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小さなエルフの子 マーヤ  作者: 迷子のハッチ
第2章 神聖同盟の国々
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第51話・3 7級の魔物(3)

 第3波到来までの4コル(1時間)の状況と第3波。

 救護所で魔物と戦って負傷した人たちを治療し終わったけど、軽い切り傷とか我慢している人が居るとダルトさんが教えてくれた。


 「防衛戦で傷を負ったけど、大したことは無いと思い込んでいたリ、指揮官だからと我慢している人がいるんだよ。」

 「戦だと興奮して痛みが軽く感じる事が多いんだ。」

 「俺とアントで傷薬を配って来るから薬を箱ごと寄越してくれ。」


 と言う事で腕輪の空間収納に在庫として置いていた薬を、2箱(100個)づつダルトさんとアントさんに渡した。

 二人は衛兵隊とギルド員とに分かれてケガ人を治療に行った。


 二人は一応私の護衛としてカー爺から付けられたけど、今の状況から私をどうこうしようとする事はないし、万が一襲われても私自信が戦えるので離れても問題無いと判断したんだと思う。


 ポリィーが戻って来るまでの間に、何人か治療を受けに人が来た。ほとんどがアントさんかダルトさんが傷薬では治せないと見て送って来た人だった。

 帰って来たポリィーはマイセル君がグズって泣き止まなかったので久しぶりにおっぱいを飲ませて来たそうだ。


 「おっぱい飲んだら満足して寝てるよ、今はケンドルの部屋に寝かせている」

 「ありがとう、休憩が取れなかったら、ケンドルにあやしに行かせようと思ってた所だったの」


 「うんよかったね」

 「今はだいぶ暇になったけど、後1コル(15分)もしたら第3波が来るから」

 「今の内に何かお腹に入れると良いよ」


 「マイセルちゃんをあやしながら食べたから大丈夫よ」


 やっぱりポリィーはしっかりしている、第3波が来ても大丈夫だろう。

 私はカー爺の居る櫓へ戻る事にする。


 「私はこれから櫓へ戻りますから」

 「ダルトさんとアントさんが来たら櫓に帰ったと伝えて下さい」


 治療中に使い魔から知らせて来た情報をポリィーに知らせる。


 「今度の第3波はだらだらと2刻(4時間)ぐらい続くとおもうから」

 「魔力回復ポーションを渡しとくね」

 「魔女さんもケンドルさんも無理はしないでね、じゃぁー!」


 ポリィーに魔力回復ポーションを5本渡して、救護所を出て櫓へと向かった。

 ポーションを多めに渡したのは、第4波が来るのはだいぶ先だけど、第3波の終わりと第4波の始まりが混ざりそうだから。

 恐らく切れ目なく魔物が襲って来る事になると予想している。


 第3波は約8千もの魔物が襲って来る。第4波だと1万を超える数になる。

 これだけの数になると、各層を通過するだけで1刻ぐらいかかってしまう。先頭が詰まれば速度も遅く成り、いつまでも魔物が続くような事態となる。


 第3波が始まれば、緩急は有っても魔物と戦い続ける事になると予想している。

 日の在る内に終わる事を祈ることになりそうだ。

 一度テントの裏へ周り、腕輪の空間収納へ入ってトイレとか麦茶を飲んだり、パンサンドを食べた。

 休憩はしなかったけど、次の戦いに向けて十分な用意ができたと思う。


 櫓まで戻って来ると、カー爺が声を掛けて来た。


 「今の状況を教えてくれ!」そろそろ第3波がやって来る時間になるので気になるのだろう。


 「第3波の先頭の魔物は1層に入って来ています」

 「後1コル(15分)位で出て来ると思います」

 「数は8千、2刻ほどの間途切れることなく魔物が出て来ると予想しています」

 「7級の魔物サンドワームが1匹中程の集団に居ます」


 私の報告でカー爺はドノバン衛兵副長さんとアサイアス・ギルド長さんの側へと行き、打ち合わせを始めた。

 カー爺は私が報告した内容を二人に話している。影の長さんも近寄って来て話を聞いている。


 三人は8千と言う魔物の数におののいている様だ。


 「どうすれば、防衛出来ると言うんだ!」ドノバン衛兵副長さんが吐き捨てるように言った。

 「8千なんて数に対応できるとは思えません。」アサイアス・ギルド長さんも同調してます。


 「やる事は先ほどと同じじゃ。」

 「交代で休憩しながら抗に魔物が満ちれば魔女が殲滅する。」

 「これを繰り返すだけじゃよ。」

 「殲滅すれば再び抗に魔物が満ちるまで時間稼ぎができるからの、体制を整える時間も有るさ。」


 カー爺は何時もやって居る事をするだけだと言いたげに平然としています。

 カー爺の頼もしい姿に二人共頷くだけです。


 先ほどの防衛戦は上手く交代出来ていたと思います。今度は長丁場だけど上手く交代出来ればしのげると思います。

 カー爺も同じ考えの様で、指揮を執る二人に先ほどと同じ防衛戦を、今度は長時間行うように話し合っています。


 「分かった、それじゃあ2コル(30分)に1度魔女の攻撃をする事にしよう。」

 「それで半コル(7分)位は時間が稼げるじゃろう。」


 カー爺が何やら決め事を受け、二人に念押しをしています。


 「しっかりと部下に攻撃方法を知らせといてくれ、此方は状況を見ながら2コル(30分)前後で攻撃をして行くからの。」


 「「お願いする!!」」二人の言葉が揃って聞こえた。


 話し合いは終わった様だ。ドノバン衛兵副長さんとアサイアス・ギルド長さんは櫓下の部下に指示を出している。

 カー爺は私の所へやって来た。その時ダルトさんとアントさんが櫓の梯子を上って来た。


 「ちょうど良い所へきたの、次の戦いの事を知らせる。」

 「儂らは魔女の攻撃を2コルに1度行う事になった。」

 「まぁいつ行うかは状況次第じゃがな。」

 「攻撃の指示は儂が出す。」

 「魔女っ子はそれに合わせて攻撃してくれ、風の防護結界は破れたら張り直してくれ。」

 「ダルトとアントは魔女っ子を守れ!」


 と二人に告げ、私たちに休みも取る様に言って来た。


 「攻撃と攻撃の間に休息と食事を摂るように、水も飲むのを忘れんようにな。」

 「魔女っ子の報告では今回の第3波は2刻ほど続くと言う事じゃ。」

 「それから中程に7級のサンドワームが1匹居るそうじゃ。」

 「対処はしておらんが、恐らく魔女っ子が仕留める事になりそうじゃ。」


 しばらくは迎撃の準備で騒然としていたが、徐々に静まると衛兵隊もギルド員も静かに持ち場で魔物の出現を待って居る。


 「ワォーン!」「ゲゲッゲゲッ!」などと魔物の声が聞えて来た。

 第3波の始まりだ。


 今度の魔物は9級から8級までの魔物が主になっている。

 魔熊や魔狼、魔猪などの動物が多く、次いでトレント系の魔物が体を寝かせて狭い入り口を通り抜けていく。


 流石に下級でも級の高い魔物が居るので、先ほどの魔物のように背を這い登るより、ジャンプして抗の上に直接乗り込んで来た。迷宮毛長灰色狼8級だ!

 防衛側が大きく波打った。最前列が突破された様だ。


 まだ先頭の魔物がやって来ただけで数は少なかったのか、直ぐに包囲して打ち取った様だ。

 トレントの枝が抗の上を一薙ぎして行った。最前列が枝で薙ぎ払われ大きく後退してしまった。

 抗の中に落ちた人も居る様だ。可哀そうだが助ける手立ては無い。


 防衛側は抗から少し後退した場所に積んである土嚢まで引いている。

 土嚢がトレントの枝を防ぐ壁となっている。しかし魔狼が抗の上に来るのは防げなくなった。


 土嚢を挟んで激しい攻防が始まった。


 私たちは今の所、魔物へ向けて弩で攻撃しているだけだ。

 魔術での攻撃はまだカー爺の許可が下りない。


 弩は魔狼や魔猪の魔物へは有効だけど、トレントなどへは当てる事が出来ても倒す事は出来ない。

 その点槍や剣での攻撃は櫓下の広場の何処に居ても有効で、衛兵隊もギルド員も剣や槍で戦っている。


 少し早いけどカー爺から攻撃命令が来た。


 「魔女っ子! 魔法で攻撃じゃ!!」


 『わが身より沸き立ちし火炎に漲る熱よ、凝縮して満ちれば爆炎と成る』

 「火球ファイアーキャノン・スリー


 火球ファイアーキャノンは魔物の密集する場所へ着弾した。


 「ドッンドッンドッン!! ドドドドドドドドドドドドドッガーーーーァーーンーーーッ!!!」


 良し!! 魔物を一掃出来た!!!


 次回は、第3波の攻防と第4波襲来です。

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