攻撃の間隔を早めたいと聞いてきた。
「うん、いいと思う 今までで魔物を2千ぐらいしか倒していないし」
「第3波は残り6千ぐらいかな?」
「攻撃間隔を半分ぐらいにすれば、防衛側の負担が軽くなって長く戦えるわ」
「魔力は大丈夫か?」
「私は大丈夫、もし無くなってくれば魔力回復ポーションを飲むわ」
「よし、今までの半分ぐらいで攻撃する。」
カー爺の指揮で攻撃間隔を早めて攻撃した。
効果はてき面で、防衛側の負担が目に見えて軽くなっている。
負傷者の列が先ほどまでは切れ目なく続いていたけど、今はほとんど並んでいない。
何度目かの魔物の一掃の後。
7級の魔物サンドワームが1匹ダンジョンの出口からグネグネと這い出してきた。
大きい!!!
太さは1ヒロ(1.5m)ぐらいだが、その長さが15ヒロ(22m)ぐらいありそうだ。
見た目はそのまま大きなミミズだが先端に牙がびっしりと生えた口がある。
口の周りに1ヒロ(1.5m)ぐらいの長さの触覚が生えている。そこだけ見るならイソギンチャクのようだ。
その口がヒクヒクと動き広がる。胴体の倍ぐらい大きくなった。
抗の中に這い出してきたサンドワームが背を伸ばすだけで抗の上に口が出る。
風の防護結界がサンドワームが背を伸ばしただけで破れた!!
サンドワームの先端についてる口が土嚢の後ろに居るギルド員に襲い掛かった。
盾を持った探索者が立ち塞がったが、盾を食い破られかろうじて逃げ出した。
他の探索者たちが土嚢から、蜘蛛の子を散らす様に逃げた。
サンドワームが大きく体を振り回すと、積み上げていた土嚢が弾き飛ばされた。
そのまま抗の上を滑るように体を動かす。
抗の上を這わせるように動かして土嚢に嚙みついた。土嚢が口の中へと吸い込まれるように消えていく。
「土嚢を食ってやがる!!」櫓の上の誰かがそう言った。
土嚢だけでは無い、抗の上に上がって来た魔物も食っている。
食われる魔物を無視して抗の上へと上がった魔物は、大きく後退した探索者たちの防衛線に襲い掛かる。
先ほどまで連携が取れていた防衛が、今は個々の探索者がバラバラで戦うまでに追い詰められた。
カー爺が側で聞いて来た。
「あれをどうにかせんといかん。」
「何か手があるか?」
「火球以外を使っても良いですか?」
「このままじゃとサンドワームを倒さんことには埒が明かん。」
「手段は問わん!! 倒せる手立てがあるなら倒してくれ。」
ママ(ラーファ)の必殺の魔術なら倒せるだろう。
「氷槍で攻撃します。」
「良しやれ!!」
「はい!」
私は櫓に近寄って来るサンドワームを見据えて詠唱を行う。
『心凍らす死の定め、触れなば凍れる黄泉路の刃よ、敵を貫け!』
「氷槍!!」
外しようが無いほど大きいサンドワームの胴体に氷槍が突き刺さる。
突き刺さった部分から体が氷始め、アッと言う間にサンドワーム全体が凍り付いた。
サンドワームが死んだんだろう、魔石に変わると、中身の無くなった氷の筒は砕けて行った。
「サンドワームをやっつけたのか?」
「「「おおおおーーっ!!!」」」「やったぞうーー!!」「「助かったー!」」
櫓の下は大騒ぎだ。それだけサンドワームの脅威が大きかったのだろう。
でも第3波はやっと半分が過ぎたところだ。
次回は、スタンビード第4波の到来。




